楽観主義のほうが結局は時代を制する ~マッキンゼーが予測する未来_近未来のビジネスは、4つの力に支配されている。~


 

 

 

 

””生存のカギは、好奇心と学ぶ気持ちとを組織の中に埋め込むことだ。急速な変化の時代には、停滞して犠牲となった企業の例は数知れないが、その中で生き残りに成功しようというリーダーは、経営に関する教祖的存在であるトム・ピーターズが言ったように、「私たちはかつてそうであったことがそもそもないのだから、今こそ本格的に学ぶ学生になりなさい」という教えに適応しなくてはならない。常に変化しているトレンドの海を、理解し、モニターし、航海していく能力は、将来必ず大きな見返りをもたらしてくれるに違いない。””

 

 

はたして、好奇心を維持し続けられる人と、そうではない人の差はどこにあるのだろう?人間という生物が、本能的にコンフォートゾーンから出ようとしないことは言うまでもないことかもしれない。ただ、これだけ急激に変化を繰り返し、指数関数的な速度とスケールで技術革新が生み出される現代において、企業のリーダーを務めている人間にとっては、絶え間なく、最新のトレンドをキャッチアップしようとする努力が不可欠であると思われる。

 

僕は、その好奇心が、悲観的な危機意識から発するものであろうと、有望な機会に発するものであろうと、どちらでも良いと思っている。どんな形であれ、学び続ける組織、チームを創るというチャレンジから逃げ出してはならないと、改めて決意を強固にするばかりだ。

 

 

””最も重要な点として、どのリーダーも、これからの時代がもたらす有望な機会にではなく、さまざまな危険に焦点を当ててしまいがち、という誘惑に打ち勝たなくてはならない。今日の世界を見回してみると、悲観論に傾きがちな理由は十分にあり、とくに地政学的な視点から見るとその傾向が強い。2008年のリーマンショックによる金融危機や、若者の失業率の激増といった身を焼かれるような経験が、著しいやけどの痕を残してしまっているのかもしれない。しかし近年、たしかに悲観論者の肩を持ちがちな時期は多かったものの、数多くの指標の長期トレンドを見ると、右上に向かっていることを指摘しておきたい。 大恐慌が世界中に拡散した1930年に、イギリスの偉大な経済学者、ジョン・メイナード・ケインズは、100年後には先進国の生活水準は現状の4倍から8倍になっているだろう、との大胆な予想をした。そして、大恐慌、膨大な破壊をもたらした世界大戦、そして長い冷戦の時期を経て、ケインズの楽観的予想の上限値が結果として今日、私たちの世界の現実となっている。””

 

 

””過去のトレンドが破壊される時代であっても、楽観主義のほうが結局は時代を制する、と私たちは確信している。作用しているさまざまな力のおかげで、私たちの住む世界は、10年後あるいはそれ以降には、今よりももっと良い世界になっているだろう。私たちが今まさに目にしている数々の変化の持つ規模と永続性を理解する人は、それに従ってぜひご自分の直観力をリセットし、新しい世界を形作る機会を見つけ、繁栄につなげていただきたい。””

 

 

目次

イントロダクション
我々は、直観力を リセットしなければならない

第Ⅰ部 4つの破壊的な力
第1章 上海を超えて
・ 異次元の都市化のパワー
・ どこかにある名前も知らない都市
・ 世界経済には重心があり、移動し続けてきた
・ 都市化の世紀
・ 都市の高すぎる利便性
・ 新たな都市化の時代を攻略する5つのカギ

第2章 氷山のひとかけら
・ さらに加速する技術進化のスピード
・ 難攻不落のビジネスモデルが崩壊するとき
・ イノベーションが頻発する時代
・ 過去のトレンドを破壊する力を持った12の技術
・ デジタル化された無限の情報こそが共通項
・ 技術の普及スピードの加速化
・なぜそれが問題なのか
・ 技術的転換点に適応する5つのカギ

第3章 年齢を重ねる意味が変わる
・ 地球規模の高齢社会の課題に対処する
・ アフリカ以外のすべての国が高齢社会に突入する日
・ 世界中で低下し続ける出生率
・ 世界人口の成長率は急速に低下する
・ 2030年、世界34の国々が「スーパー老人国」となる
・ 労働力の老化と縮小への対応
・ 年金をめぐる構造変化
・ 高齢化トレンドに適応するための3つのポイント

第4章 貿易、人間、金融とデータの価値
・ 音速、光速で強く結び付く世界 クモの巣のように広がる世界経済
・ 新たなグローバル化の潮流1—モノやサービスの貿易
・ 新たなグローバル化の潮流2—金融マーケット
・ 新たなグローバル化の潮流3—移り住む世界の人々
・ 新たなグローバル化の潮流4—データと通信
・ なぜそれが重要なのか
・ 相互結合の強まった世界に対応する4つのポイント

第Ⅱ部 直観力をリセットするための戦略思考
第5章 次に来る30億人
・ 新たな消費者層の力を引き出す
・ 突然の来訪者
・ 巨大な中間層が出現するのはこれから
・ 臨界点に達する消費
・ 技術革新が幸福にするのは誰か
・ 沸騰する市場にどのように適応するか

第6章 逆回転が始まった
・ 資源に訪れる新たな機会
・ 変化の背景で動き続ける商品価格
・トレンドは中断したか
・ 需要の絶えざる増加
・ 行き詰まる供給力
・ 過剰な相互連結性の増加
・ 環境コストが価格変動を増大させる
・ 資源価格変動にどのように対応するか

第7章 1つの時代の終わり
・ 資本コストが下がり続ける時代よさらば
・ インフラへの投資は新興国、先進国ともに増える
・ 踊り場に立つ資本コスト
・ シナリオ 1 資本コストが上昇する
・ シナリオ 2 金利を押し下げるシステムが確立される
・ 資本コストをめぐる2つのシナリオへの対処法

第8章 労働力需給のギャップを解消する
・ 技術革新が生み出す新たな労働市場のミスマッチ
・ 世界中で頻発する「雇用なき経済回復」
・ すぐに古くなる仕事のスキル
・ 仕事そのものの性格を変えていく技術
・ スキルギャップがどこにでもある時代に
・ 複雑な人材問題に対処する4つのポイント

第9章 小魚がサメに変貌するとき
・ 新たな競合の出現と競争のルールの変化
・ 名前も聞いたことのない企業からの挑戦
・ フォーチュン500が大変動する時代
・ 新興市場から突然現れるライバル
・ 小魚とサメの闘い
・ あいまいになる境界線
・ 新種のライバルにどう立ち向かうのか

第10章 国家の政策こそ問題だ
・ 社会と政府にとっての戦略的課題
・ 政治リーダーにとっての挑戦課題が変わる
・ 変化に対応する政治の事例
・ 未来の政治への意味合い
・ 企業にとっての新しい事業機会