『全方良し』を追求する理想主義的かつ前衛的な組織の形〜ティール組織〜


 

 
 
昨年は、組織開発に関する書籍を、ひたすら貪り読みました。経営者にとって、HR領域を担当する方にとって、読んでいて当然と言われてしまうような書籍も、沢山あったかもしれません。ただただ、悩みを解決したいと思い、多読していくと、多くの気付きを得られ、仕事に、とても役立ったと感じています。
 
本書、ティール組織は、昨年、とても話題になった書籍ですが、世の中の大きな潮流の中で、注目される必然性のある内容だと、強く共感を覚えました。なかなかボリュームのある書籍なので、複数回、読み込むことで、ようやく理解できた箇所もありますし、まだまだ理解が及んでいない箇所もあります。これからも、何度か読み込み、理解を深めていきたいと思っています。
 
 
””組織に関する私たちの考え方は、既存の世界観による制約を受けているのではないか? 自分の価値観を変えさえすれば、より強力で、魂のこもった、意味のある協働体制を作り出せるのではないか?””
 
こういう根源的ことを問うていくことを、これからも大切にしていきたいと思わされることが多かった、本書。
 
 
 
””現代の組織のあり方が限界に近づいていると感じている人々は多く、組織での生活に幻滅するようになっている。組織の底辺で骨身を削って働く人々を対象とする調査では、「ほとんどの仕事は、情熱を向けるものでも人生の目的でもなく、恐ろしく退屈なもの」という結果になるのが常だ。””
 
 
 
””人生を「自分の本当の姿を明らかにする行程」だととらえれば、自分の限界を現実のものとして冷静に見つめ、目に入るものを心穏やかにとらえることができる。
 
人生とは、自分の中にもともと素養がないものに無理をしてなろうとすることではない。私たちはまた、周囲の人々や状況には何が足りないか、あるいは何が間違っているか、といったことではなく、そこに存在するもの、美しいもの、可能性に注意を向けるようになる。決めつけよりも思いやりと感謝を優先する。
 
心理学者たちは、「欠点を見る」のではなく「長所を生かす」というパラダイム変化が起こっている と指摘する。
 
これは経営から教育、心理学からヘルスケアなど、さまざまな分野でゆっくりと深く進行している。
 
その出発点は、自分は人として、他人や周囲から解決してもらうことを待っている「問題」なのではなく、本質が明らかになることを待っている「可能性」なのだ、という前提である。””
 
 
そうなんですよね。結局のところ、人間とは?とか、人生とは?という根源的な問いの文脈の延長に、仕事は存在しているし、企業活動も存在している。だから、より良い組織を問い続けていくと、究極的に、より良い人生を実現していくために、どういう組織が必要なのか?という問いかけは、大げさなものではないと思えるようになって来ました。
 
 
””あなたはご自身の人生で、これまでたどってきた道筋をどうとらえていますか? ここで働くことは、あなたがこの世界で自分の使命だと感じていることと、どう適合するでしょうか?
 
▼ この組織の目的のうち、あなたが共感できるものはどれですか? あなたはどんな才能を発揮して、この組織に貢献できると思いますか?  
 
最終的には、雇う側も雇われる側も、一つの単純な、基本的な問いに答えようとしている。「私たちは、これからを一緒に旅するよう、運命づけられているのでしょうか?」””
 
 
このような問いに、胸を張って答えられることが出来る社員が、何人いるだろうか?何%存在するだろうか?経済的な持続的成長を実現させながらも、社員一人ひとりが、組織の使命と、個人の使命を重ね合わせ、働きがい、生きがいを感じながら、日々を過ごしていけるような環境を用意できているだろうか?
 
 
””最近は、新しい見方が台頭してきた。これは「ステークホルダー・モデル」と呼ばれ、企業は投資家だけでなく、顧客、従業員、サプライヤー、地域コミュニティー、環境そのほかのニーズにも答えなければならないという主張である。
 
ステークホルダーのニーズは往々にして対立するので、組織リーダーは、長期的に全員が満足するようにステークホルダー同士をうまく調整しなければならない。””
 
 
言うまでもないかもしれないし、あまりに理想的すぎるのではないか?とツッコミを頂きそうなものですが、『三方良し』を実現させるだけでなく、『全方良し』を追求していくスタンスが、とても大切になってくる時代じゃないかと思っています。
 
 
ティール組織は、まだまだイノベーティブ過ぎるし、理想論のように聞こえるかもしれませんが、徐々に、ティール的な組織を体現する会社、コミュニティが増えていくと感じます。
 
 
改めて、集団的知性を信頼し、個々のメンバーが自己実現を目指す過程で生み出される大きな力を、組織が社会的使命を果たすための原動力にしていける仕組みを創っていく。従来の組織構造や慣例、文化の多くを撤廃し、『セルフマネジメント(自主経営)』、『ホールネス(全体性)』、『組織の存在目的』というような点を重視し、組織や人間の持つ未知なる可能性を引き出し、磨き上げ、活躍させていくことに、挑戦していきたいです。
 
重厚な書籍ではありますが、近未来に求められるであろう組織の形の1つとして、ぜひ、手にとって頂きたい書籍と思います。
 
 
 
 
◆第Ⅰ部 歴史と進化
第1章 変化するパラダイム――過去と現在の組織モデル
第2章 発達段階について
第3章 進化型(ティール)
 
 
◆第Ⅱ部 進化型組織の構造、慣行、文化
第1章 三つの突破口(ブレイクスルー)と比喩(メタファー)
第2章 自主経営(セルフ・マネジメント)/組織構造
第3章 自主経営(セルフ・マネジメント)/プロセス
第4章 全体性(ホールネス)を取り戻すための努力/一般的な慣行
第5章 全体性(ホールネス)を取り戻すための努力/人事プロセス
第6章 存在目的に耳を傾ける
第7章 共通の文化特性
 
 
◆第Ⅲ部 進化型(ティール)組織を創造する
第1章 必要条件
第2章 進化型(ティール)組織を立ち上げる
第3章 組織を変革する
第4章 成果
第5章 進化型(ティール)組織と進化型(ティール)社会