無関心より『マシ』である対立を通じて信頼を創っていく〜信頼の原則――最高の組織をつくる10のルール〜


 

 
 
 
 
『心理的安全』を阻害する要因は何か?を問うている時に出会った書籍。
 
 
””考え方の違い、なわばり争い、予算の奪い合いなど、組織に対立はつきものだ。大小を問わず、さまざまな政治問題をめぐって、しょっちゅう言い争っている。人が集まれば集まるほど、ケンカの種も増える。それが仕事、いや人生というものだ。うまくいっていない会社であろうと高信頼組織であろうと、争いがある点は同じだが、争いをどう扱うかが異なるのだ。””
 
 
自己防衛的なコミュニケーション、政治的なコミュニケーションを、予防するためには、心理的安全が欠かせない。心理的安全を感じ難い状況は、不信頼が横行している時ではないか?という仮説を持つことが多くなった。
 
 
””個人やグループ間の摩擦は有害なものと思われがちだ。創造的摩擦では、成功に不可欠のものとしての、摩擦の肯定的側面を評価する。摩擦がなければ熱や電流を生み出すことはできず、エンジンは動かない。 優れた組織は『摩擦や衝突が起きる瞬間』をとらえ、調整して、『ブレークスルーのきっかけ』にする」とハーシュバーグは言う。””
 
 
不信頼の回復は、対立を避けることで得られるものではない。逆に、対立、摩擦は、有益なものであると捉える。信頼を積み上げるためには、摩擦や衝突を活かす必要がある。
 
 
””自分の意見が正しいと信じていれば、議論の結果にこだわるし、それなりの覚悟で発言しているからだ。けれど 高信頼リーダーはそれをよいことと考え、無気力より対立のほうがはるかにマシ と考える。
 
対立を包み隠さずオープンに話し合う文化を生み出すことは、革新的なアイデアを得るためだけでなく、信頼を生み出すためにも不可欠である。
 
対立にまっすぐに向き合い、オープンに話し合うこと。炎を恐れてはいけない。 高圧的なリーダーは議論を押さえつけ、意見の違いをごまかし、炎から逃げてしまう。そうやって一時的に対立を解消できても、表面的な平和がやがて暴発し、感情が噴き出し、信頼関係が破壊される危険はかえって大きくなるだけだ。
 
逆にリーダーが炎に向かっていくなら、最良のアイデアを引き出し、組織を襲う危険な炎も鎮められるのである。””
 
さらに対立は、無気力、無関心より『マシ』である、と認識すると、喜んで対立や摩擦を受け入れることが出来ると、考えるようになった。
 
 
””学術的研究によれば、 従業員満足は組織内のコミュニケーションの有無に大きく左右される という。企業全体の進む方向性がわからなければ、そしてその方向性が自分たちにとっても有益かどうかわからなければ、チームメンバーがリーダーを信頼することはできない。
 
こうしたコミュニケーション不足による不信感への処方せんはコミュニケーション、それもたっぷりコミュニケーションをとることである。「コミュニケーションは過剰なほうがいい」とは、世界的家具メーカー、ハーマンミラーのCEOマックス・デプリーの口ぐせである。””
 
コミュニケーションをたっぷり取っていくと、対立を避けることは難しい。対立を避けたいなら、コミュニケーションを減らしていけば良いだろうか?ここで企業文化、企業の在り方が問われる。
 
対立や摩擦を避けず、率直にものを言い合える文化を創ることは、簡単ではない。逆説的ではあるけれど、不信頼を避ける唯一の方法は、コミュニケーションを沢山とることであり、ゆえに、対立を避けず、対立を活かすということにあるのではないか。
 
 
では、どのようにすれば、そのような企業文化を創っていけるのだろうか?
 
 
””何を達成しようとしているのかがわかっていると、より成功しやすくなる。目指す結果がはっきりしないと説明責任の果たしようがない。
 
リーダーはまず、誰にでも覚えやすい明確なビジョンを描くこと。
 
数値目標や期限だけでなく、チームメンバーが達成すべき具体的な結果も示す。””
 
よく言われることだが、『コトに向き合う』ためには、ちゃんと目標やビジョンを明確になってなければならない。
 
 
””信頼は、期待が明確だからこそ育つ。どうすれば勝てるのか、自分は勝利にどのくらい近いのかを部下に知らせる必要がある。
 
スコアボードがあり、成績評価の基準がはっきりしているから信頼は育つのであり、ものさしがなければ混乱するだけだ。
 
何を達成することを期待されているのかがわかれば、そこに集中でき、優先順位で迷う必要もない。システムを信頼すればよいからだ。””
 
 
そしてまた、チームを構成するメンバー、一人ひとりの役割やミッションが明確になっていること、すなわち、それぞれのメンバーが、それぞれのメンバーに対して、期待を明確にしていることが、肝要であると思う。
 
 
僕たちの世代『信頼』を前提に社会を創ろうとしている。
 
 
””私たちは信頼があることに慣れっこになっていて、それが人間関係にいかに大きな影響を及ぼすかに気づいていない。伴侶は伴侶を、雇い主は社員を、企業は他社を、国家は他国を、家族は家族を頼りにする。 
 
共有型経済が台頭し、車を共有し、船を共有し、家を共有することが増えれば、ますます信頼が求められるようになる。
 
企業はグローバル化し、競争は激化し、文化も人もますます多様化するなかで、信頼の本質を考えることがますます重要になっている。
 
しっかりと紡がれた信頼の糸が1本、また1本と結ばれるごとに、複雑な織物のような私たちの経済活動や家庭生活はより堅固に、豊かになっていくのである。””
 
以上のような、大きな潮流がある中で、改めて、目に見えにくい『信頼』を、しっかり積み上げていくこと、意図して積み上げていくことが、求められているとも言える。
 
では、どのように『信頼』を創っていけるだろうか?と続けたいところだが、その詳細は、本書を参考にあれ。
 
 
 
 
 
””信頼組織を築くには、まず鏡を見ること。そうすれば自分の足りないところ、すなわち一貫性が欠けている部分が見えてくるはずだ。
 
言葉と行動を一致させられない、プライベートの行動が仕事でのイメージと合致しない、などである。たとえ理想には届かなかったとしても、 リーダーが自分の欠点を直そうと努力している姿を見れば、チームメンバーはリーダーを信じるし、組織全体にも信頼が広がっていく のである。””
 
 
””信頼は知らぬあいだに生まれるものではない。立ち上げ、育て、評価し、修復していくものである。信頼は苦労して手に入れるものであり、信頼を築くには時間がかかる。単なる礼儀の問題にとどまらず、深い意味での自己利益、つまり信頼は全員の利益になるという深い認識が求められるのだ。
 
信頼が潤滑油となって意思決定が促され、柔軟かつ永続性のある合意が生まれ、人生の喜びが生まれる。従業員・顧客・納入業者のあいだに絆が生まれるから、組織もそうした人たちとの約束を果たすことができる。ただし信頼そのものは目的でもないし、望む結果を得るための手段でもない。
 
信頼は生きがいある人生の土台なのだ。 信頼できる人間であることは力になる。信頼の経済では、自分がしたことは自分に返ってくる。
 
相手を思いやれば思いやるほど、相手も自分を思いやってくれる。信頼すればするほど、信頼してくれる。信頼という貨幣を用いて、人は協力し合い、他者の利益を図る。それは全員にとってよいことなのである。””
 
 
 
””高信頼企業を築き上げるには、個人として誠実であること、互いを尊敬し合い、メンバーに権限委譲をし、達成目標を決めて評価し、共通の夢を生み出し、ふんだんにコミュニケーションをとり、対立を肯定的に受け入れることが必要だ。
 
そして最後のルールは自分を見つめ、自分を疑うこと、つまりは謙虚になること。
 
高信頼文化を長続きさせるには、組織全体の成功と幸福、そしてそれ以上に、組織に活力と生命を与える個々のチームメンバーの成功と幸福を大切にしなければならない。
 
高信頼リーダーになること、それは自己中心的になることではなく、あなたが輪の中心に立つということなのだ。””
 
 
 
 
序章 信頼は力になる
ルール1 誠実さを身につける
ルール2 すべての人を尊敬する
ルール3 権限を委譲する
ルール4 目標を具体的に示す
ルール5 夢を共有する
ルール6 事実をありのままに伝える
ルール7 尊敬して論争する
ルール8 謙虚さを忘れない
ルール9 相手も勝つ交渉をする
ルール10 慎重にルールを守る
終章 裏切りに備える