『信頼の革命』の入り口~TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか~


 

 

サブタイトルに反して、より広く、深いイシューを扱っていまして、急進する分散化の潮流を、「信頼」というテーマで切り取っています。著者は、僕たちが、人類の歴史のなかで3度目の、もっとも大きな『信頼の革命』の入り口に立っていると語りかける。

 

“”この本では、ある大胆な仮説を提起している。わたしたちは今、人類の歴史のなかで3度目の、もっとも大きな信頼の革命の入り口に立っている。過去を振り返ると、信頼には際立った区切りがある。最初はローカルな信頼。小さな地域社会の境界のなかで生き、みんながみんなを知っていた時代のことだ。次が制度への信頼。さまざまな契約や法律や企業ブランドを通して信頼が媒介され、商業が地域の境界を越えて、産業社会に必要な土台が作られた時代がそれに当たる。そして3番目が、まだはじまったばかりの分散された信頼の時代だ。””

 

“”信頼はほとんどすべての行動と人間関係と取引の土台になる。今起きている信頼の大転換は、単なる急激なテクノロジー革新の一部でもなければ、新しいビジネスモデルの出現でもない。それは社会と文化の革命だ。その中心にいるのはわたしたちだ。そしてこの革命は、世界を変えることになるだろう。””

 

“”歴史を振り返ると、信頼はいくつかの時代にはっきりと分かれているのがわかる。最初はローカルな信頼。次が制度への信頼。そして3つ目が、まだはじまったばかりの分散された信頼だ。生まれたばかりの発明はみんなそうだが、分散された信頼もまだ 混沌 として先が見えず、ときに危険でさえある。分散された信頼の理論についての調査と執筆はときに、ふたりの子供たちを家のなかで追いかけ回し、限界を広げ、押し問答し、誤解された気分になり、従うべきルールを探し、それを無視されるような体験だった。 「誰を信頼できますか?」という問いに対する単純な答えは存在しないが、最後には人間が決めることだということはわかっている。””

 

僕が思うに、2019年現在において、信頼革命の先端にいる主人公は、Airbnbのような代表的プラットフォーム企業ではなく、YouTuberのような個人であると考える。

 

数年後、十数年後、ブロックチェーンにAIエージェントのようなアルゴリズムが乗っかって、本質的な意味での自律分散型システムが稼働し始めれば、中心となる運営母体を持たない世界が実現しているはずだが、当分の間、僕たちは、データを独占する巨大プラットフォーム企業のコントロール化から逃れることは出来ない。

 

いや、逃れることは出来るかもしれないが、逃れることで得られるリターンと、逃れることで失うコストを比較すると、コストが大きすぎて合理的には、逃れようという意思決定はし難い。

 

いつか、そのような企業群が、あらゆる物事を牛耳るような世界が破綻するかもしれないが、今日から未来を予想する分には、中国のような国家が、監視社会を完成させ、ジョージ・オーウェル的な、ディストピアな世界が完成していない未来が見えない。

 

人は、システムが望む生き方を余儀なくされ、無意識的に自由意志を手放すことになるだろう、もしくは、意識することが出来ていても、自らの自由意志を放棄して、より安心、安全の人生の中にいるだろうと僕は考えている。

 

言うまでもなく、あまりに既視感のある光景である。そうマトリックスの世界そのもの。

 

このようなコラムを投稿している自分の思考さえも、大局的には、そのマクロトレンドの中にあって、新しい発見でもなんでもない。

 

一部の人にとっては、はるか昔から予期していることであって、今更、何を憂えているのか?と嘲笑の対象として、侮蔑されてもおかしくない。

 

されど、自分と、自分の身の回りの誰かのために、自らの気づきを発信し、より良い変化に繋げていければ、それは自分の幸福であり、自分の身近な人たちの人生を、より幸福にする可能性がある、と、最近は考える。

 

信頼革命の入り口に差し掛かった僕たちの世代は、指数関数的に激増し続ける情報の中で、自分が信頼できぬ何者かが発信する情報よりも、自分が信頼できる個人の情報を元に、意思決定をしていくことになることは間違いないだろう。