あなたが世界のためにできる たったひとつのこと 〈効果的な利他主義〉のすすめ


2021年後半に読んだ本。福祉という事業に関わっていると、大抵の場合、利他的なスタンスを期待される。とてもペインが深い人達を対象にしていることから、実際に、献身的な態度で、支援や指導に臨むことが求められることもあるし、人のために、という想いで会社にジョインしてくれる仲間も多い。

ただし、僕たちは、民間企業として、事業の成長にもコミットしています。つまり、事業としての成長と、社会貢献を両立させるべく、日々試行錯誤をしている中、利他性というスタンスについては、慎重に向き合わざるを得ないと常々考えて来ました。そんな中、本書は、100%同意とまでは言いにくいものの、1つのスタンス、スタイルとして、とても考えさせられるものでありました。

” ”効果的な利他主義は倫理的な行為の進化形ですし、合理的に考える能力の実践形でもあります。私はこれを「新しい」ムーブメントとして描いてきましたが、新しいということは、引き続き大きく拡がっていくことを意味しています。もしこれが拡がって、クリティカルマスに達したら、〈自分にできるいちばんたくさんのいいこと〉を人生の大切な目標にしても奇妙だとは思われなくなるでしょう。” ”

もしかしたら、僕が感じ、受け止めているような感覚とは異なり、今の一部の若い世代の人たちにとっては、効果的な利他主義的なスタンスが、すでに当たり前のものになりつつあるのかもしれません。引き続き、効果的な利他主義という概念と向き合っていこうと思います。

以下、引用。

” ”利他主義は、 利己主義、つまり自分の利益だけにとらわれる考え方と対比されますが、私たちは、「効果的な利他主義」が利己心と対極にある自己犠牲を必ず伴うものだとは考えません。自分以外の人のためにできる限り〈たくさんのいいこと〉を行って自分が花開くとしたら、それはすべての人にとっての〈いいこと〉になるはずです。” ”

” ”効果的な利他主義者は、平等自体に価値を見出すというより、それがもたらす結果に価値があると思っています。貧しい人がより貧しくならないのであれば、富める人がより豊かになっても、それが全体に悪い結果をもたらすとは言い切れません。そうなれば、富める人が、より貧しい人を助けられるようになるからです。ビル・ゲイツやウォレン・バフェットといった世界の長者番付トップが行ったのはまさにそれで、寄付額で言えば彼らは人類史上最大の効果的な利他主義者です。” ”

” ”ここまでのところで、効果的な利他主義者の輪郭がだいたい見えてきたかと思います。彼らは要するに、他者を気にかけ、そのために自分の人生を大きく変えることをいとわない人たちです。寄付者の情けに訴えるチャリティではなく、費用対効果の高い方法で命を救い苦痛を減らすことを証明できるチャリティに寄付を行うのが、効果的な利他主義者です。自分に使うお金を削ったり、与えるために稼ぐことができるようなキャリアを選んだり、それ以外の方法で〈もっとたくさんのいいこと〉を行おうとするのも彼らの特徴です。中には、血液や幹細胞や骨髄や腎臓までも、見知らぬ人に提供する人もいます。” ”

” ”効果的な利他主義者に特徴的なのは、特定の人を助けることよりも、自分が助けることのできる人の数について語りたがる点です。彼らの数字への興味は、その寄付行動に表れています。彼らが寄付を向けるのは、いちばん大きな効果があると信じるに足るような組織です。そうすれば、効率の悪い組織に寄付するよりも、同じ金額でより多くの人を助けることが可能だからです、” ”

” ”誤解を招くと困るのですが、私は効果的な利他主義者が冷たく合理的で計算高い機械のような人たちだと言っているのではありません。〈ギブウェル〉の共同創始者、ホールデン・カーノフスキーはブログに、効果的な利他主義者は情熱を抑えてできる限り合理的に行動する人たちのように誤解されている、と書いています。そうじゃない、と彼は言います。むしろ「僕らは、効果的な利他主義に 燃えてるんだ。” ”

” ”まず、合理的な人間の概念から始めます。合理的な人間とは、世界について、なにが自分の利益になるかについて、また自分がすべきことについて、合理的な考えを自らに課している人だと言います[ 16]。合理的な人間は、合理的な批判の余地のないエビデンスや価値観に従った考え方を大切にします。” ”

” ”本当に大切なのは、他者の利益を考えているかどうかです。〈いちばんたくさんのいいこと〉につながる行動を望むなら、その行動が犠牲を伴うか、つまりその人の幸福度が下がるかどうかに目を向けるべきではありません。むしろ、自分を幸せにする行動が、他者を幸せにするかどうかに目を向けるべきでしょう。” ”