互いの不完全性を受け入れ、補い合い、高め合い、創造する関係性(クリエイティブペア)


読み貯めていて共有したくなった書籍。およそ1年前、組織の規模が飛躍的に増え始め、いわゆる300名の壁に差し掛かっていた頃、素晴らしい相棒と出会った。その相棒さんが勧めてくれた、とても印象深い本書。

”ペアの結びつきを象徴する最も強力な言葉は、最も単純でもある。すなわち、「私たち」だ。距離が縮まるにつれて、人称代名詞は単数形が減って複数形が増える。ペンベイカーによると、これは意識的な選択ではない。2人がしだいに「私」ではなく「私たち」の単位で考えるようになる。 親密なペアは協力して知識を消化し、いわば2人の記憶を連動させる。心理学者のダニエル・ウェグナーはこれを「交換記憶」と呼んだ。「1人ですべてを記憶できる人はいない。ペアやグループのメンバー1人ひとりが(単語などを)記憶して、自分が知らないことはほかのメンバーが知っているという状況のほうが、自分が記憶した分からはるかに多く思い出せる”

”クリエイティブな人は、驚くほど柔軟性を大切にする。彼ら自身が驚くほど柔軟性が高いからだ。心理学者のミハイ・チクセントミハイと研究室の学生は1990~95年に、 91 人の優れたイノベーションの担い手を調べた。「彼らの性格がほかの人と違う点を一言で表現するなら、『複雑』であることだ」と、チクセントミハイは著書『クリエイティヴィティ』(世界思想社)で書いている。「彼らは大半の人からかけ離れた思考や行動を持つ。そのとき彼らは『個人』ではなく、1人でありながら『多数』であるという極端な矛盾を抱えている”

出典:© GAHAG

”創造的な前進にとって、変化は欠かせない。あらゆる創造的なやり取りには協力の要素があるが、全体として競争のほうが少し優位だ。人間は基本的に秩序と結束と関係を求めるものだから、意外に思えるかもしれない。しかし、進歩には無秩序と流動性が必要だ。私たちのバランスを大きく崩す人が、私たちの創造の最も強力な助っ人になるときもある

”挑戦したら、次は受け入れる。 あなたのパートナーは嫌なヤツだという事実を受け入れよう。あなたが嫌なヤツだという事実も受け入れよう。つまりはお互いさまだ。パートナーについて腹が立つところは、わくわくさせられるところでもある。いちばん好きなところは、いちばん頭に来るところでもある。髪型が決まれば朝からご機嫌、決まらなければ不機嫌になるのと同じだ。  あなたにとって必要な人は、あなたを喜ばせるし失望もさせるが、創造的な経験の指数は喜びや失望で決まるわけではない。思考や感情は、決して取るに足りないものではないが、最も重要なものでもない。肝心なのは、創造的な作業だ”

互いの不完全性を受け入れ、補い合い、高め合い、創造する関係性(クリエイティブペア)を、そこかしこに意図的に仕込むことが出来れば、素晴らしい組織を生み出すことが出来るかもしれないと、新たなパラダイムを手に入れることが出来ました。引き続き、良きチーム、良き組織を創っていくこと、向き合っていきます。

概要

グーグルもアップルもソニーも、なぜ「2人で起業」?
あらゆるイノベーションは、「2人組」から生まれる?

ビジネス、音楽、サイエンス、文学、スポーツ、ファッション…
クリエイティブ・ペアに学ぶ、創造性のシンプルな本質。

私たちは「孤高の天才」に憧れを抱く。
驚異的なひらめき、非凡な才能。
だが、それは幻想にすぎない。

世界で最も革新的な企業。
音楽史上最高のアルバム。
生命の秘密を解く発見。

あらゆる分野の革新は、刺激し合い、補完し合う
「クリエイティブ・ペア」が生み出してきた。
天才たちは、1+1が無限大に感じる人と
ペアを組んで偉業を成し遂げてきた。

一人では何もできないが、二人なら何でもできる。
――どうすれば、そういう人間関係を築けるだろう?

本書に登場するクリエイティブ・ペア
・アップル共同創業者:スティーブ・ジョブズ&スティーブ・ウォズニアック
・20世紀最高の作曲デュオ:ジョン・レノン&ポール・マッカートニー
・最も成功した投資パートナー:ウォーレン・バフェット&チャーリー・マンガー
・行動経済学の共同創始者:ダニエル・カーネマン&エイモス・トベルスキー
・DNA二重らせん構造の共同発見者:ジェームズ・ワトソン&フランシス・クリック
・『サウスパーク』共同制作者:トレイ・パーカー&マット・ストーン
・スポーツ史上最強の双子:ボブ・ブライアン&マイク・ブライアン
・累計3億部のベストセラー作家コンビ:C・S・ルイス&J・R・R・トールキン

目次

イントロダクション 1+1=無限大

第1部 邂逅

  1. 「君を見ていると、チャーリー・マンガーを思い出す」――組み合わせと磁石
  2. 双子より似ている双子――類似と相違
  3. 2匹の子グマのように――2人のあいだに電気が走る

第2部 融合

  1. プレゼンス→信用→信頼――融合の3段階
  2. 信じる心――絆を深める最終段階
  3. 「みんな消えちまえ!」――「私たち」の心理学
  4. 「どんな力も私たちを分かつことはできない」――創造的な結婚

第3部 弁証

  1. スポットライトと影――主演俳優と監督
  2. ボケとツッコミ――液体と容器
  3. ひらめきと努力――夢想家と実務家
  4. 役割の交代――生成と共鳴
  5. 「すべては対照的だ」――弁証の心理学
  6. 心のなかの「他人」――創造的思考の対話

第4部 距離

  1. 創造的な修道僧と結合体双生児――究極の距離
  2. 「いつも相手を驚かせようとしていた」――多様な距離感
  3. 「ないものを求める」――距離の欲情

第5部 絶頂

  1. 最も親密な敵――創造的な企み
  2. ルーク・スカイウォーカーとハン・ソロ――クリエイティブ・ペアとコーペティション
  3. 「誰だって力を手に入れたいさ」――明確な力と流動的な力
  4. 「オーヴとやり合うのが好きなんだ」――対立
  5. アルファとベータ――ヒッチコックのパラドクス
  6. 「マッカートニー・レノンはどうかな?」――権力のダンス

第6部 中断

  1. 「こんな状況はありえない」――揺さぶり
  2. 成功のパラドクス――くさび
  3. 修復不能――レノン・マッカートニーの別離
  4. 終わりのないゲーム――レノン・マッカートニーは決裂したのか?

エピローグ バートン・フィンク、スタンダード・ホテルにて
謝辞、訳者あとがき、参考文献、原注、人物索引