個人を優先させるか、組織を優先させるかという二者択一は迫られない。~なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか ― すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる~


最近、改めて、良い組織、良いチーム、良い企業文化を創りたいという欲求が、今まで以上に、ムクムクと湧き上がってきています

認知科学を学び、恒常性バイアスに振り回されにくくなった、というのも大きいとは思いますが、最も大きな起点、契機となったのが、頼もしい仲間たちとの出会いにあると考えることがあります

自分は、自分の可能性を信じて、今までの紆余曲折を乗り越えてきた、いや、この紆余曲折を乗り越えながら、自分の可能性を切り拓いてきたという自負はあるのですが、まだまだ足りません、もっと挑戦したいことが山もどあります

日々発生する逃げ出したくなるような難局、失望の中にあっても、それらを上回る野心や、希望を創り続けることが出来ていて、とても恵まれ、幸せなだなあと感じるのですが、自分の成長だけではなく、共に働く仲間を、組織を、チームを活かして、共に成長していきたい、と、最近読み返していた、この書籍を見ながら改めて情熱が湧き上がって来ました

なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか ― すべての人が自己変革に取り組む「発達指向型組織」をつくる

””「組織を変革する」「業界に革新を起こす」──このような言葉は、近年実に多くの企業で耳にするようになりました。変革や革新によって、これまで自社が生み出しえなかった価値や世の中に存在していなかった価値を創出し続けなければ生き残れないという危機感は、多くの経営者やビジネスリーダーの中に深く刻み込まれています。 その危機感は、組織に属するビジネスパーソンに対して、仕事のやり方を変革するように、つまり日々の業務を「劇的に進化させること」を求めています。かつては、「これまでのやり方を覚える」あるいは「創意工夫をして改善する」ような業務スキルで通用していましたが、もはやそれだけでは不十分であると認識されるようになっていると言えます。””

””「自分らしくありのままでいること」や「人間らしい生活」の大切さが、ここ一〇年くらいで強調されるようになりました。その背景には、変革や革新を求め続ける現代の私たちの生き方が自然の営みとはかけ離れたものになっていないか、そのために本来の自分がもつバランスが崩れてしまっているのではないかという苛立ちや、どこまでも、いつまでも変わることを強いられるかのような過酷なレースが続いていくことへの漠然とした不安があるのかもしれません。 二一世紀に入ってまもなく二〇年が過ぎようとしているいま、私たちはこうした「変わらざるをえない」外的なプレッシャーと、「人間らしく、自分らしく暮らしたい」という内的な衝動、この高まり続ける二つのエネルギーの圧力鍋の中で翻弄されながら生きているのかもしれません。””

””人の心を動かし、多大な影響を与えてきたリーダーの多くには、有名無名を問わず、一つの共通点があります。それは、その人が自然体であり、かつ、その人が担うべき役割を果たしているということです。リーダーシップ開発の文脈では、高いパフォーマンスを発揮しているリーダーは、「本来の自己(Authentic Self)」と「役割の自己(Role Self)」が高い次元で統合されていると言われています。””

””大半の人が「自分の弱さを隠す」ことに時間とエネルギーを費やしている。まわりの人から見える自分の印象を操作し、なるべく優秀に見せようとする。駆け引きをし、欠点を隠し、不安を隠し、限界を隠す。自分を隠すことにいそしんでいるのだ。””

””人が仕事で燃え尽き状態に陥る最大の原因は、仕事の負担が重すぎることではない。その要因とは、成長を感じられずに長く働き続けることだ。だから、弱点の克服に取り組もうとせず、弱点を隠そうとする結果、みずからの人としての成長をはばんだり、その足を引っ張ったりすることの弊害は、あまりに大きい。””

””みんなが自分の弱さをさらけ出せる、安全であると同時に要求の厳しい組織文化によって生み出される。本書では、このような組織を「発達指向型組織(DDO=Deliberately Developmental Organization)」、略して「DDO」と呼ぶことにしたい。””

””組織と個人が意識的・継続的に成長することを──そして、組織と個人が互いの成長を支援し合うことを──最重要課題に位置づける文化を築いている。しかも、すべての人が毎日、その活動を最も優先させて取り組んでいる。このような組織文化は、人材開発と企業戦略の設計においてきわめて画期的なものだ。””

””人々の能力をはぐくむことを大切に考えるなら、日々の仕事のなかで成長を目指す活動に、メンバー全員がどっぷり浸かれるような組織文化を設計しよう。””

””組織から切り離された特別なプログラムを実施するのではなく、組織そのものを能力開発の場にしよう。また、個人の発達を組織の大目標と位置づけよう。つまり、組織文化がほかのビジネス上の目標(収益性や品質など) を後押ししているかだけでなく、文化が人々の成長を──メンバーがみずからの限界と死角を克服し、複雑さを増す仕事に対する習熟度を高めることを──後押しできているかを問い、それを目指そう。そうした成長の支援は、はっきり目に見える形で、日々の業務を通じてつねに継続的に実践されなくてはならない。 さらに、安心感をもてる環境をつくり、人々が自分の弱さを見せることを許し、それを促そう。それにより、同僚同士が弱点の克服を支援し合うようにすることが目的だ。そしてもう一つ、メンバーのエネルギーすべてが組織のミッションの達成に注がれるようにしよう。””

””このような組織では、個人を優先させるか、組織を優先させるかという二者択一は迫られない。また、コーチングやリーダーシップ研修の類いがなくなるわけでもなく、これらの取り組みは、もっと個人の発達を重んじる組織文化にしっかり根ざしたものになるだろう。DDOでは、個人の発達は「付け足し」ではない。発達指向の考え方が、組織のガソリンとエンジンの両方に浸透しているのだ。””

””戦略に文化からアプローチする 本書で紹介するDDOのリーダーたちが目指していることは、きわめてはっきりしている。ビジネスを成長させ、同時に社員も成長させるために、組織文化を充実させようとしているのだ。その取り組みを、日々精力的におこなっている。彼らはビジネスの成長と社員の成長を別個の目標や使命と考えず、一体のものとみなしている。DDOでは、この二つはトレードオフの関係にはない。両立させることにより相乗効果を生み出せる関係にある。これらの企業は、ビジネスを成功させるための画期的なアプローチを教えてくれていると、私たちは思っている。””

””幸福には別の定義がある。それは、 人間が可能性を開花させる「プロセス」を幸福とみなす 考え方で、古代ギリシャの哲学者アリストテレスが提唱した「エウダイモニア(=幸福)」の概念に起源をもつ。この種の幸福も、やり甲斐と関わりの要素をともなうが、その感覚は、自己の成長と開花を経験すること、あるべき自分の姿に近づくこと、より自分らしく世界と関わることによる充実感との関係で得られるものだ。””

””新しい命を産み落とすときに陣痛を経験するように、人が成長し、自分の限界を知って克服するプロセスにも痛みがついて回る場合がある。「ポジティブ」な感情をもてる状態を幸福とみなすのではなく、成長のプロセスを幸福と考えるとすれば当然、幸福を経験するためには、喪失や痛みや苦しみを遠ざけるのではなく、それを味わわなくてはならない。””