いかに利活用するか~コトラーのマーケティング5.0 デジタル・テクノロジー時代の革新戦略~


2022/5/30頃。

全体を通じて、特に真新しい情報が得られたというわけではなく、既知の情報が多かったのですが、「知っていること」と、「できること」には、本当に大きな隔たりがあるなと、痛感させてもらった書籍となりました。

AI、センサー、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、IoT、ブロックチェーンなどを組み合わせて、カスタマージャーニーの全工程で価値を生み出し、伝え、提供し、高めていけると書かれているのですが、さて、と。

最新のテクノロジーを組み合わせることで、色々なことにトライ出来そうではあるのですが、いやはや、手段としてテクノロジーを利活用するのではなく、顧客体験を高めていく目的のために、ROI高く、適正な投資として、どういうテクノロジーを、どのように使っていけるだろうか、と。

「データドリブン・マーケティング」「予測マーケティング」「コンテクスチュアル・マーケティング」「拡張マーケティング」「アジャイル・マーケティング」といった、マーケティング5.0を構成する5つの方法論も提示してくれているので、具体的にこれらをどう活用していくかにも触れられてはいるものの、実際に、今の僕たちが、すぐに利活用するイメージを鮮明に描くことが難しかったです。

しかしながら、その「気付き」を得られたタイミング(2022年5月頃)が良かった気がしていまして、マーケティングはもちろんのこと、経営全般に、どのようにテクノロジーを利活用していけるか、真剣に向き合い直す良い契機となりました。

目次
第1部 序論
第2部 デジタル世界でマーケターが直面する課題
第1章 マーケティング5.0へようこそ
   人間のためのテクノロジー
第2章 世代間ギャップ
   ベビーブーム世代とX、Y、Z及びアルファの各世代に対するマーケティング
第3章 富の二極化
   社会のために包摂性とサステナビリティを生み出す
第4章 デジタル・ディバイド
   テクノロジーをパーソナルに、ソーシャルに、そしてエクスペリエンシャルにする
第3部 テクノロジー支援マーケティングのための新戦略
第5章 デジタル化への準備度が高い組織
   すべての組織に合う戦略はない
第6章 ネクスト・テクノロジー
   人間のようなテクノロジーが離陸する時だ
第7章 新しい顧客体験
   マシンはクルーだが人間は温かい
第4部 マーケティング・テクノロジー活用の新戦術
第8章 データドリブン・マーケティング
   よりよいターゲティングのためにデータエコシステムを構築する
第9章 予測マーケティング
   先を見越した行動で市場需要を予測する
第10章 コンテクスチュアル・マーケティング
   パーソナライズされた感覚体験をつくる
第11章 拡張マーケティング
   テクノロジーを活用したヒューマン・インタラクションを提供する
第12章 アジャイル・マーケティング
   迅速かつ大規模に業務を実行する

””マーケティング5・0は、世代間ギャップ、富の二極化、デジタル・ディバイドという三つの大きな課題を背景に登場する。態度や選好や行動が大きく異なる五つの世代が地球上でともに暮らしているのは、今が史上初めてだ。ベビーブーム世代とX世代は、まだ企業でリーダー的地位のほとんどを占めており、他の世代より高い購買力を持っている。しかし今では、デジタルに精通しているY世代とZ世代が、最大の労働力人口はもちろん最大の消費市場も構成している。ほとんどの決定を下す年配の企業役員と、もっと若い管理職や顧客たちとの断絶は、重大な障害になるだろ~””

””マーケティング5・0とは、人間を模倣した技術を使って、カスタマー・ジャーニーの全行程で価値を生み出し、伝え、提供し、高めることだ。マーケティング5・0の重要なテーマの一つが、マーケターの能力を模倣することをめざす一群のテクノロジー、いわゆるネクスト・テクノロジーである。こうしたネクスト・テクノロジーには、AI、NLP、センサー、ロボティクス、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)、IoT、ブロックチェーンなどがある。””

””われわれの基本理念は、「技術は戦略に従うべきだ」である。したがって、マーケティング5・0のコンセプトはツールを問わない。企業は市場で入手できるいかなる支援ハードウェアや支援ソフトウェアを使ってでも、マーケティング5・0を実行できる。ただし、それらの企業には、さまざまなマーケティング上の使用例に適切な技術を使う戦略をどのように設計するべきかを理解しているマーケターが存在していなければなら~””

””ネクスト・テクノロジーは、マーケターがカスタマー・ジャーニーの全行程にわたって価値を生み出し、伝え、提供し、高める手助けをするために使われる。摩擦のない魅力的な新しい顧客体験(CX)を生み出すことが目的である【図1―1】。それを実現するにあたり、企業は人間の知能とコンピューターの知能とのバランスのとれた共生を活用しなければなら~””

””必ず成功するマーケティング投資などありはしない。だが、あらゆるマーケティング活動のリターンを計算するという考えは、マーケティングの説明責任を引き上げてくれる。AI搭載の分析ツールのおかげで、今では新製品の発売や新キャンペーンの発表前にマーケターが結果を予測することが可能になっている。予測モデルは、過去のマーケティング活動からパターンを見つけ出して何が成功するかを理解し、その学習に基づいて未来のキャンペーンの最適設計を推奨してくれる。これを利用することで、マーケターはブランドを失敗の危険にさらさずに先手を~””

””マーケティング5・0を応用する企業は、最初からデータドリブンでなければならない。データエコシステムを構築することは、マーケティング5・0を実行するための必要条件だ。これによってマーケターは、予測マーケティングを行って、あらゆるマーケティング投資の予想利益を推定することができる。また、売場で一人ひとりの顧客にパーソナライズされたコンテクスチュアル・マーケティングを提供することもできる。最後に、現場のマーケターは拡張マーケティングの利用によって、顧客とのシームレスなインターフェースを設計することができる。これらすべての実行要素は、市場の変化にリアルタイムで対応するために企業としての俊敏性が求め~””

””そのうえ、若い世代の従業員を引き付け、維持するためには、企業の価値観がこれまで以上に重要である。選ばれる雇用者になるためには、企業は従業員に対しても顧客に対して使うものと同じストーリーテリング・ナラティブ〈対話をしながらストーリーを共創していく手法〉 を使う必要がある。企業の価値観は、手がけている事業とうまく整合しているとき、もっとも本物だと感じ~””

””マーケターが今日直面しているおもな課題の一つは、雇用から思想、ライフスタイル、市場に至るまで、人間の生活のあらゆる面で極端な二極化が起こっていることだ。その根本原因は、社会経済階級の最上層と最下層の格差の拡大である。中間の市場は、下降するか上昇するかのどちらかになって、消滅し始めて~””

””あらゆるものが二極化しているとき、ブランドや企業のポジショニングを決める意味のある方法は〈包摂性とサステナビリティという〉 二つしかない。二極化は企業が活動できる市場を限定する。だが、もっとも重要な点として、二極化は、とくに経済が鈍化し、プレーヤーが急増している中で、成長の機会を限定してしまう。  持続可能な開発計画(SDGs)と整合する包摂的でサステナブルなマーケティングは、よりよい富の分配を通じてこの問題を解決する。そして、それによって社会は元の形に戻るだろう。企業は人間中心というコンセプトを自社のビジネスモデルに組み込んで、目的を持って社会に投資し、同時にテクノロジーを活用しなければならない。テクノロジーは進歩を加速し、すべての人に機会を開くことによって、大きな役割を果たすからで~””

””マーケティング5・0では、企業はテクノロジーの正しい利用は人間の幸福を高める可能性があることを、顧客に対して実証する必要がある。テクノロジーは顧客の問題を解決するためのパーソナライズされたアプローチを可能にし、さらにオプションによるカスタムも可能にする。デジタル化は社会的関係を消し去るわけではないということを、企業は顧客に確信させなければならない。社会的関係を破壊するどころか、デジタル化は顧客と顧客コミュニティの間により親密な繫がりを築くプラットフォームを提供する。人間対マシンという二分法には終止符を打つ必要がある。優れた顧客体験を提供するためには、ハイテク・インタラクションとハイタッチ・インタラクションの統合が必要不可欠なのだ””

””デジタル・インタラクションを促進するためには、企業はデジタル化のメリットがはっきり見えるようにしなければならない。デジタルへの移行を促す正のインセンティブや負のインセンティブを提供するのも一案だろう。正のインセンティブは、デジタル・プラットフォーム上でのキャッシュバック、割引、消費者プロモーションなど、即時の満足という形をとるかもしれない。負のインセンティブは、インタラクション中にオフライン・メソッドを選んだら追加料金を課すという形をとるかもしれないし、極端な場合はオフライン・モードを利用できないようにすることも~””

””企業はカスタマー・ジャーニー中の顧客のフラストレーション・ポイントを特定し、デジタル化でそれに対処する必要がある。物理的インタラクションには、とりわけその効率の悪さに関して、特有の弱点がある。フラストレーションの大きな原因になるのが、オフライン・タッチポイントにおける長い待ち時間や行列だ。複雑なプロセスも、往々にして混乱や顧客の時間の浪費に繫がる。迅速で簡単な解決策を望む顧客にとって、デジタルはプロセスの一部を引き受けることが~””

””パンデミック後の時代には、デジタル顧客体験を構築できる企業が成功するだろう。デジタル化は基本的な顧客エンゲージメントのレベルで終わってはならず、マーケティングから販売、流通、製品の配送、修理まで、顧客接点全体のあらゆるものを含んでいなければならない。そして、それらすべてのデジタル・タッチポイントが、一貫性のある顧客体験に統合されるべきで~””

””デジタル変革の成功を決定づけるもっとも重要な要因は、おそらく組織だろう。従業員は、遠隔で働いたりバーチャル空間で他者と協働したりするためのデジタルツールを装備されなければならない。変革を進めている途中の従来型企業では、これらの新しいデジタルツールを既存のITシステムと統合する必要がある。  組織の学習プロセスを加速するために、企業はデータ科学者、UXデザイナー、ITアーキテクトなどの新しいデジタル人材をリクルートしなければならない。また、文化にも力を入れるとよいだろう。文化はデジタル変革を阻むおもな障害であることが多いからだ。企業が構築する必要があるのは、迅速なテストに加えて事業マネジャーとデジタル人材との協働も継続的に行われるアジャイルな文化で~””

””データと情報と知識はマシンの領域として確立されている。コンピューターは、無秩序なデータを高速で、しかも無限に近い能力で処理して、意味のある情報にするのが得意である。これによって生まれる新しい情報は、関連情報や他の既知の文脈の貯蔵庫に追加されて、いわゆる知識を発展させる。コンピューターは自身のストレージ〈記憶装置〉 の中にある大量の知識を整理して管理し、必要に応じて取り出すことができる。処理の量的性格と量の多さゆえに、マシンはこの種の仕事にうってつけだ。  他方、三つのいくぶん曖昧で直観的な要素(ノイズ、知見、知恵)は、人間の領域にある。ノイズはデータの 歪みや逸脱で、データを構造化されたクラスターに分類する際に大きな妨げになる恐れがある。この好例は外れ値だ。コンピューターは、外れ値を他のデータセットからの大きな逸脱と素早く認識できる。だが、外れ値は有効なばらつきである場合もあれば、エラーの場合もある。そして、それを判定する唯一の方法は、現実世界の理解に基づく主観的判断~””

””人間とマシンは、 収斂 的思考と拡散的思考で協働することもできる。コンピューターは収斂的思考の能力を持つことで知られている。文字や数字だけでなく画像やオーディオビジュアルも含む、多様な非構造化データセットの中のパターンやクラスターを識別できる。それに対し、人間は拡散的思考に長けており、新しいアイデアを生み出したり、多くの潜在的解決策を探求したりすることが~””

””人間とマシンは顧客インターフェースでも協力することができる。通常、チャネルの選定は顧客の階層によって決まる。人間とのインタラクションは対応コストが高いため、一般に有望な見込み客と重要な顧客に適用される。一方、マシンは見込み客を絞り込むためや、高コストの対応をする必要がない顧客と接するために使われる。このように対応のセグメント分けをすることで、企業はコストをコントロールしながら、同時にリスクを管理するのである。  実際、インタラクションのためにAIを利用するのはリスクが高い。マイクロソフトの今では廃止されているチャットボット、テイ(Tay)は、これをよく示している。テイは挑発的なユーザーの攻撃的なツイートから学習して、ツイッターで同様に攻撃的なメッセージを投稿するようになった。そして、お披露目からわずか十六時間後に引退させられた。グーグルも似通った問題を経験している。同社の画像認識アルゴリズムが、ユーザーの黒人の友人たちにゴリラというラベルを付けたのだ。同社はラベルから「ゴリラ」という言葉を完全に除去することでアルゴリズムを修正した。AIの無神経さは、対処すべき最大の脅威の一つで~””

””人間とマシンの共生が最善の結果をもたらす分野の一つが、顧客インターフェースである。基本的かつ単純な質問に対しては、デジタル・インターフェースで十分だ。だが、より相談的要素の強いインタラクションについては、コンピューターはまだ人的インターフェースには及ばない。したがって、階層構造の中での分業は理にかなっている。  販売プロセスでは、ファネルのトップと中間はマシンに任せることができ、一方、ファネルのボトムは販売部隊によって実行される。顧客サービスでは、大部分の顧客にはデジタルのセルフサービス・インターフェースで対応し、顧客サービススタッフはもっとも価値のある顧客にのみ対応する。企業は特化型AIを活用して、デジタル・インタラクションの質を確保するべきで~””

””従来のような事前に計画した新製品投入戦略は、もはや有効ではなくなっている。変動性、不確実性、複雑性、曖昧性(VUCA)に満ちた時代には、企業が長期計画を立ててそれを実行することは、途中で無数の調整を行わないかぎり、不可能になっている。実際、ほとんどの長期計画は、節目の目標に到達したときにはすでに時代遅れになっている。  企業は顧客の変化の速さに対応すると同時に、競争相手より速く行動する必要がある。俊敏性がもっとも重要なのだ。かつては事業の安定性が、企業の拡大と成長における唯一の重要な成功要因だった。事業の安定性は依然として重要ではあるが、新しい成長エンジンの推進力になるアジャイルなチームによってそれを補完することも必要になっている。アジャイル・マーケティングは、企業がマーケティング5・0を実行するためのパズルの最後のピー~””

目次
第1部 序論
第2部 デジタル世界でマーケターが直面する課題
第1章 マーケティング5.0へようこそ
   人間のためのテクノロジー
第2章 世代間ギャップ
   ベビーブーム世代とX、Y、Z及びアルファの各世代に対するマーケティング
第3章 富の二極化
   社会のために包摂性とサステナビリティを生み出す
第4章 デジタル・ディバイド
   テクノロジーをパーソナルに、ソーシャルに、そしてエクスペリエンシャルにする
第3部 テクノロジー支援マーケティングのための新戦略
第5章 デジタル化への準備度が高い組織
   すべての組織に合う戦略はない
第6章 ネクスト・テクノロジー
   人間のようなテクノロジーが離陸する時だ
第7章 新しい顧客体験
   マシンはクルーだが人間は温かい
第4部 マーケティング・テクノロジー活用の新戦術
第8章 データドリブン・マーケティング
   よりよいターゲティングのためにデータエコシステムを構築する
第9章 予測マーケティング
   先を見越した行動で市場需要を予測する
第10章 コンテクスチュアル・マーケティング
   パーソナライズされた感覚体験をつくる
第11章 拡張マーケティング
   テクノロジーを活用したヒューマン・インタラクションを提供する
第12章 アジャイル・マーケティング
   迅速かつ大規模に業務を実行する