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insight(インサイト)――いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力

本書は、自己認識の重要性について科学的に検証し、体系的に説明してくれ、成功者やリーダーの意見を基に、自己認識の根源や高め方、自分の真の能力を過大評価してしまう恐ろしい状況から抜け出す方法などを提案してくれます。

””このテーマについて長年研究してきた結果、私は「 自己認識は二一世紀のメタスキルだ」と言うまでに至った。本書を読み進めれば分かるように、現在の世界における成功にとって極めて重要な各種の力──心の知能指数、共感力、影響力、説得力、コミュニケーション力、協調力など──は、 すべて自己認識がもとになっている。””

””本書に向けたオンライン調査をおこなってようやく、この認識の乖離の驚くべき原因を突き止めた。たしかに、ブラッドベリー博士の調査は実に五〇万人という膨大な人数を含むものだったが、彼の出した結論は調査した人びと 本人の「 自己評価に基づくもの」だった。それがどういうことか少し考えてみてほしい。自分が知るなかで最も心の知能指数が低いと思われる人を数人思い浮かべてみよう。その人たちに心の知能指数を自己評価してくださいと尋ねたら、賭けてもいいがその人びとは 最低でも 平均以上の評価をくだすと思わないだろうか。そこで、ブラッドベリーによる発見は、言い方を変えて、 自分が考える自分と、他人が見る自分の差が大きくなってきている とする方が、遥かに現実に近い。つまり、EQの 上昇 に見えたものは、自己認識の 低下 を意味している可能性が高いのだ””

””職場であれ、家庭であれ、学校であれ、遊びであれ、 私たちは他人の認識不足はすぐに責めるが、自分に認識が欠けているか自問することは(あるとしても) 極めて稀である。その典型例を紹介しよう。まさに本書の読者となり得る人びとに私がおこなった調査では、九五パーセントもの人が、自分は一定程度もしくはかなり自己認識力があると回答した!””

興味深かったのは、「内的自己認識」と「外的自己認識」についての解説です。内省が自己認識の手段とされてきましたが、本書では内省は考えるツールであり、知る手段ではないと指摘しています。

””内的自己認識 は、自分自身を明確に理解する力のことを指す。それは 自分の価値観、情熱、野望、理想とする環境、行動や思考のパターン、リアクション、そして他者への影響に対する内的な理解 のことだ。内的自己認識の高い人物は、本来の自分に見合った決断をくだし、より幸せで満足度の高い生活を送る傾向にある。””

””外的自己認識 は、外の視点から自分を理解すること、つまり 周りが自分をどう見ているかを知る力 だ。外的自己認識に長けた人びとは他人の視点から自分自身を正確に理解できるため、より強固で信頼度の高い関係を築くことができる。外的自己認識に欠けた人びとは、反対に、自分がどう見えるか分かっていないため、周りからのフィードバックで不意打ちを食らうことがある(周りが伝える勇気を持っていればの話だ)。””

””そうすると、内的自己認識ができる人は、外的自己認識もできると想像するのは自然なことだ──自分の気持ちや感情をよく知っていることは、自分がどう見られているかを察知するのにも役立つだろうと思うはずだ。しかし不思議なことに、私の研究でも他の研究でも、この二つには 何の相関関係も見られない ことが多かった──いくつかの研究では反比例するとさえ示されていた! あなたの知り合いにも、自分のことを考えるのは大好きなのに、周りからどう見られているかはほとんど理解していない人がいるかもしれない。””

””要するに、真の意味で自分を知るには、自分自身を知ると 同時に 自分がどう見られているかを知る必要がある。しかも、その状態へ至る道のりは、多くの人が考えているものとは実に大きく異なる。そう言われて身構えたり、噓じゃないかと感じたとしても、安心してほしい。私の研究では、 自己認識は驚くほど伸ばすことができるスキル であることが分かっている。””

””自己認識をひとつの旅と捉えるなら、インサイトはその道中で起こる「アハ」体験だ。自己認識という高速を走る高出力のスポーツカーに燃料を与えるものだ。そんな燃料を得て、私たちはアクセルを踏む。燃料がなければ、路肩に乗り上げてしまう。””

さらに、本書では組織における自己認識の重要性やリーダーの役割についても言及し、組織全体が現実を把握し、メンバーが自己認識を持つことが求められると述べています。リーダーは自己認識の手本となるだけでなく、メンバーが正直にフィードバックできる環境を作る必要があるとしています。

””「コックニーの青年の旅」  ロンドン下町っ子と呼ばれるコックニーの青年は、同じロンドンに住む人から「あなたは何者か?」と尋ねられると、誇りを持って「私はコックニーだ」と答えた。そんな彼が同国オックスフォード州を訪れ「あなたは何者か?」と問われると、「ロンドン人だ」と答えた。さらに彼はフランスに渡り、同じ問いに「私はイギリス人だ」と答えた。同じように、アジアに行けば「ヨーロッパ人だ」と答え、将来、宇宙を旅して、違う星の人に尋ねられたら、「私は地球人」と自らを紹介するだろう。言うまでもなく、「彼」は同じ人。つまり、彼は出会う人ごとに、自己(アイデンティティ) を変化させるのだ。自分の存在とは、己だけで成り立たず、他者と向かい合うことによってはじめて確立される。””

僕自身の体験で言えば、狭い世界とはいえ自分なりのアイデンティティが確立され始めた27歳で、なんのゆかりもない韓国に、何者でもない人間として働き始め5年ほどを過ごし、ようやく言葉にも慣れ生活を整えた矢先に、またもや何者でもない寧ろマイノリティとしてベトナムで暮らし始め、言語も何もわからない中で5年間を過ごし、今度は沖縄、九州とド・スタートアップさながらで、カプセルホテルや、社宅を転々として、東京に凱旋的帰国をしている。

何度も、自分のアイデンティティをぶち壊して来た(壊さざるを得なかった)中で、所詮、自己認識などというものは、外部環境によっていとも簡単に変わってしまうのである、ということが身に染み込んでいる。

””結局のところ、この世には二種類の人間が存在する──自分には自己認識があると思い込んでいる人間と、実際に自己認識している人間だ。この世界を後者で満たしたい、というのが私の大きな願いだ。自己認識にとっての障害は無数にあるが、外からの視点といくつかの強力なツールを持ってすれば、それらを乗り越えていくことも不可能ではない。そうして乗り越えたとき、まったく新たな次元の自信と成功の礎を手に入れることになる。何にしても、インサイトがなければ、自分に喜びと幸せをもたらす道筋を描くこともできない。””

というわけで、ついつい、同じような環境に長くいると、自分が何者かっぽくなって来てしまうが、定期的に付き合う人や、住まい、仕事、時間など、大きな環境変化を創り出すことで、自己認識を刷新しながら生きていきたいと感じました。

””猛烈な変化の引き金となる爆弾を落とした。「重要なのは目標じゃない、重要なのはそこへ至るまでのプロセスだ」  ランチタイムに得たその金言が、ベンの言うように、「この惑星に自分が存在する理由を探る」一年にわたるプロセスに入るきっかけとなった。死ぬまでにしたいことのリストを増やすのではなく、自分自身に向けて遥かに核心的な問いを投げかけ始めた。自分がこの人生に 本当に 求めていることは何だ?””

””目標の設定は比較的簡単であるものの、それが必ずしも真のインサイトや完璧な幸福につながるわけではないということも示している。「自分は何を達成したい?」ではなく、より良い問いは「 本当は人生に何を求めている?」だ。目標はいったん達成されると気が抜けたり物足りない気分になる可能性があるが、願望は決して完全に達成されることはない。毎朝目を覚ますと、やる気で満たしてくれるものなのだ。また、仕事を辞めて世界を旅するといったうらやましい身分になくても、人はみな自分がこの惑星に存在するあいだに何を経験し成…””

””自分の価値観を知り、自分が情熱を燃やすものを知り、人生で何を経験したいか知ることで初めて、自分にとって理想的な環境を思い描くことができるようになる。サムの例を思い返してみてほしい。苦労して最初に勤めた会社を辞め、彼は幸運にもキャリアのかなり早い時期に、自分が一番フィットする環境に対する貴重なインサイトを得たのだった。自分と同じ価値観を持ち、自分の愛することをさせてくれる会社を見つけることは、自分を疲弊させるのではなく力づける環境を見つけることに等しかった。そしてどんな生活環境や、職場や、人間に囲まれていたいかを考える際、「フィット」にとって一番の指標になるのが「エネルギー」だろう。結局のところ、あなたの環境はエネルギーを生むものだろうか、それとも奪うものだろうか?””

””では、どうすればピースをひっくり返す方法を学ぶことができるのか? そのひとつのアプローチが、 過去にした予測と実際の結果を比較検証する習慣を身につける ことだ。著名な経営学者のピーター・ドラッカーは、自身も二〇年以上活用してきたシンプルで実践的なプロセスを紹介している〔 43〕。重要な決断を下すたびに、そのとき自分が考えた将来の予測を書き記しておくのだ。それから、何か上手くいかなくなったときに、過去におこなった予測と、実際に起こったことを比較する。””

””盲点を最小化する二つ目のテクニックは、特に自分がすでによく知っていると思っている分野をひたすら 学び続けること だ。一九九九年の記念碑的な研究で、デイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーは、能力が低くて自信過剰な人物でも、ある作業のパフォーマンスが向上するように訓練を受けると、実際に能力が向上しただけでなく、以前は自分に能力が足りていなかったことにも気づくことを突き止めた〔 44〕。心から継続的な学びに尽力すること( 自分は分かっているという気持ちが増せば増すほど学びが必要になってくる、と自分に言い聞かせること) は、認識の盲点を乗り越え、自身の影響力を高める効果的な方法だ。””

””そして最後に、 自分の能力や行動に対するフィードバックを求める べきだ。これまでに紹介してきたすべてのツールのなかで、自分を見つめ、三つの盲点を克服する手助けとなる可能性が一番高いのが、客観的なフィードバックだ。それはなぜか? のちに語るように、周りの人間には必ずといっていいほどいつも、こちらには見えないものが見える。そのため、職場であれ家庭であれ、自分に真実を告げてくれる人を周りに置いておく必要がある。””

””どうすれば、色メガネをかけるべきときと、外すべきときを見分けることができるだろう? 目安としては、 絶え間なく挑戦を続けてきて気力を養う必要があるときや、粘り強く続ければ成功できる場合は、フィール・グッド効果が役に立つ。これはオーディションなどで落とされることが日常茶飯事の役者のような仕事に特に当てはまる。さらに、「出版するか、消え去るか」の科学の世界にも当てはまる。ダニエル・カーネマンは、「ありとあらゆる失敗が繰り返され成功はめったにない、というのが大方の研究者の運命である〔 39〕。自分の研究の重要性について妄想を抱けない人間は、そうした状況に直面したらすっかり気落ちしてしまうにちがいない」と語った。しかしここにはひとつ極めて重要な注意事項がある。色メガネをかけて自分の道に固執する前に、その道が実際にどこかへ行き着くものであるかを確かめなければならない。””

””ユニコーンたちの方が多くの時間(およそ二〇パーセント以上) をソーシャルメディアに費やしていることが分かって驚いた。ただし、その時間の使い方が大きく違った。ログインしてセルフィーや、まもなく向かうバケーションについてや、最新の仕事の成果について投稿するのではなく、ユニコーンたちは他人と真に関わり合い、つながりを維持するためにソーシャルメディアを利用していた。五〇代の起業家であるユニコーンは、私たちにこう語った。「ソーシャルメディアは私が大切に思っている人たちが何を考えているかを見せてくれるものです。私はフェイスブックに多くは投稿しませんが、気持ちを高めるものや、笑えるものや、特別なものを週に数回シェアするように心がけています。写真を投稿するときは、木にとまるワシや夕暮れの写真が多いです。周りとシェアできる美しいもの、ということです」。””

””ここでのメッセージは明快だ。自己陶酔を脱して自己認識へと至るには、 インフォーマーになろうと励むこと ──つまり、自分への注目を減らし、他人と関わり、つながっていくことだ。次の二四時間は、オンラインでもオフラインでも、自分がどれだけ自分のことを話していて、どれだけ自分以外のことに注意を払っているか観察してみよう。「ミーフォーマー」になりたくなる会話のトピックや投稿があるときは、自分にこう問いかけよう。「これをしてどんな効果を狙ってる?」。気をつけてほしい、これは初めのうち簡単なことではない。本書に取り組み始めてから、私はこのテクニックを使い始めたものの、自己陶酔への引力がずいぶん強くて驚いた。この問いかけのおかげで、これまで気づかなかった多くの行動が明らかになった。それからというもの、私は特にオンライン上で、自分の見せ方を変えようと努力した。数日のあいだ実践してみれば、必ずや驚くようなことを発見できるだろう。  一方で、他人へ関心を向けること自体は、「自分教」と戦う助けにならない。関心を向けるだけでなく、自分自身の能力に対する、より現実的な視点が必要になる。言い換えれば、 謙虚さを養うこと だ。””

””なぜと問うと、人は被害者のメンタリティになってしまうんです。だから永遠にセラピーへ通うことになる。心の平穏が乱されたとき、わたしは「何が起こってる?」と自分に声をかけます。「自分は何を感じてる?」。「自分のなかでどんな会話が繰り広げられてる?」。「どんな風にすれば、この状況を別の観点から眺められる?」。「よりよく対応するためには何ができる?」  そのため内的自己認識においては、 なぜではなく何 というシンプルなツールが、かなり大きな効果をもたらし得る。””

””「なぜ」の質問は自分を追いつめ、「何」の質問は自分の潜在的な可能性に目を向けさせてくれる。「なぜ」の質問はネガティブな感情を沸き起こし、「何」の質問は好奇心を引き出してくれる。「なぜ」の質問は自分を過去に閉じ込め、「何」の質問はよりよい未来を作り出す手助けをしてくれる。  事実、「なぜ」から「何」への変化は、被害者意識から成長への変化 だ。””

””ユニコーンたちの多くが、短い、的を絞ったチェックをおこなう習慣があると語っていた(ベンジャミン・フランクリンのように)。建築家から起業家となったあのジェフは、自身のプロセスについて、こう語った。「批判的な第三者の立場になって、こう問うんだ。『今日の自分はどうだった? 今日の過ごし方を自分はどう感じる?』」  内省(あるいは、もっとひどく、反芻) に時間を費やすのではなく、日々のチェックは、その日に下した選択を振り返り、パターンを検討し、上手くいった点といかなかった点を観察することに使うべきだ。””

””毎晩五分の時間を作ってみよう──帰宅中の車のなかでも、食後にゆっくりしているときでも、ベッドに入ったあとでもいい。意識的に自分にこう問いかけてみよう。 今日は何が上手くいった? 何が上手くいかなかった? 何を学び、明日からどのように賢くなれる?””

””愛のない批判者と無批判な熱愛者にフィードバックを求めるべきでないなら、誰に求めればいいのだろう? 答えは 愛のある批判者 だ。正直でありながら、心底こちらのことを思ってくれる相手だ。しかしこの理想の相手は、明らかにそうと分かる人物だとは限らない。最も近しい人(パートナーや親友など) が、一番の愛ある批判者だと考えがちだが、こちらを一番よく知っているというだけでは、この役には不十分だ。考慮すべき要素が、他にもいくつかある。  そのひとつが 相互信頼の度合い だ。愛ある批判者は、あなたが死体を埋めるのを手伝ってくれたり、深夜二時に刑務所から逃げるのを手伝ってくれたりする相手である必要はない(そんなことをしてくれる友人が必要にならないことを願う)。しかし愛ある批判者は、心からこちらのことを思ってくれているであろう相手でなければならない。自分に近しいからといって、必ずしも信頼できるわけではない。相手のことを長く知っているほど、そして実際に関わり合いがあるほど、関係は複雑なものになる可能性がある(「 友のフリをした敵」という言葉は、特にこの状況を言い表すために生まれたものだと思う)。長く複雑な関係の歴史を持った相手を選んだからといって、必ずしも役に立つフィードバックが得られないというわけではないが、必要以上に複雑な対話となり、感情に負荷がかかる可能性がある。””

””愛のある批判者を見つける三番目にして最後の要素は、 こちらに対して残酷なまでに正直になる意志と能力 があるかどうかだ。それを測る一番のものさしは、相手がこちらに厳しい真実を告げてくれたことがあるかどうかだ。しかしそうした体験がなくても、別の状況でそれを推し量ることができる。自分の考えを伝えることを恐れない人物は、そうすることが気まずさを生む場合でも、愛ある批判者となる可能性が高い。””

””この話のポイントは、外的自己認識を得るにあたって、真実を求めることは必要だが、それだけでは十分ではないということだ。 真のインサイトを得るには、真実を聞く方法を学ぶ必要がある ── ただ単に「耳を傾ける」のではなく、本当の意味で「聞く」必要がある。これを簡単なこととは言わない。実際、私がおこなうコーチング指導においても、フィードバックに対するありとあらゆるネガティブなリアクションを目にしてきた。叫び、涙、沈黙、拒絶、挙げればきりがない。人は自己イメージに固執することで精神的な安らぎを得るという間違った行動をとってしまうため、怒って防衛的になったり(スティーヴを覚えているだろうか?)、逃げ出したくなったりする(文字通りの意味でも、耳を傾けないとか、やりすごすとか、なかったことにするという意味でも)。ユニコーンたちですらも足をすくわれる。しかし言い訳をしたり、言い逃れをしたり、フィードバックを八つ当たりだとか偏見だと責めたりするときというのは、ただただ自分が損をしている。結局のところ、自分の観点にばかりこだわっているとき──プリズムに光を通すのではなく、鏡のなかばかりを見ているとき──は、必ずしも自分が見ているものが正しいとは限らない。””

””最初から一つのことが明らかだった。会社の文化を変革しようとするのなら、まずは役員チームから始めねばならない、ということだ。彼が起こした最初の変化は、事業の進捗を検討する週に一度のミーティングを設定することだった。そのミーティングを彼はビジネス・プロセス・レヴュー(BPR) と呼んだ。その他の非効率的な会社規模のミーティングをすべて止め、BPRは「認識すること」を目的にした── 全員がプランと、そのプランの進捗と、会社が直面している難題についての現実を把握してもらう ことが目的だった。””

””BPRは毎週同じ曜日の同じ時間(木曜の朝七時) に開かれ、役員チームは全員出席が必須である。役員たちは新車種の開発から収入の流れ、そして生産性に至るまで、三二〇項目について点検する。各項目は色づけされている。緑は順調に進んでいて、黄色は潜在的な問題を抱えており、赤は致命的な問題を抱えている。ムラーリー体制下の九人の役員たちは、ムラーリーいわく「すべての関係者が利益を得られることを目指し、刺激的で、実行可能で、収益を上げ、成長を続けるフォードを生むための各部門の進捗」について一〇分間の簡潔な報告をおこなう。ムラーリーは、このミーティングが安全なものであることを強調した──誰も問題を持ち出すことをためらうべきではないし、真実を告げたからといって誰も罰したりはしない。ミーティングのやり方は学んでいけばいいから、何か分からないことがあっても構わないと彼は告げた。””

””まず、彼は自身のビジョンを再び明確にした。 各自が力を合わせ、 効率的なグローバル企業として自動車業界を牽引する。それを達成するためには、全員が、自分の担当部門で起きているすべての事柄についてオープンになる必要があると彼は念を押した。「それこそが、私が知る組織運営の唯一の方法です」と彼は言った。「全員に参加してもらう必要があります。全員に認識を持ってもらう必要があります。そして力を合わせて赤を黄色に、そして緑に変えていくのです」””

””すると、とてつもなく重い沈黙のなかから、予想外の音が聞こえてきた。アラン・ムラーリーの力強い拍手だった。「マーク、よく知らせてくれた!」。彼は笑みを浮かべていた。全体を向いて、ムラーリーは尋ねた。「マークを助けるには何ができる?」。すぐに、役員のひとりが解決策を提案し、すぐさま取りかかった。  これを見たムラーリーは、ようやく役員チームが実りあるBPRをできたと希望を持った。ところが翌週、またもすべてのスライドが緑で大いに落胆した。しかしその日役員チームは、多くを物語る光景を目にした。サンダーバード・ルームに入っていくと、マーク・フィールズが微笑むムラーリーの隣に座っていたのだ。マークは解雇されなかったどころか、称えられさえしていた。これが、戦いに疲弊した冷笑的な役員たちが必要としていた決定的な安心材料となった。役員たちは心から信じるようになった──自分たちは新しい世界にいるのだと。翌週、それぞれがBPRに向けて用意したスライドは、赤や黄色の宝石が入り乱れる輝く虹のようだった。””

””それ以降、あらゆるレベルで役員チームは自己認識への 公道 を突き進んでいった。個人のレベルでは、自分への期待を理解し、自分を制限する考えや振る舞いと向き合うようになり、チームのレベルでは、事業をめぐる環境や、事業計画や、事業の進捗を把握するようになった。しかしながら、こうした情報を手にしたのは、役員チームだけではなかった。社内全員に信頼が置かれ、社員たちは会社の向かう先や、自身の役割や、個別の状況を把握することが求められた。これらの情報は組織外の関係者たち──顧客、投資家、ディーラー、サプライヤー、そして世間にも伝えられた。””

””自分についてや、周りが自分をどう見ているかを理解することが個人レベルでの自己認識だとするなら、自己認識を持つチームとは、力を尽くして同様の理解を集団レベルで得ることだ。より具体的に言えば、自己認識を持つチームは五つの物事を定期的に評価し対処している〔 7〕。それらを 集団的インサイトの五つの基礎 と呼ぼう。一つ目は、 目的 だ。何を達成しようとしている? 二つ目は、その目的に向けた 進捗 だ。進行状況はどうなってる? 三つ目は、その目標を達成するための プロセス だ。どうやって目標を実現させる? 四つ目は、自分たちの事業や、その環境に対する 前提 だ。それは正しい認識だろうか? そして最後の五つ目は、 個々人の貢献 だ。各メンバーはチームのパフォーマンスにどんな影響を与えている?””

””心理的安全性は、信頼だけでは十分ではない。単にチームのメンバーが心から互いのことを信頼するだけでなく、心理的安全性のあるチームはさらに一歩踏み込んで、互いへの尊重や、思いやりや、心づかいを見せている。それを実現するには、互いのことを弱点や欠点を持つ生身の人間だと認識する必要がある。実際、グーグルによるリサーチでは、心理的安全性を生むのに最も大きく貢献する要素は、 弱さを見せること、つまり自分の欠点を進んで周りに認めることだと判明した。しかも、それはトップから始めなければならない。レヴィ・キングは言う。「多くのリーダーは、『(弱さを見せたって) 安全ですよ』なんて言うが、自ら進んでそうしようとはしない。口だけのものにしてはダメなんだ。””

””しかし自己認識の道に真の意味での「終わり」がないという事実は、その旅を極めて魅力的なものにしてもいる。どれほどのインサイトを手にしても、つねにまだ先がある。それを誰より理解しているのが私たちのユニコーンだ。ユニコーンたちは自己認識を「自分のあり方」だと見なし、いつも高い優先順位を置いている。そしてユニコーンでない私たちは、どの程度の自己認識から始めようと、誰もが人生を通してインサイトを広め、深め続けることができる。  そのプロセスに取り組むなかで、驚くことや、ありがたみを感じることや、難題を投げかけてくる物事に出合うだろう。そして新たなインサイトを手にするたびに、「じゃあ次はどうする?」という問いがやってくる。本書の冒頭で、私は自己認識を「二一世紀のメタスキル」と呼んだ──自己認識とは、充実した人生にとって必要条件ではあるが、十分条件ではないということだ。””

直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN

2023年は、理性や論理ではない、感性や直感みたいなものに真剣に向き合う機会に恵まれました。本書は、そんなモードの時だからこそ、より一層に僕には刺さりました。

””冒頭のエピソードに戻るなら、例の友人に対して、僕がしたのは「2つの助言」だ。 ① いますぐ1冊のノートを買うこと(A6・無地のモレスキンノートがおすすめ) ② いますぐカレンダーに、毎朝 15 分、ノートを書くためだけの予定を入れること それから1カ月後、彼女の表情は目に見えて明るくなっていた。もともとスマートだったその友人の頭はいっそうクリアになり、職場では以前にも増して活躍しているという。 「手書き」「1カ月続ける」「人に見せない」などの注意事項は伝えたものの、僕がアドバイスしたのは、「余白をどうデザインするか」だけだ。肝心の「何を書くか」については、ほとんど何も伝えていない。それでも彼女は「直感と論理をつなぐ思考法」を自ら体得し、しだいに「自分モード」を取り戻していっ~””

20代~30代、何度か行き詰まった時に習慣化していたのですが、最近やれていなかったので、改めて再開して、とても良かったなあ、と感じています。あえて、朝一で、ノートに書きなぐってみる時間を創るようにしました。

””なぜ、日本では地位の低い「妄想」が、世界のエリートと言われる人たちのあいだでは、ここまで高く評価されているのだろうか? 端的に言えば、彼らは「本当に価値あるものは、妄想からしか生まれない」ということを経験的に知っているからである。だからこそ、彼らはむしろ、あえて現実からかけ離れたことを言おうと、つねに意識してさえいるようだった。 この点を理解するうえで欠かせないのが、MITのダニエル・キム教授が提唱した「創造的緊張(Creative Tension)」という概念だ。人がなんらかの創造性を発揮する際には、「妄想と現実とのギャップ」を認識することが欠かせない。個人が自らの関心に基づくビジョンを明確にして、さらに、そのビジョンと現状とのあいだにある距離(ギャップ) を正面から受け入れたときに初めて、そのギャップを埋めようとするモチベーションが個人のなかに生まれる。このような緊張状態が生まれない限り、人はクリエイティブなモードにはならないのである。 この考え方をさらに下支えしているのが、カーネギーメロン大学の行動経済学者ジョージ・ローウェンスタイン教授による理論だ。 彼によれば、人間の好奇心や情報への探究心が生まれるには、「情報ギャップ」を感じることが不可欠だ。つまり、まず探究する心があって、そこから情報の収集に向かうのではなく、「情報が欠けている」という認知があって初めて、「何かを知りたい」という好奇心が発動するというわけだ。 これに沿って考えれば、人は妄想を明確にすることで、初めて「情報ギャップ」を感じることができる。逆に、妄想を潜在的な状態に留めている限り、情報ギャップが生まれないので、前に進もうとする力も生まれないので~””

””思考のアプローチは大きく2つに大別できる。 1つは、すでに顕在化している課題に対して、それを解決していくような思考だ。これはイシュー・ドリブン(Issue-Driven) なアプローチと言えるだろう。 他方、ここで僕たちが問題にしているのは、まだ目には見えない理想状態を自発的に生み出し、そこと現状とのあいだにあるギャップから、思考の駆動力を得ていく方法である。これがビジョン・ドリブン(Vision-Driven) なアプローチである。 注意すべきなのは、イシュー・ドリブンとビジョン・ドリブンの対立軸は、「思考が創造的かどうか」という点にはないということだ。「現前する課題(イシュー)」か「内発的な妄想(ビジョン)」のうち、どちらを思考のスタート地点に置くのかの違いである。 したがって、デザイン思考は、それ自体は創造的なメソッドでありながらも、あくまでも問題解決のための方法論として開発されたものだという意味では、イシュー・ドリブンなアプローチの範疇に~””

””「好きなもの」の写真の素材のなかからピンとくるものを6〜 10 枚ほど集めて、机のうえに並べ直してみよう。それらはすべて、あなた自身のワクワクを呼び起こす何かを持っているはずだ。 次に、それらを貼り合わせてコラージュをつくっていく。A3サイズのスケッチブックを用意し、見開き2ページに貼ってみてもいいし、大きめのサイズのコルクボードにピンで留めてもいいだろう。これが偏愛コラージュだ。 それぞれの写真の下には「好きになった理由」「好きな要素」などを短いキーワードにして書いておく。ビジョン思考は、単なる右脳思考ではなく、イメージモードと言語モードを行き来することに主眼がある。この段階でも、簡単な単語レベルでかまわないので、「言葉」に落とし込む作業をやっておこう。 偏愛コラージュのポイントは、忘れかけていたものも含め、いまのあなたを形づくっている「好き・関心」を一覧化していることにある。 しかも、それをPCのフォルダの奥深くにしまい込むのではなく、空間を占める具体物にするからこそ意味がある。 コラージュをつくったら、自室の目立つところに貼り出してみよう。これは~””

23歳の時に創った人生100のリストは、どんどんアップデートされて、2023年は更にそれらを磨き上げることが出来た1年になりました。

””デザインの世界では「アフォーダンス」という言葉が注目されることがある。これは、アメリカの生態心理学者ジェームズ・ギブソンが提案した概念であり、「環境の側が人間や動物に意味を提示し、行動に影響を与えること」を意味する。たとえば、ガラスのコップは、「冷たい飲み物を注ぐ」という動作を人間に対してアフォード(提示)している。これと同様に、机の上に置かれたまっさらなノートは、「自分モードで書く」という行為を僕たちにアフォードしている、自分の生活環境のなかに「紙のノート」を取り入れることは、「ジャーナリングのためのアフォーダンス」をデザインすることにほかなら~””

””たとえば、「年末」は振り返りをするのに最高のタイミングだ。チームメンバーや友人と一緒に行う毎年の振り返りについては、次の記事の方法が参考になる。何を隠そう、この振り返りフォーマットは、同記事の執筆者であるICJ吉沢康弘氏と毎年の振り返りをするなかで、かつて僕が作成したものである。 ▼ 40 人のビジネスパーソンが絶賛した『1年の振り返り』完全マニュアル/未来を変えるプロジェクト [https://mirai.doda.jp/theme/looking-back-planning/procedure/] (10)Papert, Seymour. (1980). Mindstorms: Children, Computers, and Powerful Ideas, Basic ””

””ここでおすすめしたいのが、ビジョンを磨き上げていく仲間(ビジョンメイト) をつくることだ。仲のいい友人、話の合うビジネスパートナーなど、少人数で本書のエクササイズを一緒にやってみてほしい。そしてフィードバックの際には、 ① それが何に見えるか、 ② どんな可能性を感じたか、 ③ さらに一歩、具体化するためにできるアイデアを、一緒に話し合ってみるといいだろう””

ビジョンを一緒に磨き上げる仲間は、とても有り難いものですね。

””違和感に正直になる—— 分解のステップ ② テーマに関して「常識」を書き出したら、次に来るのは「違和感のある常識」をピックアップするステップだ。ここで重要なのは、やや無理をしてでも、「ここっておかしいんじゃないか?」「いったい、どうしてこうなんだ?」という引っかかりを探ることである。 世界的に有名な起業家やイノベーターというのは、かなりの確率で「ワガママ」な性格を持っている。また、テレビに出ているお笑い芸人は、何気ない日常のなかに「ツッコミどころ」を見出すことで、爆笑を誘うエピソードトークをつくり上げている。 一流のクリエイターたちと肩を並べる必要はないが、少し「意地悪」な人格を自分のなかにつくりあげて、「常識」に隠れている「ツッコミどころ」を探すことを意識してみよう。日常ではスルーしてしまう「あたりまえ」の前で立ち止まり、「本当にそうかな?」「そもそもこれって……」と考えてみる。それが見つかったら、「自分はどういうところに違和感を抱いたのか?」「何がそんなに引っかかっているのか?」「どうすると違和感がなくなりそうか?」についても振り返ってみよう””

””重要なのは、与えられた時間のなかで、どれだけ「具体化→フィードバック→具体化」を繰り返せるかである。このような反復は「イタレーション(Iteration)」と呼ばれている。メディアアーティストや起業家としても活躍する筑波大学准教授の落合陽一氏もよく使う言葉だが、「イタレーション」はつくり手にとっての基本動作のようなものだ。 これに対して、一般的な開発のほうに注目すると、具体化のプロセスは最後に来ているうえ、そもそも、そこにはあまり時間が割かれていない。むしろ、その手前の調査・分析や議論、企画というLモードにリソースが偏っていることが~””

””では、実際に僕たちが「表現(プロトタイピング)」を行う際には、どんなことに気をつければいいのだろうか? どんな「余白(キャンバス)」を用意し、どんな障害を取り除けば、僕たちは表現することへと踏み切れるのだろうか? ここでも気をつけることは3つある。 ① 表現の「動機づけ」をする ② 表現を「シンプル」にする ③ 表現に「共感の仕掛け」をつくる 以降ではそれぞれを1つずつ検討していくことにしよ~””

””表現においては、「他人に影響を与えること」を最終目標にするべきだ。いくら魅力的な「妄想」を表現したところで、聞き手が「ほう、それは面白いね!」で終わったら、まだまだ改善の余地はあるということだ。プロトタイプを見せられた側が、思わず身を乗り出して、「私にも手伝わせてくれませんか?」と言い出すレベルを目指したほうがいい。 ””

正負の法則 一瞬で人生の答えが見つかるドクター・ジョン・F・ディマティーニ

本書は、精神性、霊性、スピリチュアルな要素を取り入れつつも、左脳的な理論や科学的な説明、量子物理学の視点などから、僕たちの日常に深く根ざした「バランス」という概念に焦点を当て、それをどのように理解し、活用するかを探求させてくれる類のもの。

好き嫌いが分かれそうな書籍ではありますが、2023年後半の自分にとっては、素直に受け入れやすい表現が多かったです。(逆に言えば、人生のタイミング次第では、受け入れ難い表現も多かったです、20代中盤~30代中盤くらいの期間は、この手の自己啓発×スピリチュアル的な書籍は嫌いでした)

ディマティーニ氏は、感情の高ぶりを抑え、心のバランスを保つことの重要性を強調しています。特に興味深いのは、彼の量子物理学と心理学の組み合わせで、スピリチュアルな要素を論理的、そして実践的な視点で捉える方法を提示しています。

ビジネスマンとしての理性優位に過ごすことが多い自分としては、日々の決断において、極端に理性的感情的に反応するではなく、よりバランスの取れたアプローチを取ることに向き合わされました。特に、困難な状況に直面した時に、冷静に状況を分析し、中立的にあるべき(というか究極的には中立的でしかありえない)ということを学びました。

「正」と「負」の要素、たとえば、幸せと悲しみ、喜びと苦痛、支援と試練など、全ての対極がバランスを保って存在している、と。ポジティブな考え方に偏ることや、悲しみの伴わない幸せや幸せの伴わない悲しみが存在しない、と。

本書を通じて、人生のバランスの重要性を再認識しました。改めて、何事も、極端に偏ることなく物事を受け入れ、常にバランスを保つことを心がけ、自分自身、そしてチームの成長と幸福を追求していきます。

””私たちは誰でも二面性の中で生きています。一人一人が相反する側面を持っています。精神を高揚させる面と落ち込ませる面です。人間は自分自身を称賛したり批判したりします。あなた以上にあなたを褒めたりけなしたりする人はいません。誰も自分自身について考えるほど熱心に長時間他の人のことを考えてはいないからです。誰かが自分に向かって何らかの反応を示す時それは単に自分自身の抑圧された一部がその人に反映しているだけです。誰も私たちを不当に扱ったりしていないのです周囲の人は自分自身を映し出しているのです。””

””あなたが自分自身の人生の指揮者になりたいと思うなら自分の考え方や感情を安定させる必要があります。安定とは無関心になったり無感動になったりすることではありません。感情的に過度に高ぶったりせず心が落ち着いてバランスが取れている状態のことです。心は精神が目覚めてバランスを取っている時にだけ開くことができます。一方感情に支配されてバランスを失うと心は閉ざされてしまいます。愛は2つの要素で成り立っています。支援と試練です。誰かを支援すると弱くて依存心のある人間にしてしまう可能性があります。一方誰かに試練を与えるとそれによってその人を強くて自立した人間にする可能性があります。私たちは人に対して思いやりのない集中したと感じると自責の念に駆られますがそれはバランスに気がついていないからです。””

””苦痛を伴わない快楽、非難を伴わない賞賛、意地悪さを伴わない親切を追い求めることは人が陥る幻想の中でも最大の幻想の一つです。二面性のあるこの宇宙で偏った幻でしかないものを期待すると人が苦しみと呼ぶものが生まれます。バランスを受け入れる時、真実の愛があなたを取り巻きます。真実の愛を避けることはできません。逃げることは不可能です。他に行く場所はないのです。このことを理解すると、恐れや罪悪感が消えてあなたは自分の人生とダンスを踊れるようになるのです。””

””対極にある素粒子の間にある中心点が光です。対極にある感情の間にある中心点が愛です。全ての人間はすでに中心点にいますがその感覚をはっきりと捉えるのが難しいので、さらに中心点を求め続けます。私たちの究極の目的は真実の愛です。何か他のもの物質的ではない物質的で儚いものを求めていると思うことがあるかもしれませんが、一時的な目標を追い求めていてさえ、私たちは愛という真実に引き戻されます。あらゆる人間関係の目的は、視界を遮る障害物を取り払って、すでに存在している愛に気づき、究極的には愛である私たちの本質を表現することです。あなたがこれまでに出会ってきた人は皆、時と場合によって親切だったり、意地が悪かったり、支援を与えてくれたり、試練を課してきたり、快楽の種だったり、苦痛の種だったり、魅力的だったり、不快だったりしたはずです。人間関係の目的は幸福ではありません。喜びと悲しみの組み合わせが真の充足をもたらします。喜びを期待するのは半分だけ満たされる状態を求めているということで、悲しみを避けようとするのは別の半分だけを空洞にする状態になるということです。私たちが喜びと悲しみの双方の進化を認めた時初めて、完全な充足感を得ることができるのです。””

””悲しみが意味するのはあなたが憤りを感じており、まだ愛せていない自分自身の一部を目の前に突きつけられているということです。怒りを感じるのは偏った見方をしているからに他なりません。あなたの人生に関わってくる人々はその点に注目させるための反面教師です。あなたを一番怒らせる人たちこそが一番素晴らしい反面教師なのです。あなたが偏った見方をやめてバランスを取り戻すと反面が湧いてきますが、バランスを取り戻せなければ自分を怒らせる人たちを非難し続けることになるのです。自分が見ないようにして愛してこなかった部分に気づかせてくれ、愛する機会を与えてくれたことを他者に感謝するのが知恵です。知恵によって成長するとあなたは他者をありのままで受け入れて愛することを学びます。また他者が与えてくれる恩恵を見いだせるようになります。””

””価値観は空虚感のようなかけている何かがあるという感覚に基づいています。しかし質量保存の法則によれば欠けたり失われたりするものは何もないので、ただその存在する形に気づいていないだけです。あなたはそれが欠けていると思い込んでいるので、それを求めているのです。手に入れる過程を後押ししてくれるなら良いものだと考え、その邪魔をするなら何でも悪いものということになるのです。””

””人生の質は自分に投げかける質問の質で決まります。ですから今日しなくてはならないことは何だろう?とか、何が必要なんだろう?と考えるのはやめましょう。今日心から大好きで喜んでしたいことは何だろう?、人生で心から大好きで喜んでしたいことは何だろう?と問いかけましょう。異なる問いかけをすれば、異なる人生が待っています。自分にどう問いかけるかで現実をどう創造するかが決まるのです””

理念経営2.0 ―― 会社の「理想と戦略」をつなぐ7つのステップ

ちょうど、理念刷新を進めている真っ只中に出会えた書籍。

本書は、理念(ビジョン、ミッション、バリュー、ナラティブ、ヒストリー、カルチャーなど)とは、経営者の声明以上のものであるべきであり、会社の暗黙の信念を反映するストーリーテリングの源泉であるべきで、意思決定の指針となり、従業員を鼓舞する力となるべきだと説明する。

また本書は、「哲学的研究開発」という概念も探求している。これは、従業員が会社の目的と価値観について話し合い、疑問を投げかけるための空間を作ることを意味し、共有された感覚を発展させることができる。哲学的研究開発の目的は、従業員が自分たちのアイデンティティを再確認することであり、会社の目的と価値観に基づいた共通の問題を共有することで、従業員が自分たち自身を見出すことができるということである。

経営者が考えるべき重要なポイントは、会社の目的、価値観、ビジョンに基づいて、共通の物語を作り出すことである。著者は、従業員が自分たち自身のアイデンティティを再確認するために組織に属することが重要であると指摘しており、会社の目的と価値観に基づいた共通の問題を共有することで、従業員が自分たち自身を見出すことができると説明している。

本書は、従業員の共通の問題を共有することが、会社にとって非常に重要であることを示している。会社は、暗黙の信念に基づいたストーリーテリングを通じて、従業員を鼓舞することができ、その結果、成功を収めることができる。起業家、経営者、リーダーにとって、本書で提唱される理念経営のステップを参考にし、自社のビジネスに適用することで、企業の成長にアクセルをかけられる素晴らしい作品でありました。

””これからの企業理念は、「社長の誓い」ではなく、「みんなの物語」の源泉としての性格を持つようになる。そんな理念をつくるには、組織のなかに暗黙裡に存在する思想を掘り起こし、言語化していくことが必要となる。 つまり、理念経営の常識そのものが大きく変わりつつあるのだ。 ここで、「社長の誓い」としての企業理念を植えつけていく経営スタイルが 理念経営1・0 であるとすれば、あくまでも「みんなの価値創造の物語を生むためのソース」として企業理念を位置づけていくあり方は 理念経営2・0 と呼ぶことができるだろう。 こういう話をすると、日本でもヒットした『ティール組織』を連想する人もいるかもしれない。同書の著者であるフレデリック・ラルーは、社員一人ひとりが自律的に働きながら全体として進化していく、生き物のような新しい組織の形を提唱している。 そのなかでもとくに大事な考え方が「進化する目的」という考え方だ。ここでは、組織の理念は、つねにその組織のメンバーによって探究され、アップデートされていくものだととらえられている。大義の旗を掲げたとしても、それはあくまで「現時点でのもの」であり、実際に組織を運営していく過程でどんどんアップデートするほうがいいという考え方~””

””重要なのは、 社員それぞれが自分たちの理念について、つねに自問自答し語り合う場を持つこと だ。「自分たちはなんのために存在するのか?」「自分たちのミッションはなんなのか?」という問いは、個人に置き換えてみると、「自分はなんのために生きているのか?」「自分が人生で達成すべき役割とはなんだろう?」という自分探しの問いだ。 このような問いは、直接的には会社の売上・利益につながらないので、無駄な行為に思えるかもしれない。しかし、自分たちの理念について話し合う場というのは、いわば「企業の思想版R&D」のようなものだ。こうした語り合いが蓄積されていくことで、一人ひとりのなかに、そして組織のなかに思想の根が広がっていき、事業そのものが堅固になっていくので~””

””ポジティブ心理学の研究者フレッド・ルーサンスらの著書『こころの資本——心理的資本とその展開』によると、不確実な環境において幸せに生きられる人は、希望(Hope)、自己効力感(Efficacy)、レジリエンス(Resilience)、楽観性(Optimism) という4つの心理的資本を持つとされる””

””ビジョン構想に関わることで、参加した人は「希望」を強化する要素としてあげられている「胸を躍らせるような未来の目標」を考えることになる。また、ビジョンを構想したことがある人は、自然に楽観性が高まるとも言われている。あらかじめ未来像をシュミレーションすることで、先が見えない世の中に対して楽観的に向き合うための「心の資本」が育つわけ~””

””また、長期的なビジョンを明確化して伝え、共感してもらうことで、社員に希望を与えることができる。希望に満ちた組織は、メンバーの目標達成を促進するための機会を探し求め、創出することに積極的になるという。 先が見えない世の中で、自分たちの方向性を示すのがビジョンだ。ビジョンを仲間と策定すると、方向性を共有できるだけではなく、より豊かな心理的資本を持ったチームをつくることができるのだ。 形式化した中期経営計画から、~””

””「経済的利益と社会的意義、もし迷ったら社会的意義を優先しよう」 ミッション至上主義になってしまうと、自分たちのやることに制限がかかりすぎてしまうし、経済性を過度に低く見てしまうことにもなりやすい。「経済性も社会的意義も両方大事だ。ただ、もし迷ったら社会的意義を優先しようぜ」くらいのゆるさを持って運用することが効果的だと~””

””「企業の発達段階に合わせてつくるパーパス」 ここまで、企業のミッションとパーパスをほぼ同じものとして扱ってきた。実際、その用語法にはそこまで大きな意味はないと思うが、いまの時代にパーパスを策定することの意義についても少し触れておきたい。パーパスとは、社会のなかで果たしたい役割を定義することにほかならない。 一般的にパーパスは、存在意義や志などの訳で語られることが多いが、僕は社会的存在目的という訳がいちばんしっくりくると思っている。つまり、「あなたの組織はいったいなぜ、この社会に存在するのか?」という問いに対する答えだ。これだけだと少し抽象的なので、具体的な問いで考えてみよう。
・なにが達成できたら、自分たちは社会からいなくなってもいいのだろうか?
・逆に、自分たちがいなくなったら、社会はなにを失うだろうか?
こうした問いに対する答えが、パーパスだ。成熟期を迎えた大人が自分の残りの人生の時間軸を意識し、自分の実存がどこにあるかを自問するのに似て~””

””しかし、 すべての企業が社会善を語るのは誠実なことなのだろうかと疑問を感じることがある。「そのほうが社員も関係者も巻き込める」という戦術的なあざとさが見え隠れするようにも思う。というのは、人間の発達段階のように、個々の企業にはパーパスを持つにふさわしい段階があると思うからだ。 ある急成長している小売業の会社の経営者に、「あなたの会社の社会的な存在意義とはなんだと思いますか?」と質問したことがある。例の「 10 年後に売上規模2兆円」を目指しているという企業だ。 するとその経営者はこう答えた。 「いまの売上規模だとまだ社会における必要不可欠な存在にはなれていないと思います。その段階で、いまの自分たちの社会における意義なんて、大それたことは考えられません。2兆円規模の売上のある存在、つまりコンビニチェーンくらいの存在になって初めて、社会的な存在意義を考えられるようになるのではないでしょうか?」 非常に誠実な姿勢で、僕は感銘を受けた。成長期のメンタリティを持った企業は、まずは社会的意義を考えられるようになるまで、成長し続ければいいの~””

””ただ、確実に言えることがあります。理念経営1・0が創業者や組織の「答え=正解」を示すものだったのだとすれば、理念経営2・0の核心は「問い」にあるということです。 ですから、ミッション、ビジョン、バリュー、パーパスなどの企業理念がすぐれたものであるかどうかは、それが会社のすべてのステークホルダー、とりわけ社員に対する「問い」として機能するかどうかにかかっています。 もしそこから、働く人たちの主体的な語りや探究が生み出されているなら、その企業理念はまちがいなく会社の経営資源になってくれています。これからの経営者に求められているのは、そうした「みんなの物語」が生まれてくるための「問う仕組み」をデザインすることなの~””

【振り返り】2023年第1Q振り返り+本ベスト5

月並みですが、あっという間に2023年も第1クオーター終了。2023年度スタートしました。一般的に、歳を重ねるごと、時間が早く感じ易くなるとのことですが、未知の経験をすると、その限りでもないとのこと。(※4月初めに書き始め結局投稿は4月後半に。)

何でもかんでも未知の体験をすれば幸せかというと、そういうわけでもないとは思いますが、油断すると、コンフォートゾーンから脱しにくくなる、お年頃でもありますので、40代、暫くの間、個人の人生にメリハリを付けやすい環境を作ろうと、年次で行っていた振り返りを、四半期ごとにやってみようと決意しました。

2023年、通年のテーマは、『ボンバイエ!』、その心は、「元氣溌剌、恥をかくほど馬鹿になって、道を創っていく」でありました。「ボンバイエ」とは、コンゴのリンガラ語で「奴をやっちまえ!」という意味合いらしく、自分的解釈として「上っ面の恐れ≒奴」を退治して、恥ずかしげもなく夢みたいな大言壮語を掲げ、チャレンジを続けていく、そういう1年としたいと考えました。

さて、この四半期を振り返ってみると、ボンバイエ!を掲げたおかげもあって、久方ぶり(コロナ前ぶり)に、トライアスロンと、トレイルランの大会に、ポチリしたのが、大きかったですね。長い間、チャレンジしていなかったから、色々な言い訳が脳裏浮かんできて、別に今じゃなくて良いや、って思っていたのですが、いざポチってしまうと、やっぱり、ちゃんと体を動かし始めるんですよね。結果的に、普段のパフォーマンスも上がってくる。まさに、元気溌溂な時間が増えてきたと思います。

自分の理想イメージ、強いWant toの源泉に触れていると、そのエネルギーに、そのコミットメントに、必然的にも、偶発的にも、自分が引っ張られていく感覚。まるで、鉄車が、グルングルンと回り出しているような。

加えて、フィジカル面だけでなく、2023年、早々に、素晴らしい決断だったなと、良い意味でドキドキ、ワクワク、ヒリヒリしているのが、「AIを経営に活かす」という決断。

にわかに学習したところで、あまりに門外漢で、専門家の方々に失礼というか、そんなに甘いわけないよな、というよく分からないセルフトークが、自分の中に存在していたんですね。そういう自己弁護的な、自己免責的な部分に、しっかり向き合うことが出来て、今や、どんなにダサくても良いから、AIのプロフェッショナルと自他ともに認知できるところまで学び使い倒そうと行動し始めています。

せっかく戦士として30~40レベルくらいまで経験値積んで、そこそこの敵を難なく倒せるようになってきた、というタイミングで、レベル1からやり直し魔法使いとして、自分のキャリアをやり直そう、と決意したくらいの意気込みです(実際には、ドラゴンクエストと違って、戦士の能力が減るわけではない、この世界や、この立場で、挑戦しない理由がなさそうなもので、大げさではありますけれど)

まあ、そんなこんなのゲシュタルトが自分の中に存在しているおかげで、常日頃のアンテナの張り方、言動や行動が、まるで違うんですよね。早速、年始早々に、こんな情報を発見し、即ポチリ。面白いもので、アンテナに引っかかって来るくる。もう大ラッキーでした。日本最先端AI研究室、東大の松尾研が運営している、AI経営寄付講座に申し込み、先日、受講修了。

そしてそして、更に、トンデモなく幸運なことに、ChatGPT4が登場、Generative AIを使ったサービスが、とてつもないスピードで世の中に溢れ出てきている、このタイミング。あの松尾豊先生も、こんなタイミングで、この講座をライブで出来ていることは極めて貴重な機会というようなことを仰っておられる。更に、いわゆるAI専門家中の専門家でさえ、これから、世の中が、どうなるかは、はっきり言って分からない、とまで断言されておられる。そんな革命的な激流の中に、恐れることなく、躊躇うことなく、飛び込み悪あがきしてみたいと、好奇心が激しく湧き上がります。

ああ、この感覚こそ、元気溌溂だなあ、と。

もう毎日が、ボンバイエ!だなあ、と。

あれやりたい、これやりたい、という欲求が溢れ出てきて、その欲求によって行動して、未知の情報と出会って、またその出会いによって欲求が溢れ出てくる。こんなに愉しいことはないですよね。

ただ学び満足するではなく、成し遂げたいことが、理想イメージが、学び動きながら、そのイメージが、どんどん立体的になっていく。

実は、無邪気に没頭している傍らで、ふと冷静になってしまう時もあります。もっと「なすべきこと」のみにフォーカスした方が良いんじゃないかと、考えることもあるんですね。

しかし、そういうバイアスに囚われることなく、小さくまとまることのないように、やりたいことと、すべきことを、しっかり擦り付けていこうと。とことん馬鹿になって、恥をかいてかいて、心を裸にして本当の自分と出会って、本当の自分も笑ってしまうくらいに馬鹿になってみる。それでも、この道を行けば、この道であれば、怖がる必要はない、危ぶむ必要はない、踏み出せばその一足が道となり、その一足が道となる。ああ、ボンバイエですね。

さあ、2023年新年度、4,5,6月も、色々な思い出を創っていきます。

愉しみ!ボンバイエ

雲井俊太郎

以下、恒例の年次ごと本ベスト10を、四半期ベスト5として紹介してみます。引き続き、色々な本たちと出会っていきます。

5位:戦略を、実行できる組織、できない組織。~組織の存続のために必要な「最重要目標にフォーカスする」~

最重要目標にフォーカスすることで、チームのエネルギーを最も重要な目標に集中させることができる。やることを増やせば増やすほど成果は上がらない。頭の切れるリーダーであっても、良いアイデアがあれば手を出したくなるものである。しかし、良いアイデアはいつでもたくさんあるため、最初に最重要目標を絞り込むことが必要である。フォーカスは自然の原理であり、一本一本の太陽光線に火を起こすエネルギーはない。しかし虫眼鏡で一点に集めれば、ものの数秒で紙を燃やしてしまう。同様に、チームのエネルギーを最も重要な目標にフォーカスさせることで、達成することができる。

4位:ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣~幸福は追求できないものであり、結果として起こるのみだ、と語っ た。願望は追究できる。そして、喜びが行動の結果として起こる。~

””幸福とは要するに、願望がない状態である。 きっかけを見ても、自分の状態を変えたいと思わないなら、今の状態に満足しているということだ。幸福とは喜び(楽しみや満足)の達成ではなく、願望がないことである。それは、ちがうふうに感じたいという衝動がまったくないときに訪れる。幸福とは、自分の状況をもう変えたくないときに感じる状態のことだ。 でも、幸福はいつしか消え去る。新しい願望がつねに現れるからだ。キャド・バドリスが言うように「幸福とは、ひとつの願望が満たされたときから、新しい願望が生まれるまでの期間である」。同じように、苦しみとは、状況を変えたいと望むときから、それを得るまでの期間だ。 わたしたちが追い求めているのは喜びという 考え である。 わたしたちは心のなかで作り出した喜びのイメージを求めている。行動するときは、そのイメージを得たらどうなるのかわからない(満足できるのかさえわからない)。満足感はあとからやってくる。オーストリアの神経科医ビクトール・フランクルはこれについて、幸福は追求できないものであり、結果として起こるのみだ、と語っ た。願望は追究できる。そして、喜びが行動の結果として起こる。””

3位:THE HEART OF BUSINESS(ハート・オブ・ビジネス)――「人とパーパス」を本気で大切にする新時代のリーダーシップ

仕事とは「人間らしく生きるのに欠かせないもの」「自分の生きる意味を探すための鍵」「人生に充実感を見いだす手段」だと考えることが大切。人生とは快楽や権力を追い求める旅ではなく、意味の探求だということも重要。人間が意味を見つけられる場所は仕事、愛、勇気のなかにあるとされている。仕事を通して意味のあることを為すという行為には、他者への思いやりや逆境を乗り越えることなども含まれている。

2位:『CURIOUS: THE DESIRE TO KNOW AND WHY YOUR FUTURE DEPENDS ON IT~あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力~』

””好奇心を維持できる人が成果を手にする時代 現在、労働市場は世界的に拡大し、かつては人間にしかできなかった仕事を高度な機械がこなすようになっており、仕事の獲得競争は熾烈さを増している。一方では、インターネットはかつて教育を受けられなかった人々にまで学習の機会を広げている。これはつまり、好奇心旺盛な人々はその報酬を受け、そうでない人々はその罰を受ける傾向が強まることを意味する。好奇心こそが新しいことを学ぶ最大の原動力だから~””

1位:『THE ART OF FINDING DESIRE: MONEY, LOVE, AND CAREER BY LUKE BURGESS~欲望の見つけ方~』

””濃い欲望とは、表面からは見えない奥深く、地球の中心に近いところでつくられるダイヤモンドのようなものだ。それは人生において変化しつづける環境に影響されない。一方、薄い欲望はきわめて模倣的で伝染しやすく、たいてい底が浅い。 欲望は年齢を重ねるにつれて濃くなっていくと言えればいいが、必ずしもそうとはかぎらない。少なくとも意図的に努力しなければそうはならない。自分の欲望が薄いことに気づくのが遅すぎたという高齢者はめずらしくない。たとえば、何十年も引退を楽しみにしてきて、いざ引退してみたら満たされなかったという人だ。引退したいという望み(ちなみに第二次世界大戦前は一般的ではなかった)は薄い欲望であり、理想的な状況のなかでこれをしたい、これはしたくないという模倣的に得た考えでいっぱいだからだ。一方で、家族と過ごす時間を増やしたいというのは濃い欲望だ。そう言えるのは、今日から欲望を満たすことができ、引退するまでそれを続けられるからだ。それは長い年月をかけて複利のように成長する。””

P.S.

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