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Dark Horse 「好きなことだけで生きる人」が成功する時代

2021年、学校卒業前後に読んだ書籍。Want toまみれで生きる人生を、コーチとして引き出していく訓練を積んでいたとき、自分自身の好きなこと、Want toまみれな状態とは、どういう状態なのだろうか、と問い続けていたときに出会いました。

ダークホースという名前が、日本人にとっては、しっくり来ない気もしますが、内容そのものは、とても腹落ちするものでした。現代は、標準化の時代から個別化の時代になった。そんな時代の中で、個性を活かし予想外の活躍をする人のことをダークホースと呼び、ダークホースという存在は、充足感を追い求めたあとから成功がついてくる傾向にあるという。


確かに、これだけ情報が溢れ、マスメディアではなくSNSなど情報が細分化され、主体的に生きようと思えば、いくらでも主体的に生きることが出来る環境の中で、自分が心から納得できる、充足感に満ち溢れたことに没頭し、いつの間にか、とてつもない成果を創り上げているということは、多いにありそうなものだと思います。

以下、引用。


””おそらく、私たちが研究者になれたのは、単なる強運によるのだろうが、ひとつだけ確かなこととして言えるのは、「なんらかの成功を私たちが手中に収めたとしたら、それはすべて、既存のゲームのルールを破ったからに他ならない」 ということだ。反抗心や思い上がりからではなく、あくまでも 仕方がなかったから だった。ルールに従おうと何度も試みたのに、ことごとく失敗に終わったのだから。 ””

””さらに深く掘り下げるにつれ、ダークホースたちの充足感が偶然ではないことが明らかになった。それは彼らの選択だったのだ。この「充足感の追求(the pursuit of fulfillment)」という、何よりも大切な決断こそが、ダークホースを究極的に定義づけるもの なのだ。 ””

””充足感をもたらす環境は、人それぞれに異なる。一個人の興味・関心・必要性・欲求はそれぞれに異なるからだ。ダークホースたちは「何かに成功すること」で充足感を得たのではなく、「自分自身にとってかけがえのないことに熱心に取り組むこと」で充足感を得た のだ。 ””

”” 充足感と成功を獲得するための重要な鍵は、「自分の興味や関心、能力に合わせて環境を選ぶ権利をもっていることに気づく」 ということ。この発想は次のように言い表せるだろう。 「個性を生かして、充足感と成功を目指せ」 ””



””ダークホースたちは、それぞれの個性を生かして充足感を得ようとする。その充足感が、成功を得るうえで最適な条件をつくり出すというのだ。これを効果的におこなうためには、可能な限り徹底的に自己分析をする覚悟が必要だ。自分の興味と欲求を把握することによってのみ、本来の自分自身に最適な機会を見極め、それを受け入れることができる。 ””


””自分のモチベーションの本質を理解することが、充足感を得るために不可欠である。 あなた独自のやる気を発揮することによってのみ、あなたは本来の自分の存在意義も、自己としての完全性も実感できるからだ。ダークホース的な考え方から引き出される主要な課題は、個性を生かすことであり、この課題遂行が始まるのは、「自分を本当にやる気にさせるもの」 を見定めようとあなたが決めた瞬間だ。 ””



””充足感は、成長と発達と自己改善によって常に育まれなければならない動的な体験である。あなたが向上しようと努力することを止める瞬間は、充足感が弱まり始める瞬間なのだ。あなたの行く道に行き止まりはない。自分自身を封じ込め、本当の自分をさらに実感できる機会を逃した途端、あなたは安定と心地良さよりもっと重大なものを危険にさらすことになる。  その重大なものとは、あなたの目的意識である。””



””ダークホースたちは「目的地」を無視する。しかし「目標」は無視しない。 ダークホース的な考え方では、この二つに明確な違いがある。   目標は、常に個性から出現する。さらに厳密に言うと、能動的な選択から生まれるものだ。””

””つまり、あなたのファジーな強みにフィットする戦略を探すのは、〝上達〟を目指して登ろうとする山の、最も険しい急斜面を探す ということである。  自分の個性に適した戦略を選べば、あなたはあっという間に急斜面を登ることができる。自分に合わない戦略を選んだら、ゆっくりと時間をかけて登るか、あるいは、少しも上に進めなくなってしまうだろう。””



””オックスフォード英語大辞典は、「充足感」をこう定義している。「潜在能力を充分に伸ばした結果として得られる満足感や幸福」──悪くない定義である。だがもちろん、どのようにして得られるかには言及していない。  どのようにすれば、あなたの潜在能力を充分伸ばし、満足感と幸福感を得られるのだろう?””



””なぜ組織は、そこに所属する個人に選択権を譲り渡したくなるのだろうか? 「平等なフィット」を提供する組織は、個別化の時代では繁栄するからだ。これは机上の空論ではない。今この瞬間にも、あなたが民主的な能力主義のもとで全生涯を送ることは可能だ。その方法は、現在の誕生まもない「平等なフィット」を提示する健全な組織に参加することである。””

””ある個人による充足感の追求は、必ずその隣人たちに利益をもたらし、その一方で、隣人の充足感を増加させるその行為が、その当人にさらなる充足感を実感させる ことになる。  スコットランドの哲学者ヘンリー・ホーム=ケームズ卿が、最初にこの概念の初期形態を表現した人物かもしれない。彼はこう書いている。 「人間には善意の原理があり、それが人間を社会全体の平等な幸福の追求へと駆り立てる。””


                ””組織にすべての個人の充足感追求を保障するよう義務づけ、同時に、市民に不可欠の義務として充足感を義務づける社会は、あらゆる場合において、才能開花と充足感のポジティブサム・ゲームを実施することになるだろう。――ひとつの決定的な前提が成り立つならば。すなわち、 個人的な充足感を達成した人は誰でも、その人を支えた社会に対して恩返しがしたいと自然に思うようになる、という前提である””


あなたが世界のためにできる たったひとつのこと 〈効果的な利他主義〉のすすめ

2021年後半に読んだ本。福祉という事業に関わっていると、大抵の場合、利他的なスタンスを期待される。とてもペインが深い人達を対象にしていることから、実際に、献身的な態度で、支援や指導に臨むことが求められることもあるし、人のために、という想いで会社にジョインしてくれる仲間も多い。

ただし、僕たちは、民間企業として、事業の成長にもコミットしています。つまり、事業としての成長と、社会貢献を両立させるべく、日々試行錯誤をしている中、利他性というスタンスについては、慎重に向き合わざるを得ないと常々考えて来ました。そんな中、本書は、100%同意とまでは言いにくいものの、1つのスタンス、スタイルとして、とても考えさせられるものでありました。

” ”効果的な利他主義は倫理的な行為の進化形ですし、合理的に考える能力の実践形でもあります。私はこれを「新しい」ムーブメントとして描いてきましたが、新しいということは、引き続き大きく拡がっていくことを意味しています。もしこれが拡がって、クリティカルマスに達したら、〈自分にできるいちばんたくさんのいいこと〉を人生の大切な目標にしても奇妙だとは思われなくなるでしょう。” ”

もしかしたら、僕が感じ、受け止めているような感覚とは異なり、今の一部の若い世代の人たちにとっては、効果的な利他主義的なスタンスが、すでに当たり前のものになりつつあるのかもしれません。引き続き、効果的な利他主義という概念と向き合っていこうと思います。

以下、引用。

” ”利他主義は、 利己主義、つまり自分の利益だけにとらわれる考え方と対比されますが、私たちは、「効果的な利他主義」が利己心と対極にある自己犠牲を必ず伴うものだとは考えません。自分以外の人のためにできる限り〈たくさんのいいこと〉を行って自分が花開くとしたら、それはすべての人にとっての〈いいこと〉になるはずです。” ”

” ”効果的な利他主義者は、平等自体に価値を見出すというより、それがもたらす結果に価値があると思っています。貧しい人がより貧しくならないのであれば、富める人がより豊かになっても、それが全体に悪い結果をもたらすとは言い切れません。そうなれば、富める人が、より貧しい人を助けられるようになるからです。ビル・ゲイツやウォレン・バフェットといった世界の長者番付トップが行ったのはまさにそれで、寄付額で言えば彼らは人類史上最大の効果的な利他主義者です。” ”

” ”ここまでのところで、効果的な利他主義者の輪郭がだいたい見えてきたかと思います。彼らは要するに、他者を気にかけ、そのために自分の人生を大きく変えることをいとわない人たちです。寄付者の情けに訴えるチャリティではなく、費用対効果の高い方法で命を救い苦痛を減らすことを証明できるチャリティに寄付を行うのが、効果的な利他主義者です。自分に使うお金を削ったり、与えるために稼ぐことができるようなキャリアを選んだり、それ以外の方法で〈もっとたくさんのいいこと〉を行おうとするのも彼らの特徴です。中には、血液や幹細胞や骨髄や腎臓までも、見知らぬ人に提供する人もいます。” ”

” ”効果的な利他主義者に特徴的なのは、特定の人を助けることよりも、自分が助けることのできる人の数について語りたがる点です。彼らの数字への興味は、その寄付行動に表れています。彼らが寄付を向けるのは、いちばん大きな効果があると信じるに足るような組織です。そうすれば、効率の悪い組織に寄付するよりも、同じ金額でより多くの人を助けることが可能だからです、” ”

” ”誤解を招くと困るのですが、私は効果的な利他主義者が冷たく合理的で計算高い機械のような人たちだと言っているのではありません。〈ギブウェル〉の共同創始者、ホールデン・カーノフスキーはブログに、効果的な利他主義者は情熱を抑えてできる限り合理的に行動する人たちのように誤解されている、と書いています。そうじゃない、と彼は言います。むしろ「僕らは、効果的な利他主義に 燃えてるんだ。” ”

” ”まず、合理的な人間の概念から始めます。合理的な人間とは、世界について、なにが自分の利益になるかについて、また自分がすべきことについて、合理的な考えを自らに課している人だと言います[ 16]。合理的な人間は、合理的な批判の余地のないエビデンスや価値観に従った考え方を大切にします。” ”

” ”本当に大切なのは、他者の利益を考えているかどうかです。〈いちばんたくさんのいいこと〉につながる行動を望むなら、その行動が犠牲を伴うか、つまりその人の幸福度が下がるかどうかに目を向けるべきではありません。むしろ、自分を幸せにする行動が、他者を幸せにするかどうかに目を向けるべきでしょう。” ”

チームが自然に生まれ変わる 「らしさ」を極めるリーダーシップ

2021年、久々に通った学校、Mindset Coaching Schoolの校長先生の書籍。

Mindset Coaching School での学びは、本当に素晴らしいものでした。過去、Courseraで、イリノイ大学のデジタルマーケティングや、ペンシルバニア大学のゲーミフィケーションのクラスを受講した経験もあるのですが、比べ物にならないほど、濃密かつ満足度の高いオンラインクラス(学校)でした。教育DXって、こういうことだなあ、という点においても、良き体験となりました。

・完全オンライン学習でプロコーチとしてデビューが出来る

・80人ほどの同期が日本全国&海外から参加(心強い仲間となる)

・さらに100名ほどの先輩たちが、真摯に支援してくれて、これまた胸熱すぎる環境・コーチングの理論と技術が、体系的、実践的に習得できる(オンライン動画と反転学習で時間効率も最高!)

・厳格な卒業要件で卒業時の品質を保証

さらに、「レベルの高い基準を満たすために、自分自身を変革する機会が劇的に増える」という、めちゃくちゃ素晴らしいオポチュニティを手に入れることが出来ました。

もともとの契機は、2021年初旬に、年始の決意みたいなものを考えていたとき、200名ほどの規模に膨らんでいた組織を、もっと活かしていきたい、人の無限のチカラを引き出し、磨き上げていきたいというような背景から、このスクールに出会ったのでした。結果として、認知科学のコーチングは、1On1の人間関係に活かせるだけでなく、組織に対するエフィカシーを高めていくギジュツも得ることが出来たかと思います。

以下、引用。

”人を持続的に動かすときには、ある種の目的ないし目標、「 ゴール」が必要になる。人がなんらかの目標を持ち、「なんとしてもこれを実現したい!」「絶対にあれを達成するんだ!」という思いが生まれたときには、その人は外的な刺激を必要とすることなく、主体的に行動をとることができる。”



”最高のチームは 「圧倒的エフィカシー」から生まれる。内的原理に基づいて人を動かしていくときには、「① 正しいゴールを設定する」と同時に、「② それに対する十分なエフィカシーを確保する」ことが必要になる。これこそが「内因的な原理に基づくリーダーシップ」の基本的なモデルだ・”



”エフィカシーはあくまでも「認知」でしかないということだ。つまり、問われているのはあくまでも「その人が『自分にはできる』と 信じている かどうか」であり、「その人が 実際にできる(能力がある) かどうか」ではない。したがって、極端な話をすれば、個人のエフィカシーにとって、エビデンスは必要条件ではない。少々乱暴な言い方をするならば、エフィカシーには、「根拠のない自信」とも呼ぶべき側面があるのだ。”



”慶應義塾大学大学院の前野隆司はこうした知見も踏まえ、人の「意識」とは、心の中心にあってすべてをコントロールしているものではなくて、人の心の「無意識」の部分がやったことを、錯覚のように、あとで把握するための装置にすぎないとする 受動意識仮説 を提唱している。 言い変えれば、人間は内部モデルが行った無意識の計算処理に対して、あとから自分なりの理由づけをして、まるで自分の意思で決定を下したかのように感じているにすぎないというわけだ。”



”内部モデルを書き換えるためには、現状の延長線上にはないゴール設定が必要だ。むしろ、「並の努力ではとうてい達成できなそうなこと」「いったいどうすれば達成できるのか、まったく見当がつかないようなこと」をゴールとして設定する必要がある。”



”リーダーの根本課題は、いかにして人・組織の内部モデルを書き換えるかにある。認知科学的にとらえ直した場合、リーダーシップとは、 内部モデルを変更することで、人・組織の持続的な行動変容を促すプロセス にほかならない。”



”そこで注目したのが「ゴール設定」とそれが描く世界への「没入」だった。現状の外側にありながら、真のWant toに根ざしているゴールを発見し、そこに臨場感を生み出せたとき、内部モデルは根本から変わる。行動につながる情報処理システムのルールが書き換わる以上、人も組織もおのずと生まれ変わり、新しいゴールに向かうエネルギーを獲得することになる。”

”リーダーの セルフ・エフィカシー は、チーム・組織全体に伝播していく。目指すべき共通のゴール世界に対する「没入」が起こり、「自分たちはやれる/やれる気しかしない」という認知が生まれれば、チーム内に存在した「熱量の差」は消えていくだろう。これを 集団的エフィカシー(Collective Efficacy) という。リーダーシップの究極のゴールは、チームの集団的エフィカシーの水準を引き上げて、それを高く保ち続けることである。”



”世界の認知の仕方が変われば、当然ながら、心理的ホメオスタシスが参照する基準点も変わる。その人の脳にとって自然で心地よい場所が「現状とは別のリアリティ」に移ってしまえば、「これまでの現状」のほうがかえって居心地の悪い、どちらかというと不快なものに感じられるようになるはずだ”



”このとき必要なのは、「組織が実現したい世界」と「個人が実現したい世界」とが重なる部分を見出し、それを個人のゴールとして設定していくことだ。「個人として何を成し遂げたいのか」を明確にしたうえで、所属組織の掲げるパーパスと重なる部分を見つけ、それを「個人のゴール」に変えていくわけだ。このように、組織のパーパスを各人の価値観に合わせてパーソナライズするプロセスを、本書では「 パーパスの自分ごと化」と呼ぶ。”



”話題にする「組織のパーパス」は、決して「部署の売上目標」のような現実的なゴールであってはいけない。これでは既存のリアリティに引っ張られた発想しか生まれなくなってしまうからだ。むしろ、会社の経営理念のような「現状の外側」を志向するゴールを選び、それを互いに解釈していきながら、個人のWant toとの共通点を探っていくようにしよう。注意してほしいのは、その過程のなかで本人の欲望が「地に足のついた等身大のもの」になってしまわないようにすることだ。”



”フィードフォワード型の発想とは「未来の記憶づくり」あるいは「未来からのフィードバック」だと言ってもいいだろう。通常のフィードバックでは、「こういう過去がある。ではこれからどうしていくべきか?」という順序で思考が進むのに対し、フィードフォワード的なアプローチにおいては「こういう未来が実現する。だとするとこれから何をしていけばいいか?」という順番になる。あるべき未来像から現在や近未来にやるべきことを逆算していく手法は、 バックキャスティング(Back Casting) などとも呼ばれる。”



”全社員がいきなり現状を超えたリアリティにのめり込むことは難しいかもしれない。割合で言うならば、まず 3割 でいい。 30%を超えるメンバーのエフィカシーが変わってくると、チームが大きく進化するのを実感できるはずだ。 10 人のチームなら3人、100人の組織なら 30 人、1000人の企業なら300人の内部モデルを変えることをまず目指そう。 3割以上のメンバーのエフィカシーが一定レベルを超えると、組織全体にも「自分たちならできる!/できる気しかしない!!」という手応えが徐々に広がっていく”

両利きの経営―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く

2021年7月頃に読んだ書籍。2021年は、認知科学を学べたおかげで、両利きの経営が、本当に心に刺さりました。

なるべく自身・自社の既存の認知の範囲を超えて、遠くに認知を広げていこうという行為が 「探索」である。探索によって認知の範囲が広がり、やがて新しいアイディアにつながるのだ。しかし一方で、探索は成果の不確実性が高く、その割にコストがかかることも特徴だ。一方、探索などを通じて試したことの中から、成功しそうなものを見極めて、それを深掘りし、磨き込んでいく活動が「 深化」である。深化活動があるからこそ、企業は安定して質の高い製品・サービスを出したり、社会的な信用を得て収益化を果たすことができる。”

2021年に通ったMindset Coaching Schoolでも、以下のようなことを学んでいました。

・人間にはRAS(脳のシャッター機能)という機能がある。
・RASによって「自分とって重要なもの(自我にとって・バイタルに関わる)」の情報を入力している。
・RASによって入力する世界以外を「スコトーマ」という。
・RASはコンフォートゾーンに対して働くので、コンフォートゾーン以外はスコトーマといえる。

つまり、人間(個人)は、その特性上、認知できていない盲点が、常に存在している。これは、企業(法人)にも当てはまるということ。

”この両利きという概念は、一九八〇年代から行われてきた認知心理学の研究から出てきたものだ。もともと人間の認知には限界がある。人間である以上、これは避けられない本質だ。広い世界の中で、人間が認知できるのは目の前の一定範囲に限られ、そこにあるものだけで世界が構成されているように考える傾向がある”

実際に、本書にも、認知心理学に、その系譜があることが記載されている。

””しかし、現実の世の中には、認知の範囲外にもっと多くのより良い選択肢があるかもしれない。特に環境変化が起きたり、新しいことを試みようというときには、狭い範囲の考え方から脱してそれらの新しい知見に触れない限り、イノベーションを起こすことはできない””

””成功すればするほど深化に傾斜しやすい。そもそも自分たちの認識の外に出ようと試みるのは、「自分たちが考えていること、やっていることが間違っているかもしれない」という疑いを持つからだ。逆にいえば、ひとたび成功して「自分たちのやっていることは正しい」と認識すると、自分の認知している世界に疑念を持たなくなる。そこから抜け出せなくなるのだ。  このように、成功しているほど知の深化に偏って、結局はイノベーションが起こらなくなる状況は、「サクセストラップ(成功の罠)」と呼ばれる(図0‐1)。なお、これは「コンピテンシートラップ(競争力の罠)」と呼ばれる場合もある””

成功すればするほど、スコトーマ、盲点に囚われやすい。これは人も組織も似ているな、と。

2021年を通じて、多種多様なチャレンジをしながら、組織の数が増えてきて、トップマネジメントとして、どういう行動、決断をしていくべきか、向き合い続けて来たのだが、ある程度の規模にまで会社を育て上げたあとは、いかに、探索と深化を両立させられる組織を創るか、その文化を創るか、というところが、キーになって来るのだろうなと改めて向き合うことが出来ました。

””ベゾスは語る。「ゆっくりと安定的に進んでいけば、時間とともに、どのような挑戦にも食い込んでいける。(中略) 私がすべてのアイディアを持っているわけではない。それが私の役割ではない。私の役割は、イノベーションの文化を構築すること””

”企業文化の重要性を旗印にすることだと、ベゾスは即答している。「発明と変革をし続け、新しいことを築くというアマゾン規模の企業は、文化を持つ必要がある。(中略) ワクワクしながら実験し、実験に報いる文化で、失敗につながりそうだという事実さえも受け入れる。(中略) 長期志向もその一部となっている。この四半期に何もかもに取り組まなければならないとすれば、それは定義上、たいして実験するつもりがないということ。”

”ベゾスの見解によると、アマゾンの共通の文化規範は、あくなき顧客重視、実験への積極性、倹約、政治的な行動をしない、長期展望などである。これらは、完全に異なるユニットにまたがって、社内の人々を一つに結束させるのに役立っている”

もっともインパクトを与えられる領域に、いかにして自分の時間を使っていくべきか向き合い続けている中、両利きの組織を実践するリーダーシップの原則が参考になりました。

① 心に訴えかける戦略的抱負を示して、幹部チームを巻き込む。 ② どこに探索と深化との緊張関係を持たせるかを明確に選定する。 ③ 幹部チーム間の対立に向き合い、葛藤から学び、事業間のバランスを図る。 ④「一貫して矛盾する」リーダーシップ行動を実践する。 ⑤ 探索事業や深化事業についての議論や意思決定の実践に時間を割く。

以下、引用。

”探索では間違いから学んでいくので、エラーをコントロールすることは求められていない。フィードバックとフィードフォワード(機会を予測すること) とのバランスのとり方を、幹部チームは学ぶ必要がある ★ 9。  フィードフォワードでは抱負を起点に、何が可能なのか、自社はどのような機会が生み出せそうかを考えていく。

”成長に向けて感情移入のできる抱負を定める。第7章で挙げたリーダーシップの話に基づくと、受動的な変革の動機づけとなるのは、危機やそれに伴う恐怖感だ。しかし危機がなくても、他のところから感情的エネルギーが湧いてくる必要がある。戦略的刷新の動機づけとして、企業全体のアイデンティティにつながる、感情に訴えかける抱負が用いられる。成功している刷新事例には、企業戦略とともに、「自分たちは何者で、何をするのか」を規定する抱負が結びついている。”

希望は損失よりもはるかに説得力のある動機づけ要因であり、恐怖感という衰弱を招く効果を伴わない。しかし留意したいのが、従業員が重視していることと抱負が響き合っていなければならない

”抱負は短い言葉で、感情に訴えかけ、企業戦略に直接結びつき、幹部チームがオーナーシップを持って取り組めるものがよい。それから、抱負そのものは単なる言葉にすぎない。トップが率先して、折々に情熱を込めて語ることが大切だ”

感情に訴える抱負と逆説的な戦略課題(探索と深化) によって、戦略的刷新の取組みに活気が出てくる。実行しながら学び、大きなコミュニティの中で学習したことを共有し、幹部チームの監督下で進めていけば、社会的気運が生まれる。これは、先を見越した断続的な変革にとって非常に大切なことだ。

両利きの経営をいかに実現するか。ここでやっかいなのは、深化し漸進的な改良を行うことに適した組織能力と、探索し創造する組織能力との間には、水と油のような関係性がある点だ。組織特性でいえば、前者は同質的で連続性を持った組織体、後者は多様性と非連続性を前提とした組織体と相性が良い。

【目次】

解説 なぜ「両利きの経営」が何よりも重要か 入山章栄

はじめに  
第1部 基礎編-破壊にさらされる中でリードする 
第1章 イノベーションという難題
第2章 探索と深化
第3章 イノベーションストリームとのバランスを実現させる

第2部 両利きの実践-イノベーションのジレンマを解決する
第4章六つのイノベーションストーリー
第5章「正しい」対「ほぼ正しい」

第3部飛躍する-両利きの経営を徹底させる
第6章両利きの要件とは?
第7章要としてのリーダー(及び幹部チーム)
第8章変革と戦略的刷新をリードする
解説 イノベーションの時代の経営に関する卓越した指南書 冨山和彦

MORE from LESS(モア・フロム・レス) 資本主義は脱物質化する

2021年秋くらいに読んだ書籍。著者は『機械との競争』や『ザ・セカンド・マシン・エイジ』の共著者。どちらも、とても好奇心を刺激する書籍でした。

本書は、デジタル化を含めたテクノロジーの発展に伴い、金属や石油などの物質の消費量が、2000年をこえてから減少に転じている=脱物質化が始まっていることを明らかにした上で、これらの「①テクノロジー」、そしてそれらを使いこなすための「②資本主義」、資本主義の暴走、例えば公害などを抑制するための「③市民の自覚」、と「④反応する政府」(様々な社会変化に迅速かつ柔軟に対応できる政府)の4つがあれば、今後も、経済社会や自然も改善に向かうと説きます。

”テクノロジーの進歩、資本主義、市民の自覚、反応する政府。この4つをまとめて〈希望の四騎士〉と呼ぶことにする。このすべてが揃った国は人間と自然の両方とも、よりよい状況となる。どれひとつ存在しない場合、人間も自然も苦しむ。”

”〈希望の四騎士〉として、私はテクノロジーの進歩、資本主義、反応する政府、市民の自覚を挙げたい。4つの要素が揃っていると、私たちは地球に負担をかけずに豊かになれる。脱物質化で資源の消費を減らし、公害を減らし、ともに生きる動物を大事にしていくことができる。”

正直なところ、この世の中を、既存のマスメディアや、SNSを通じて観察しているだけでは、著者が主張するような希望的側面よりも、失望、絶望することの方が圧倒的に多い。しかし、ファクトフルネスのような書籍で、解説されている通り、幼い頃からの刷り込み、メディアのバイアスによって、世の中のマジョリティは、直感的に、世の中が良くなってきているとは感じにくい環境の中にいるということですね。

だからといって、人間はこのままの生活を続けていて良いという投げやりな主張でもなく。テクノロジー、資本主義を上手く活かしつつ、市民と政府次第で、希望を創っていけるという。まあ、それが難しいんじゃないか、というツッコミもありそうなんですが、自分自身が、地球市民の一人として自覚していくところから始めていこうと、改めて考えさせられる内容ではありました。

”資本主義は繁栄という花を見事に咲かせることができる。ただし、花を咲かせるには庭の手入れを怠ってはならない。社会の弱者の権利、財産、契約を守るための法律と裁判所の整備。暴力あるいは暴力的な支配の排除。そして徴税は歓迎されなくても、必要不可欠である。

”資本主義のすばらしいところは、エリート層だけではなく貧しい環境に生まれついた人々の暮らしもよくなることだ。資本主義が適切に機能すればどんな未来が待っているのか、スミスはマルクスやマルサスよりもはるかに明確に見通していた。”

”テクノロジーの進歩と資本主義がつくりだす好循環だけで、果たして私たちは地球に負担をかけずに繁栄していけるだろうか? ふたつの明快な理由から、それだけでは実現できない。第一の理由は経済学の初級講座で必ず学ぶ、公害という負の外部性だ。第二の理由は倫理の講座で扱われる内容領域、つまり動物をどう取り扱うか、市場での売買を禁じる対象についての検討だ。”

”あなたに共感します 〈希望の四騎士〉の第4番目は市民の自覚だ。たがいを、そして地球を大事にしようと自覚すること、よりよい方法でそれを実行するという自覚である。前者の市民の自覚について、スティーブン・ピンカーは著書『 21 世紀の啓蒙』で、前者の市民の自覚が増えている状況を「共感の輪」が広がるというイメージで表現している。ピンカーはあくまでも楽観的だ。「人にはもともと共感が備わっているからこそ、家族や部族の共感に留まらず、世界の人々と共感しあうことができる。冷静に考えれば、自分自身、あるいは所属する集団だけは特別な価値があるなどということはあり得ない。それを理解すれば自然と共感が生まれる。こうして、すべての人が世界市民としての権利を与えられているというコスモポリタニズムが広く受け入れられていく

”朗報が広く伝わっていかないのはなぜか。それにはいくつかの要因が関係している。ひとつには、人間は基本的に「負のバイアス」がかかりやすい。つまり、悪いニュースに強く影響され、よいニュースやどちらでもないニュースに比べて記憶に残りやすい。もうひとつの要因は、センセーショナルなニュースほど大々的に報道され、どうしてもネガティブな内容が強調されやすい。「悲惨な事件はトップニュースになる」というのは、使い古されたジャーナリズムのモットーだ。

”目指すところはあきらかだ。経済活動の脱物質化をさらに加速し、豊かになる過程をスピードアップする。そして公害など負の外部性と社会関係資本の減少に歯止めをかける。つまり、〈四騎士〉のうち資本主義とテクノロジーの進歩の組み合わせで〈第二啓蒙時代〉を推し進め、やはり〈四騎士〉のうち反応する政府と市民の自覚という組み合わせで資本主義を適切に抑制し、急速な変化がもたらす弊害に対処する。

第1章 マルサス主義者の黄金時代
第2章 人類が地球を支配した工業化時代
第3章 工業化が犯した過ち
第4章 アースデイと問題提起
第5章 脱物質化というサプライズ
第6章 なぜリサイクルや消費抑制は失敗するか
第7章 何が脱物質化を引き起こすのか--市場と驚異
第8章 アダム・スミスによれば――資本主義についての考察
第9章 さらに必要なのは――人々、そして政策
第10章 <希望の四騎士>が世界を駆け巡る
第11章 どんどんよくなる
第12章 集中化
第13章 絆の喪失と分断
第14章 この先にある未来へ
第15章 賢明な介入
結 論 未来の地球