パターン認識力が世界で最も高いであろう投資家〜 ピーター・ティール 世界を手にした「反逆の起業家」の野望 〜


 

 
 
ピーター・ティールは、ペイパルマフィアのドンと呼ばれ、Facebookの初期投資家だけでなく、数多くの投資に大成功している。今では、トランプ大統領の側近の一人として、政治の世界にもネットワーキングを持っている。
 
まさに現代のシリアル・アントレプレナーとも言えるし、シリアル・インベスターとも言えるかもしれない。僕が興味を持っているのは、彼が、『パターン認識』力の高い傑物であろうというところ。『具体と抽象』を自由自在に行き来し、彼にしか見えない、彼だけが見ている、世の中の真理を追求し続けているところ。
 
 
 
””「あなたにとって、賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう?」”” 
 
 
という問いは、ピーター・ティールの世界観を垣間見ることが出来る。
 
 
今でも実践し切れていないのですが、僕が、とても衝撃を受け、かつ、初めて知った時よりも、今の方が、圧倒的に、納得感がある言葉が、こちらです。
 
 
””「『毎日を人生最後の日であるかのように生きよ』という決まり文句を聞いたことがあるでしょう? 
 
でも実際は逆です。『毎日を自分が永遠に生きるかのように生きよ』が正しい。

 
つまり、きみのまわりにいる人間を、これからも長くつき合うつもりで扱うべきなんです。きみが毎日下す一つひとつの選択がとても大事です。その結果は時間の経過とともにどんどん大きくなりますから」””
 
 
投資やファイナンスについて学び始めると、いかにリソースにレバレッジをかけられるか?いかに不確実性を避けられるか?という当然のテーマと向き合い続けることになると思うのですが、毎日の自分の決断が、選択が、『複利』のように、雪だるまのように、積み上がっていくと考えるのは、今更ながら、腑に落ちてきたのである。
 
 
 
””ペイパルが並いるテクノロジー企業の中でもっとも重要な青写真となった成功要因とは何なのだろう?   90 年代の終わりにはまだSNSがなかった。ティールが最初から決めていたのは、固い友情を大切にして、会社の成功よりも友情が重んじられる会社をつくることだ。ティールはこう述懐する。
 
「僕らがペイパルを立ち上げたとき、マックスとこんな会話を交わしたことを覚えています。会社に何があっても壊れない友情で結ばれた、メンバー全員がよい友人である会社をつくりたいって””
 
””僕らが雇ったのは、もともとの友人たちだけではありません。よい友人になると信じられる人を雇っていったんです」  
 
すべての社員はヘッドハンターを介さず、直接スタンフォードの関係者から集めた。ペイパルを率いる社員の多く――特にかつてスタンフォード・レビューの編集長をつとめたケン・ハワリーとデイビット・サックス、それにリード・ホフマン――にティールは全幅の信頼を置いている””
 
 
 
 また、橘玲さんのコラムにも、このような記述があった。
 

起業でもっとも大事なのは「友情」

 ウォール街と同じく、シリコンバレーも一攫千金を目指す者たちが鎬を削る弱肉強食の世界だと思われている。そんななかでティールは、起業でもっとも大事なのは「友情」だという。
 「ペイパルの友人たちは特別な絆があります。あれは実に濃い経験でしたよ。当時の濃い経験があるからこそ、僕らはいまでも固い絆で結ばれているんです」 
 
アメリカの「影の大統領」、ピーター・ティールの思想とは?

[橘玲の世界投資見聞録]より
 
 
 
 
 
 
””バフェットが師とあおぐベンジャミン・グレアムの『証券分析』(パンローリング) に全幅の信頼を寄せているのに対し、ティールはルネ・ジラールに傾倒している。彼はスタンフォード時代に出会ったジラールに「最後の博学者」という最大級の賛辞を贈っている。
 
『世の初めから隠されていること』は、彼にとってジラールの最高傑作である。まちがっても気軽に楽しめる本ではないが、それは「わかりにくいという意味ではなく、中身がぎっしり詰まっている」から””
 
逆張りの投資家とも言われるが、スタンフォード時代に仕えたジラールから『世の初めから隠されていること』に張るということを、投資家として成功するためのスタンスとして身につけたのかもしれない。
 
 
””ティールにとって、本書にもあるスタンフォード大学時代の恩師ルネ・ジラールの影響は大きい。彼は、模倣と競争を研究のテーマとする哲学者ジラールから、起業家・投資家としてのあり方を学び取ったのだろう―「人は、完全に模倣から逃れることはできないけれど、細やかな神経があれば、それだけでその他大勢の人間より大きく一歩リードできる」と語っている””
 
 
””模倣こそ、僕らが同じ学校、同じ仕事、同じ市場をめぐって闘う理由なんです。経済学者たちは競争は利益を置き去りにするといいますが、これは非常に重要な指摘です。ジラールはさらに、競争者は自分の本来の目標を犠牲にして、ライバルを打ち負かすことだけに夢中になってしまう傾向があると言っています。競争が激しいのは、相手の価値が高いからではありません。人間は何の意味もないものを巡って必死に戦い、時間との戦いはさらに熾烈になるんです””
 
 
『模倣と競争』を研究テーマにしていたピーター・ティールは、『パターン認識』力を、極限まで鍛え抜いていて、どんなに抽象度の高いことでも、その共通項を見出し、世の中の大半の人たちが気づく前に、彼が見える世界の中で、投資をしているのだろう。
 
 
ピーター・ティールが、どういう事に気を使っているか、を理解できたからと言って、凡人が、彼と同じことを出来るとは限らない。しかし、『他の誰もしないことは何だろう?』と、自らに問いかけ、『自分が価値を感じること』かつ、『自分に出来ること』を考えてみることは、肝要だろう。それこそが、尊い人生を賭するべき領域だろう。改めて問い続けていきたい。
 
 
 

【目次】

はじめに――iPhoneはイノベーションではない
第1章 はじまりの地、スタンフォード大学
第2章 「競争する負け犬」になるな――挫折からのペイパル創業
第3章 常識はずれの起業・経営戦略――ペイパル、パランティアはなぜ成功したのか
第4章 持論を発信する――『ゼロ・トゥ・ワン』と『多様性の神話』スキャンダル
第5章 成功のカギは「逆張り思考」――スタートアップの10ルール
第6章 ティールの投資術――なぜ彼の投資は成功するのか
第7章 テクノロジーを権力から解放せよ――ティールのリバタリアン思想
第8章 影のアメリカ大統領?――トランプ政権を操る
第9章 ティールの未来戦略――教育、宇宙、長寿に賭ける
おわりに――テクノロジーがひらく自由な未来へ
ピーター・ティールがシリコンバレーを離れる日――訳者あとがき