未知に対応するチカラ、反脆弱性という気質。


 

”反脆いものはランダム性や不確実性を好む。つまり、この点が重要なのだが、反脆いものはある種の間違いさえも歓迎するのだ。反脆さには独特の性質がある。反脆さがあれば、私たちは未知に対処し、物事を理解しなくても行動することができる。しかも適切に。いや、もっと言おう。反脆さがあれば、人は考えるより行動するほうがずっと得意になる。ずば抜けて頭はよいけれど脆い人間と、バカだけれど反脆い人間、どちらになりたいかと訊かれたら、私はいつだって後者を選ぶ。”

 

 

反脆弱性!?この言葉を大学を含めても学校教育において、学習したことがある日本人は、ほぼいないかと思います。普通に考えると、「脆い」の反対は「硬いもの」「頑丈なもの」という言葉が頭に浮かんでくるのではないでしょうか。

 

”頑健なものや耐久力のあるものは、変動性や無秩序から害をこうむることも利益を得ることもない。一方、反脆いものは利益を得る。だが、この概念を理解するまでには少し労力がいる。人々が頑健だとか耐久力があるとか呼んでいるものの多くは、単に頑健な(耐久力がある)だけだが、残りは反脆いのだ。”

 

難しいですよね。。。ちょっと、自分で説明するよりも、プロの方の説明を引用させて頂いた方が良い気がしてきました。

 

””衝撃を利益に変えるものがある。そういうものは、変動性、ランダム性、無秩序、ストレスにさらされると成長・繁栄する。そして冒険、リスク、不確実性を愛する。こういう現象はちまたにあふれているというのに、「脆い」のちょうど逆に当たる単語はない。本書ではそれを「反脆(はんもろ)い」または「反脆弱(はんぜいじゃく)」(antifragile)と形容しよう。

 反脆さは耐久力や頑健さを超越する。耐久力のあるものは、衝撃に耐え、現状をキープする。だが、反脆いものは衝撃を糧にする。この性質は、進化、文化、思想、革命、政治体制、技術的イノベーション、文化的・経済的な繁栄、企業の生存、美味しいレシピ(コニャックを一滴だけ垂らしたチキン・スープやタルタル・ステーキなど)、都市の隆盛、社会、法体系、赤道の熱帯雨林、菌耐性などなど、時とともに変化しつづけてきたどんなものにも当てはまる。地球上の種のひとつとしての人間の存在でさえ同じだ。そして、人間の身体のような生きているもの、有機的なもの、複合的なものと、机の上のホッチキスのような無機的なものとの違いは、反脆さがあるかどうかなのだ。””

引用:『ブラック・スワン』のタレブ最高傑作! 不確実性を利益に変える劇薬「反脆弱性」とは?

 

 

 

本書は、非常に長く深く濃厚で、かなりの時間をかけて読み込んだのですが、まだまだ概念として頭の中に余韻しているものの、正直、消化し切れていないというのが本音です。

 

しかしながら、読後に誓ったことは、『物事を理解してから行動しようと考えていては、いつまでたっても何も成し遂げることが出来ない。考えるよりも行動する方が得意だと自負するためにも、この反脆弱性という性質、気質を身に着けていきたい!』ということでした。繰り返し繰り返し読みたい一冊です。

 

”トップダウン的なもののほとんどが脆さを生み出し、反脆さや成長を妨げているとすれば、ボトムアップ的なものはみな、適度なストレスや無秩序のもとで成長する。発見、イノベーション、技術的進歩のプロセス自体を担っているのは、学校教育ではなく、反脆いいじくり回しや積極的なリスク・テイクなのだ。”

 

 

”少ないほど豊かだ。そして、ふつうは少ないほど効果的だ。そこで、私は本書でほんのいくつかのコツ、指針、禁止事項を提案したいと思う。理解不能な世界をどう生きるべきか。いやむしろ、絶対に理解できない物事に臆することなく対処するにはどうすればよいか。もっと原理的にいえば、そういう物事にどう対処すべきか。さらにいえば、自分たちの無知に面と向かいあい、人間であることを恥じることなく、人として積極的に堂々と生きるにはどうすればよいのかを提案したい。だが、それにはちょっとした構造的な変化が必要かもしれない。 私が提案するのは、人工的なシステムを修正し、シンプルで自然なシステムに舵取りを任せるためのロード・マップだ。”

 

 

”イノベーションを起こすには? まず、自分からトラブルに足を突っこむことだ。といっても、致命的ではない程度の深刻なトラブルに。私は、イノベーションや洗練というものは、最初は必要に迫られて生まれると思っている。いや、そう確信している。最初の発明や何かを作ろうという努力が思ってもみない副作用をもたらし、必要を満たす以上の大きなイノベーションや洗練へとつながっていく。”