共に与え合う関係が『絆』を創る。〜安心と挑戦を促すセキュアベース・リーダーシップ〜


 

 
急拡大した組織の中で、自己防衛的なコミュニケーションを、どのように減らしていけるだろうか? という問いを持っていた時に出会った書籍。
 
適切な評価制度が無いとか、急激に増加した(多階層)組織とか、何かと政治的、自己防衛的なコミュニケーションが増えてしまい、コトに向き合いにくい環境が生まれしまう。
 
そういう環境を防止、予防するために、『心理的安全』を用意すべき、みたいな論考は何度も目にした来たのですが、さて、他責にせず、まず自分は、どうあるべきか?何を行っていけるか?そういうことを昨年、考え続けてきました。
 
 
””アメリカのGoogle Inc.(以下、グーグル社)が2012年から約4年もの年月をかけて実施した大規模労働改革プロジェクト、プロジェクトアリストテレス(Project Aristotle)や、その他の人事関連研究の成果報告として『心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要なものである』と発表したことにより、大きな注目を集めました。””
 
 
上述のプロジェクトは有名かと思いますが、『心理的安全』を組織に根付かせていくために、自分が出来ることのヒントを貰ったのが本書でした。
 
 
 
””セキュアベースの「安心感」と「挑戦」という魔法の組み合わせをどうすれば提供できるのか、また、地域や肩書や仕事の内容にかかわらず、どうすれば「セキュアベース・リーダー」になれるのかを解説するために書かれた。  ジョージはよく「人質」のたとえを使うが、セキュアベースは無力な人質の心理状態にならないためのものだ。つまり、人はセキュアベースがあれば、どんなに大きな障害であっても、それを乗り越えようとする。””
 
 
””セキュアベース・リーダーになれば、フォロワーと「心でつながること」により、限界に挑ませることができる。「心でつながること」と「限界を超えて挑戦させること」は、どちらか片方を欠いたままもう片方を実現することはできない。””
 
””高業績を「持続的」にもたらすためには、「人」と「目標」の両方に重きを置いて、成功を追い求める必要がある。
 
これまでの我々の経験から言うと、多くのリーダーは「目標」には非常に重点を置き、実利的な面での成功は成し遂げる。
 
しかし、彼らは孤独感や充実感のなさを味わっている可能性がある。というのも、目標を追い求めるうちに、メンバーとのつながりが失われたり、弱まったりするからだ。
 
メンバーとの絆がないままに数字的な目標を達成しようとするとき、多くの身体的、精神的、社会的な影響が生じる。
 
たとえば、心因性のストレス、依存症、燃え尽き症候群、うつ病などだ。これらすべてが、結局は全体的な成功から差し引かれることになる。””
 
””リーダーは誰かのおかげでリーダーになっている。リーダーは自分の力だけでリーダーになったと思っているかもしれないが、それはものごとの半面しか見ていない。
 
わたしたちの研究によると、成功したリーダーと失敗したリーダーの大きな違いは、人生にセキュアベースが存在したかどうかという点だ。
 
セキュアベースを持つことで、不安や恐れが減少し、信じること、リスクをとることが増えていく。組織においては、セキュアベースは上司の場合もあるし、同僚、仲間、会社そのもの、仕事、あるいは製品の場合ですらある。””
 
 
人生にセキュアベースを持っているかどうか。『おかげさま』と思って、日々を生きることは、ライフワークなのですが、このようなスタンスは、今の自分には、とても刺さりました。
 
 
 
””安全だけを与えたとすると、、過保護の状態となってしまい、その人の可能性は限定される。一方で、リスクをとることだけを勧めると、その人物は危険に身をさらされて不安になり、本能的に保身に走る。
 
このように、安全とリスクのうちの片方だけを提供すると、最終的な成果を下げることになる。””
 
””セキュアベースは、居心地のよい領域の外に出ていくよう、背中を押してくれる人だ。
 
大好きな友人でも、あなたが可能性を広げるための冒険を応援してくれないのなら、セキュアベースにはならない。””
 
 
この絶妙なバランスが大事なんですよね。
 
 
””人は、自分が行動できると感じ、目的を達成し、成功するために、目標との絆が必要だ。
 
自分を目標に強く結びつけることで、障害を乗り越えて結果を出すという決意と、粘り強さが生じる。目標と絆を形成するというその行動こそが、やり遂げるためのエネルギーとなるのだ。””
 
 
『絆』が大事って、なんだか古臭いようだけど、今こそ、とても大切なんだなあ、と。
 
 
 
””セキュアベース・リーダーシップの最初の一歩は、「絆の形成」によって安心感を提供することだ。ストレッチと挑戦を勧めるのは、「君ならできると思っている。君を信じている」と言うのと同じことであり、信頼の絆を強めることである。
 
セキュアベース・リーダーシップの力は、この「自己強化」(行動がある基準に達したときに、自分をほめることで、さらに行動を強化すること)の動きの中にある。””
 
 
””「絆とは、生物学的なシステム全体を調整し統合する、肉体的に不可欠なつながりである。絆は、理性的な思考の基礎となる知を確実なものとする」社会的な動物である人間は、絆なしでは生きられない。
 
わたしたちには、家族や種族、仲間やリーダー、チームや組織との絆が必要だ。  
 
絆がなければ、それに代わるものを探し続けることになるだろう。絆は職場では軽視されることもあるが、いまではリーダーとしての成功に不可欠だと考えられている。””
 
絆がなければ、それに代わるものを探し続けてしまうって、経験したことがあるのではないだろうか。これだけ、色々な人と関わりやすい世の中にあって、表面的、表層的な『繋がり』では満たされない。『絆』と言えるような関係性を、人間は本能で求めていると思う。
 
 
””理想の絆は関わる人々にエネルギーを与える双方向のプロセスだ。それは単なる交流や親しい関係以上のもので、感情面でのギブ・アンド・テイクである。
 
絆は相手に対する共感や愛情という形で現れる。共感と愛情から思いやりが生まれる。
 
前述したように、リーダーシップは本質的に個人的なものである。つまり、人はその人全体を、仕事に持ち込むのである。””
 
『絆は相手に対する共感や愛情という形で現れる。共感と愛情から思いやりが生まれる。』一方的ではない関係性。与え合う関係性。そういう感覚があって、『絆』と感じられるような関係性になっていく。
 
 
””研究によると、人と関わり、共感し、絆を結びたいというニーズは最初から人間に備わっており、それがこうした学習プロセスを通じて目覚めるという。絆の形成は、他者がどのように絆を結ぶかを見て、学ぶことができる。””
 
さあ、どのように、『絆』を醸成していくのか?というところが、気になるところですが、本書は、丁寧に、丁寧に、解説してくれている。人間くさい、人間くさすぎるほどの『絆』を創ること、興味がある方に、おすすめの一冊。
 
 
””セキュアベース理論の基本原則は、「誰かと、あるいは何かとつながることによって、人は安心感を得て、危険を探そうとする脳のスイッチを切る」というものである。
 
安全だと感じると、人は最も大きな冒険に心を開く。冒険することで、 造力が花開く。可能性に目が向けられ、思いやりは挑戦へとつながる。””
 
 
””「思いやること」と「挑ませること」はリーダーシップの二つの軸で、この二つを正しいバランスで組み合わせると、セキュアベース・リーダーシップとなる””
 
 
””人は短期の年間目標とも絆を結べるし、長期的なビジョンや組織のミッションとも絆をつくることができる。
 
これらの言葉はよく使われるものの定義はさまざまなので、これらをまとめて「目指す成果を表す声明」と呼ぼう。それらの声明がどんな名前だったとしても、それが「勝利を目指す(たくさん思いやり、たくさん挑ませる)」限り、組織を従業員のためのセキュアベースにする意図が表れている。””
 
””自身の人間性に触れ、より生きている実感を持つには、自分の希望や夢、情熱や喜び、信念や決意、仕事や人生に対する熱意を大きく持つことだ。
 
本書では、リーダーが他者のためのセキュアベースになることによって、他者にこうしたプラスの力を持たせるよう勧めてきた。自分自身にも同じことをしよう。””
 
 
””今日最も希望が感じられる変化の一つは、組織のミッションや目的で、社会や環境への責任に言及する企業が増えていることだ。ミッションが幅広い社会的な責任に言及しているとき、従業員の間にお互いへの強い親近感とつながりが生ずることがあり、それは顧客にまで広がることもある。  
 
こうしたミッションは、人々が組織を媒介として世界によい影響を与えるよう促している。このチャンスを提供することで、組織は従業員の人間性の核となる部分に接近する。すなわち、世界をよりよくするために貢献したいという、純粋な欲求である。””
 
””組織の人間性を高めれば、その事業がどのように社会に貢献できるかを認識するチャンスが生まれる。多くの企業にとって、社会との関わりをチャンスと捉えることは、事業の役割についての思い込みを変えることである。
 
それは、未来の世代とつながることであり、またわたしたちが彼らに引き継ぐものや資源とつながることである。さらには、地球の破壊は人類の生存を脅かすと認識し、地球とつながることでもある。””
 
””人は目覚めている時間の多くを職場で過ごす。一つひとつの組織は、人が前進し、豊かになり、成長する場所になれる。反対に、人が軽んじられる場所にもなり得る。その分かれ目となるのがリーダーシップだ。
 
リーダーシップの中でも、最も重要なのがセキュアベース・リーダーシップだ。あなたのようなセキュアベース・リーダーが、この変化する世界で何が可能なのかを示すのである。””
 
 
 
 
 
第1章 安全とリスクのパラドックス
第2章 セキュアベース・リーダーの9つの特性
第3章 信用構築サイクル
第4章 社会的感情としての「悲しみ」
第5章 「心の目」で見る練習
第6章 「勝利を目指す」マインドセット
第7章 自分のセキュアベースを強化する
第8章 他者のセキュアベースになる
第9章 「安全基地」としての組織
第10章 人間の顔をした組織をつくる