戦略を、実行できる組織、できない組織。~組織の存続のために必要な「最重要目標にフォーカスする」~


ここ数年、リチャード・ルメルトの「良い戦略、悪い戦略」を繰り返し読み直す。

”良い戦略とは最も効果の上がるところに持てる力を集中投下することに尽きる。短期的には、手持ちのリソースを活かして問題に対処するとか、競争相手に対抗するといった戦略がとられることが多いだろう。そして長期的には、計画的なリソース配分や能力開発によって将来の問題や競争に備える戦略が重要になる。いずれにせよ良い戦略とは、自らの強みを発見し、賢く活用して、行動の効果を二倍、三倍に高めるアプローチにほかならない。~良い戦略は、知力やエネルギーや行動の集中によって威力を発揮する。ここぞという瞬間にここぞという対象に向かう集中が、幾何級数的に大きな効果をもたらすのである。これをテコ入れ効果(レバレッジ)と呼ぶ。”

そして、昨年11月、僕たちは、集中戦略と称して、あまりにも分散していた多数の事業やプロジェクトを苦渋の決断で撤退することを決めた。分かっている、分かっちゃいるのだけど、トライしてみればみるほど、言うは易く行うは難し、だと痛感する。筋の良い戦略を掲げた後、次に、その戦略を、どう実行するか?に挑み続ける必要がある。そこで出会ったのが本書である。

””人間は遺伝子的に一度に一つのことしか完璧にできない。これが第1の規律で働いている基本原則である。あなたはおそらく、自分はいくつもの仕事を同時に進められる、一度にたくさんのことができる、と思っていることだろう。しかし、最重要目標には最大限の努力を注がなくてはならないのだ。  アップル社のスティーブ・ジョブスは、やろうと思えば、もっと多くの製品を市場に出せただろう。しかしジョブスはいくつかの「最重要」製品に焦点を絞った。彼のフォーカスは伝説となった。彼が出した結果もまたしかり。人間の脳が一定の時間に集中できるのは一つの対象だけだということは、科学が証明している。どんなに頑張っても、車を運転しながら携帯電話をかけ、同時にハンバーガーを食べることはできない。最重要の企業目標をいくつも一度に操ることも、無理な話なの~””

””リーダーの悩み  ここで、大きな疑問が生じる。目標を絞り込むよりも増やすほうへとどうしても傾いてしまうのはなぜなのか? 絞り込む必要性は十分にわかっていながら、いざとなると絞り込めない。なぜなのか?  リーダーであるあなたはこう答えるかもしれない。改善しなければならないことはたくさんあるし、追求したいビジネスチャンスも毎日次々と生まれるからだ、と。それに加えて、他の人たち(そして彼らの計画)があなたの目標を増やす可能性もある。他の人というのが組織の上層部の人間だったらなおさらである。  しかし、これらの外的な力よりも頻繁にほとんどの問題の発端となっている原因がある。何を隠そう、それは「あなた」である。  あなただって悪意から問題を起こしているわけではないし、むしろ善意で頑張っているのだろう。しかし本当の意味で、自分の最大の敵は自分なので~””

あまりにも、ありふれた表現をすれば、緊急ではない重要なことに、どれだけフォーカス出来るか、仕組みを作ることにある。この仕組みが、どういうものであれば良いかを、丁寧に解説してくれている本書は、今の僕、僕たちには、とても示唆に富むシンプルなルールが沢山書かれていた。有り難い限り。

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Generative AIによる以下一部抜粋を受けた書評

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組織の存続のために必要な「最重要目標にフォーカスする」

Introduction

竜巻と戦略目標を混同するリーダーが多い現代において、「最重要目標にフォーカスする」という第一の規律は、組織の存続に不可欠なものである。竜巻は急を要する仕事であり、重要な目標と緊急の仕事が衝突すると、緊急の仕事が優先されることが多いため、最重要目標を絞り込むことが重要である。本記事では、最重要目標にフォーカスすることが組織にとってなぜ重要なのかを探りながら、第一の規律について詳しく見ていく。

竜巻と戦略目標はまったく別物である

竜巻は急を要する仕事であり、前進するために設定した目標と衝突することが多い。しかしながら、多くのリーダーは、竜巻と戦略目標を混同してしまっている。竜巻は組織の存続に必要なものであるが、戦略目標とはまったく別のものであり、時間、資源、労力、注意を奪い合う敵対関係にある。この闘いでどちらが勝つかは明白である。竜巻は常に存在し、あなた自身やあなたのチームのメンバーに常に影響を及ぼしている。最重要目標を絞り込むことが、竜巻と戦略目標を区別するための第一歩である。

最重要目標にフォーカスする

最重要目標にフォーカスすることで、チームのエネルギーを最も重要な目標に集中させることができる。やることを増やせば増やすほど成果は上がらない。頭の切れるリーダーであっても、良いアイデアがあれば手を出したくなるものである。しかし、良いアイデアはいつでもたくさんあるため、最初に最重要目標を絞り込むことが必要である。フォーカスは自然の原理であり、一本一本の太陽光線に火を起こすエネルギーはない。しかし虫眼鏡で一点に集めれば、ものの数秒で紙を燃やしてしまう。同様に、チームのエネルギーを最も重要な目標にフォーカスさせることで、達成することができる。

結論

最重要目標にフォーカスすることが、竜巻と戦略目標を区別するための第一歩であり、組織の存続に不可欠であることがわかった。竜巻は常に存在するため、最重要目標を絞り込むことでチームのエネルギーを集中させることができる。フォーカスは自然の原理であり、最重要目標にエネルギーを集中させることで、組織の存続に重要な役割を果たすことができる。リーダーは最重要目標を見極め、チームのエネルギーを集中させることで、組織を成功に導くことができる。

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一部抜粋

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””多くのリーダーは、竜巻と戦略目標をほとんど区別していない。どちらも組織の存続に必要だからである。しかし、竜巻と戦略目標はまったく別物である。それだけではない。時間、資源、労力、注意を奪い合う敵対関係にある。この闘いでどちらが勝つか、言うまでもないだろう。  竜巻は急を要する仕事である。あなたにも、あなたのチームのメンバーにも、四六時中のしかかっている。前進するために設定した目標は重要だが、緊急の仕事と重要な仕事が衝突すれば、毎回必ず緊急のほうに軍配が上がる。この構図に一旦気づくと、新しいことを実行しようとしているチームのいたるところで繰り広げられる緊急と重要の闘いが見えるだろ””

””第1の規律:最重要目標にフォーカスする  やることを増やすほど成果があがらないのは、ものの道理である。だれもが経験している避けられない明白な原則である。しかしほとんどのリーダーは、どこかでこの原則を忘れてしまっている。なぜだろう? 頭が切れ野心的なリーダーは、もう十分知っていることでも、手を出したくなるからだ。最高には到底及ばないが、そこそこ良いアイデアがあったとする。あなたはそのアイデアをきっぱり無視できるだろうか? 困ったことに、良いアイデアというのはいつでもたくさんある。あなたとチームが実行できるキャパシティにはとても収まりきらない。したがって最初の課題は、最重要目標を絞り込むことである。  フォーカスは自然の原理だ。一本一本の太陽光線に火を起こすエネルギーはない。しかし虫眼鏡で一点に集めれば、ものの数秒で紙を燃やしてしまう。同じことが人間にも当てはまる。チームのエネルギーを最も重要な目標にフォーカスさせれば、達成できないわけが

””第1の規律:最重要目標にフォーカスする」では、あなたはこれまでのセオリーに立ち向かわなければならない。チームがより多く のことを達成するために、リーダーはより少ない ことにフォーカスするのである。何もかもを一度に大幅に改善しようとしても、どだい無理なのである。第1の規律を導入するときは、本当に重要な目標を一つ(多くて二つ)を選ぶ。これを最重要目標(Wildly Important Goal:WIG)と名づけて、何よりも重要な目標であることをチームにはっきりと示す。その目標を達成できなかったら、他のどんな目標を達成したところで、たかが知れている。ほとんど何の効果もないと言ってもいいだろ

””第2の規律:先行指標に基づいて行動する  これはレバレッジの規律である。すべての行動が等しい力をもつわけではないという簡潔明瞭な原則に基づいている。目標達成に直結する活動もあれば、いくら頑張っても効果のない活動もある。目標に到達したいなら、インパクトの強い活動を特定し、それを実行する必要がある。  どのような戦略を推進するのであれ、その進捗と成功は、二種類の指標で測られる。遅行指標と先行指標である。   遅行指標 とは、最重要目標を追跡する測定基準であり、普段あなたが最も時間をかけて祈りを捧げている指標だ。売上高、利益、マーケットシェア、顧客満足度はすべて遅行指標である。これらの指標のデータを手にしたときには、そのデータをたたき出した活動はすでに過去のものとなっている。だから、あなたは祈ることしかできない。遅行指標が出てきたら、もはや手の施しようはない。それは過去の出来事なのだ。   先行指標 は、遅行指標とはまるで異なる。目標を達成するためにチームが実行しなければならない最もインパクトの強い活動の指標だからだ。先行指標は基本的に、遅行指標を成功に導く新たな活動を測定する。たとえば、ベーカリーの来店客全員に試供品を提供するというようなごく単純な活動も、ジェットエンジン設計の規格を守るといった複雑な活動も、先行指標になる。  適切な先行指標には、二つの基本的な特徴がある。目標達成を 予測できる こと、そしてチームのメンバーが 影響を及ぼせる ことで

””第3の規律:行動を促すスコアボードをつける  スコアをつけるとプレーは変わる。嘘だと思うなら、バスケットボールで遊んでいる十代の子たちを見てみるといい。スコアをつけはじめると、ゲームはがぜん熱を帯びてくる。しかしここで、冒頭の一文「スコアをつけるとプレーは変わる」に「自分で」を加え、「自分でスコアをつけるとプレーは変わる」にすると、さらにはっきりするだろう。そう、スコアをつけるのは自分自身でなければならない。  第3の規律は、意欲的に取り組むための規律である。気持ちの入っている人は最高のパフォーマンスをするものだ。そしてスコアを知り、勝っているのか負けているかがわかれば、自然と気持ちは入る。当たり前の話だ。カーテン越しにボウリングをするとしよう。最初は面白がってやるかもしれないが、勢いよく倒れるピンが見えなければ、いくらボウリングの好きな人でもすぐに飽きる。  第1の規律で焦点を定め(WIGと遅行指標)、第2の規律で、目標に至る軌道に乗るための重要な先行指標を決める。これで試合に勝つ要素は揃った。次のステップは、選手の積極的な行動を促す簡潔なスコアボードに試合の推移を記録することで

””第4の規律:アカウンタビリティのリズムを生み出す  第4の規律で戦略実行を現実のものにする。第1から第3の規律までは、試合に勝つ態勢を整えるプロセスであり、第4の規律を適用してようやく、試合開始となる。第4の規律は、アカウンタビリティ(報告責任)の原則に基づいている。お互いに報告する責任を負い、その責任を一貫して果たさなければ、目標は竜巻に吹き飛ばされてしまう。  アカウンタビリティのリズムとは、最重要目標に取り組むチームが定期的に、かつ頻繁にミーティングをもつことを意味する。ミーティングは少なくとも週一回、長くても二〇~三〇分程度が理想的だ。メンバーは、竜巻の中でどのような結果を出しているかを短い時間で報告し

””第4の規律の秘訣は、定期的なリズムを維持すること、そしてそれぞれのメンバーがみずから約束をすることである。チームのメンバーはすべきことを指示されるものと思っている。指示してほしいとさえ思っている。指示待ちが普通なのだ。しかし、すべきことを自分で決めて約束すれば、責任感は増す。上から命じられるより、自分で考えて決めたことのほうが身を入れて取り組むものである。自分が何をするのか、上司だけでなくチームのメンバー全員の前で述べるのだから、それは個人の信用に関わる問題になる。決められた業務をこなす枠を超え、チームに対して約束をすることなので

””一言でいえば、第1の規律は、より少ない目標により多くのエネルギーを注ぐことだ。目標は多ければいいというものではない。生産要素をどんどん投入していくと、投入一単位当たりの収穫がだんだん減っていく 収穫 逓減 の法則は、目標の数にも言える。重力の法則のように自明の理なのである。  竜巻の要求の他に目標が二つ、多くても三つまでなら、チームはそれらにフォーカスし、まず間違いなく全部達成できるだろう。しかし目標が四つ以上一〇個以下だと、我々の経験からして、せいぜい一つか二つしか達成できない。後退してしまうのだ。日常業務の竜巻に一一個以上、はては二〇個の目標が加わったら、焦点は消えてなくなる。チームのメンバーは、あまりに多くの目標にわけがわからなくなり、耳を傾けるのをやめてしまう。実行などとうてい望め

””あなたがチームに負担をかけすぎる理由の一つは、リーダーであるあなた自身が野心的でクリエイティブであることだ。まさしく組織の中で出世していくタイプである。問題なのは、クリエイティブで野心的な人間は、常にもっと多くやろうとすることだ。もっと少なくしよう、などとは考えもしない。あなたもそうなら、実行の第1の規律を破ってしまうのはまず間違いない。  チームに過剰な目標をもたせてしまう一つの理由は、危険の分散である。あれもこれも手を出せば、どれか一つはうまくいくだろうと期待するのだ。さらに言えば、たとえ失敗しても、チームの努力が足りなかったと批判されないようにするためだ。多いほど良くないことは知っていても、多いほうが頑張っているように見えるし、上司の受けもよいだろうと思ってしまう。目標の数が減れば、個々の結果に対する責任が重くなる。それが嫌なのだ。自分の成功を努力の質ではなく量に頼るので

””しかしながら、目標を絞り込むときにリーダーが直面する最大の問題は、実はもっとずっと単純だ。良いアイデアを無視できないのである。4Dxでは、良いアイデアどころか最高のアイデアさえ採用しない場合もある。少なくとも当面は無視しなければならないことがある。良いアイデアを無視するなど、リーダーの直感に反する最たるものだろう。しかし、何もかも受け入れていては、焦点はぼやけ、消失してしまう。  しかも困ったことに、良いアイデアというのは一度に全部陳列されるわけではない。ほどよく小出しにされるから、つい手に取ってしまう。一… エクスポートの制限に達したため、一部のハイライトが非表示になっているか、省略されています。

””スティーブン・R・コヴィーはこう言っている。「最も優先すべきことが何なのか、しっかりと決めておかなければならない。そして気持ちよく、笑顔で、素直に、それ以外のことに対してノーと言う勇気をもつ必要がある。ためらうことなくノーと言えるようになる秘訣は、自分の中でもっと強い、燃えるような大きなイエスをもつことである」  チームの焦点を絞るために、良いアイデアに「ノー」と言うことの大切さがわかれば、フォーカスを妨げる二つの罠の一つ、良いアイデアの魅力は避けられる。しかし二つめの罠、竜巻は手ごわい。竜巻の中にあるものをWIGに投じなければならないのだ。竜巻に立ち向かいながら、最重要目標に全精力を傾けなければなら

””最重要目標を決めるときの問いかけは、「何が最も重要か?」ではない。最初に問うべきは、「他のすべての業務が現在の水準を維持するとして、変化することで最大のインパクトを与えられる一つの分野は何か?」 である。この問いで考え方が変わり、状況を一変させる焦点を見極められる。  一つか二つの最重要目標を決めてしまったら、チームがそれ以外のことをないがしろにするのではないかと心配したくなるかもしれない。しかしチームの労力の八〇%は竜巻を維持することに使えるのだから、そんな心配は無用だ。他の仕事が後退するのではないかと不安になるのをやめたら、WIGに向かって前進していける。第1の規律の言葉どおり、最重要目標にフォーカスできるので

””しかし使命を深く考えているうちに、WIGが少しずつ見えてきた。彼らがそれまで考えてもみなかったものだった。「障害者の生活を維持できるような仕事を当社以外の企業で見つける手助けをする」ことである。地域の障害者全員をここで雇うことは無理でも、何千人もの障害者に小売の仕事のトレーニングを提供する余裕ならある。障害者がより良い仕事を見つける手助けをすれば、彼らの自立を促進できる。こうして、「持続可能な仕事に就く障害者を増やす」ことが新しいミッションになった。  このWIGで組織は一変した。使命を実現するための業績を維持しながら、これまでに何千人もの障害者、社会的弱者が自立し、自尊心をもつ手助けをしたので

””ルール一:一度に四つ以上の目標にフォーカスできるチームは存在しない  このルールはエンジンの回転速度を調整するガバナーのように機能する。実行の4つの規律に深く入っていくと、組織全体に何十ものWIG、ことによると何百ものWIGが見つかる可能性がある。しかし、一人のリーダー、一つのチーム、あるいは個人に過剰な負担をかけてはならない。彼らは竜巻の絶え間ない要求を処理しているのである。このルールを頭に入れて、あと三つのルールを

””ルール二:選択した局地戦は、総合的な戦いに勝利をもたらすものでなければならない  軍事衝突でも、飢餓や癌、貧困を撲滅する戦いでも、局地戦と総合的な戦いの間には明確な関係性がある。ある局地戦に臨む理由は、総合的な戦いに勝つこと以外にはない。組織の下位で取り組むWIGの役目は、組織の上位のWIGを達成する助けになること以外にはない。下位WIGが上位WIGと一致するだけでは不十分だし、助けになる程度でも足りない。組織の下位のWIGは、上位のWIGの成功を確実にしなければならないの

””上位WIGが決まったら、次に何を問うかが重要である。「この総合的な戦いに勝つためにできることは何か?」という問いは、多くのリーダーが犯す間違いだ。出てくる答えは長々とした「すべきことリスト」である。そうではなく、「この総合的な戦いに勝つために必要な最小限の局地戦は何か?」 と問う。この質問に答えれば、上位WIGを達成するために必要な下位のWIGは何か、いくつ必要なのかが決まる。総合的な戦いに勝つための局地戦を選びはじめると、戦略が明確化し、同時に単純化して

””ルール三:上位役職者は拒否権を使えるが、命令はできない  組織のトップだけで戦略を策定し、部下のリーダーやチームに手渡すような方法をとっていたら、最高度の実行力はいつまでたってもおぼつかない。戦略の実行に必要な従業員の強いコミットメントは、従業員自身が参加しなければ生まれないのだ。上位役職者が最上位のWIGを決めるのは妥当だとしても、下位WIGはそれぞれのチームに決めさせなくてはならない。チームのリーダーの知識を活かせるだけでなく、従業員が目標を自分のものとしてとらえ、積極的に関わる意識も強くなる。要するに、自分で選んだ目標が組織の最も重要な目標を後押しするなら、自然と身が入るのだ。上位役職者は、各チームが選んだ局地戦が総合的な戦いの勝利に結びつかないと判断したときにだけ、拒否権を発動すれば

””ルール四:すべてのWIGに「いつまでにXからYにする」のフォーマットでフィニッシュラインを決める  各レベルのWIGに測定可能な結果を含め、その結果を達成する期限を定めなくてはならない。たとえば売上高にフォーカスしたWIGなら、「一二月三一日までに新製品の年間売上高の伸び率を一五%から二一%にする」となる。「いつまでにXからYに」のフォーマットには、現在の地点、行きたい地点、そこに到達する期限が示されるわけである。簡単なフォーマットに見えるが、多くのリーダーは戦略のコンセプトを「いつまでにXからYにする」のフィニッシュラインに置き換えるのが苦手なようだ。しかしこれができれば、リーダーもチームもこれ以上ないほどはっきりとした目標を手に

””一〇個もの「できれば達成したい」目標から、一つか二つの「何としても達成しなければならない」目標に変わると、チームの士気は劇的に上がる。メンバーの頭の中に「試合開始!」のスイッチがあるかのようだ。あなたがそのスイッチを押せるなら、最高の実行力の土台はできているも同然だ。ケネディ大統領は、一〇年以内に人間を月に送り帰還させると公言し、そのスイッチを押したので

””最重要目標(WIG)にフォーカスするには、「7つの習慣」の「時間管理のマトリックス」(第三の習慣)を活用することが効果的だ。第Ⅰ領域は緊急で重要な事柄であり、有無を言わずに取り組まなければならない。第Ⅲ領域は緊急だが重要でない領域、第Ⅳ領域は緊急でもなく重要でもない領域であり、知らずにはまってしまう事柄だ。問題は重要でありながら緊急でない第Ⅱ領域の事柄であり、WIGはこの領域にある。ほうっておけば、人は緊急で重要な第Ⅰ領域に振り回されてしまい、やがて疲れ果てて「燃え尽きて」

””遅行指標は目標が達成できたかどうかを教え、先行指標は目標を達成できそうかどうかを教える。遅行指標に対してできることはほとんどない。しかし先行指標のほうは、自分の力でどうにでもできる。  たとえば、あなたは自分の車が路上で故障する頻度(遅行指標)を決めることはできないが、車を整備に出す頻度(先行指標)なら、あなたが自分でどうにでもできる。この先行指標をきちんと管理し、実行すれば、路上でエンストする事態を避けられる可能性が高くなるのである。  最重要目標を定めたら、その目標を数カ月後に達成するために必要な具体的な作業のすべてをリストアップし、詳細な計画をたてるのが当然だと思うだろう。だれでも直感的にはそう思う。しかし第2の規律では、そのようなことはし

””では、正しいテコを選ぶにはどうしたらよいだろうか?  過去に達成したことのない目標を達成するためには、過去にやったことのないことをしなければならない。周りを見渡してみよう。その目標あるいはそれに類似する目標を達成した人がいるだろうか? 彼らの行動はどこが違っていただろうか? 予測できる障害を仔細に分析し、乗り越える方法を考える。イマジネーションを駆使しよう。これまであなたが思っていなかったことで、状況を一変できそうな活動は何だろう?  次に、 WIGの達成に最大のインパクトを与えると思う活動を選ぶ。ここでのポイントは八〇/二〇ルールである。あなたがすることの二〇%は、残る八〇%よりもWIGにテコの作用が働く。その二〇%は何だろ

””この事例で学べる教訓は、先行指標のデータのほとんどは遅行指標データよりも取得しにくいが、代償を払ってでも先行指標を追跡しなければならないということだ。先行指標の取得に苦労しているチームは、これまでもずいぶん見てきた。テコの作用が強く働く先行指標にフォーカスしようとしても、「このデータをとるのは大変だ! 忙しくてそれどころじゃない」と言う。WIGに真剣に取り組むなら、先行指標を追跡する方法を考え出さなくてはならない。データがなければ、先行指標のパフォーマンスを前進させることはできない。先行指標がなければ、テコの効果はない。  WIGが本当に最も重要な目標なら、テコは絶対に必要

””スコアをつけると、プレーが変わる。先行指標と遅行指標を頭で理解しているだけのチームと、実際にスコアを知っているチームとでは、雲泥の差がある。先行指標と遅行指標の推移をビジュアルなスコアボードに記録し定期的に更新しなければ、指標はたちまち竜巻に吹き飛ばされ、消えてなくなる。要するに、スコアがわからなければ、人はやる気をなくす。逆に勝っているのかどうか一目でわかれば、試合に身が入るの

””強いチームは、自分たちが勝っているのか負けているのか常にわかっている。知らなくてはならない。そうでなければ、試合に勝つために何をすればいいのかわからないからだ。行動を促すスコアボードは、現在の状態とあるべき状態をチームに教える。それは、問題を解決し、決定を下すために不可欠な情報である。  だから、行動を促すスコアボードがなければ、チームは強くなれない。力が分散し、集中力が続かず、いつもの状態に逆戻りして

””第3の規律で確立したいのは、コーチのスコアボードとはまったく異なる「選手のスコアボード」である。あなたのチームの選手に、勝ちを取りにいく強い気持ちをもたせるためのスコアボードで

””一.シンプルか?  選手のスコアボードはシンプルでなければならない。フットボールの試合のスコアボードを考えてみよう。基本的には六種類のデータしか表示され

””二.すぐに見られるか?  スコアボードはチームのメンバー全員に見えなければならない。フットボールの試合のスコアボードは巨大だ。フィールドのどこからでも一目でどちらのチームが勝っているかわかるように、大きな数字で表示される。チームのスコアボードがコンピューターに収まっていたり、あなたのオフィスのドアの内側に掛かっていたりしたら、メンバーの視界に入らず、したがって頭の中から抜け落ちる。チームはいつも竜巻と闘っている。それは手ごわい相手だ。スコアボードが見えなければ、WIGと先行指標は、日常業務の慌ただしさの中で、数日とは言わないまでも数週間で忘れられてしまうだろ

””三.先行指標と遅行指標が示されているか?  先行指標と遅行指標の両方を示すことが大切だ。これでスコアボードは生きたものになる。先行指標はチームが影響を及ぼせる活動であり、遅行指標はチームが求める結果だ。両方の指標を常に見ていなければ、チームはすぐに興味をなくしてしまう。先行指標と遅行指標の両方が見えていれば、賭けの状況がわかる。自分たちが今やっていること(先行指標)、その結果として得ていること(遅行指標)が見えるわけで

””四.勝っているかどうか一目でわかるか?  勝っているのか負けているのか、瞬時にわからなければならない。スコアボードを見た瞬間に勝っているのかどうかわからなければ、それは試合のスコアボードではなく、ただのデータだ。そんなことは当たり前だと片づける前に、あなたが次回提出するレポート、グラフ、スコアカードあるいはスコアボードをチェックしてほしい。週間の財務データを示すスプレッドシートを見てほしい。勝っているか負けているか、 瞬時に言える だろうか? 他の人たちはどうだろう? これを五秒ルールと名づけよう。勝っているか負けているかを五秒以内に言えないなら、そのスコアボードは不合格

””先行指標と遅行指標を頭で理解しているだけのチームと、今後行うことと実行した結果を明確にしているチームとでは雲泥の差がある。先行指標と遅行指標の推移をビジュアルなスコアボードに記録し定期的に更新しなければ、モチベーションは低くなってしまう。要するに、スコアがわからなければ、人はやる気をなくす。逆に勝っているのかどうか一目でわかれば、試合に身が入るのだ。  スコアボードとはビジュアル化に他ならない。まず「こういうものをつくろう」「こんなふうにつくろう」「こんな仕上げを施そう」という具合に設計図をビジュアル化して(第一の創造)、その後、設計図に従って実行することになる(第二の創造)。スコアボードをつくる(ビジュアル化する)ことが第一の創造であり、それを実行することが第二の創造と

””WIGセッションの中身はその都度異なるが、議題はどのセッションでも必ず同じにする。セッションの議題は次の三つである。   一.報告:前週のコミットメントについて報告  「当社に低いスコアをつけたお客様三人を訪問すると約束しました。訪問したところ……」  「見込み客三人から現地訪問の予約をとると約束しました。四人の予約をとりました!」  「副社長に会いましたが、承認はもらえませんでした。というのは……」   二.スコアボードを確認する:うまくいったこと、いかなかったことから学ぶ  「遅行指標は緑色ですが、先行指標の一つが黄色に落ちているのが問題です。何があったかというと……」  「先行指標は上昇傾向にあるのですが、遅行指標がまだ動いていません。今週はスコアを動かすために倍の労力をかけることで合意しています」  「WIGの達成に近づいていますが、今週、お客様からいただいたアドバイスを実践しまして、先行指標をさらに伸ばしました!」   三.計画:障害を取り除き、新たにコミットメントをする  「その問題については、私が何とかできます。力になってくれそうな人を知っています……」  「先行指標に影響している在庫の問題は、何としてでも来週までに解決します」  「この数字についてはボブと話し合い、来週までには少なくとも三つの改善案をまとめておき

””WIGセッションのリーダーは、メンバーの約束の中身が適切であるかどうかに責任をもつが、重要なのは、メンバー自身が約束をすることである。このことは声を大にして言いたい。すべきことをリーダーが指示していたら、メンバーはほとんど何も学ばない。逆に、WIGを達成するために必要なことを常にメンバーがリーダーに話せれば、彼らだけでなくリーダーも、実行力を身につけていく。  チームのメンバーがすべきことを自分から約束するのは、リーダーであるあなたの直感に反しているかもしれない。何をすべきかをあなた自身がよく見えているときは、つい指示したくなるだろうし、チームのメンバーも指示を受けるものと思っているかもしれない。しかしリーダーが最終的に求めるものは、チームのメンバー一人ひとりが、約束に責任をもって取り組み、果たすことである。メンバーがインパクトの高い約束を見つけるのに苦労していれば、リーダーが助け舟を出してもかまわないが、アイデアは必ずメンバー自身から出させ、リーダーが指示してはいけ

””リーダーの役割は、細かな作業を指示することではない。メンバーがWIGに対して積極的にコミットメントして、WIGを達成するために自らリーダーシップを発揮するように導くことだ。そして、アカウンタビリティを通してメンバーの主体性を引き出しエンパワーメントすることも、リーダーの大きな役割と

””WIGを見つける質問  WIGを見つけるときには、次の三つの質問が役立つ。  一.「このチームのパフォーマンスのどの部分を改善すれば(他の部分は維持することを前提にして)、組織全体のWIGの達成に最も貢献できるか?」(「チームにできる最も重要なことは何か?」よりも効果的な質問である)  二.「チームのどの強みにテコ入れすれば、組織全体のWIGの達成に貢献できるか?」(この質問に答えれば、チームがすでに成功していて、なおかつパフォーマンスをさらに高いレベルに引き上げられる分野が明確になる)  三.「組織全体のWIGの達成に最も貢献するために、チームのパフォーマンスが低いどの分野を改善すればよいか?」(この質問に答えれば、改善しなければ組織全体のWIGの達成に悪影響を与えるローパフォーマンスの分野が明確に