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『The Art of Finding Desire: Money, Love, and Career by Luke Burgess~欲望の見つけ方~』

反模倣的に生きることが出来ているか?

””反模倣的というのは、どういう意味だろうか。模倣の欲望と完全に手を切るべき、あるいはそれが可能であるという話ではない。反模倣的であるというのは、ナシーム・ニコラス・タレブの「反脆弱性」と違って、単に模倣の反対を示すものではない。反模倣的であるというのは、欲望の破滅的な力に対抗する能力、自由を持つことである。模倣的なものは促進剤であり、反模倣的なものは抑制剤である。反模倣的な行動──あるいは人──は、流れに乗るのを好む文化の否定の証である。  ””

『The Art of Finding Desire: Money, Love, and Career by Luke Burgess~欲望の見つけ方~』(ルーク・バージス著)は、人間の欲望について深く掘り下げ、欲望の種類や発生原因、欲望を識別する方法、欲望を活かすための方法、欲望によって充実した人生を送る方法などが紹介されている。

認知科学のコーチングを学び、自分の(本書で言うところの濃い欲望に近い)Want toを掘り下げ、磨き上げることには、かなりの時間を投資し続けているものの、本書で言及されているジラールの「模倣の理論」という概念を知った今、自分の欲望は、自分のWant toは、本当に模倣的ではない!と断言することが難しいのではないか?と懐疑的になった。

””濃い欲望とは、表面からは見えない奥深く、地球の中心に近いところでつくられるダイヤモンドのようなものだ。それは人生において変化しつづける環境に影響されない。一方、薄い欲望はきわめて模倣的で伝染しやすく、たいてい底が浅い。  欲望は年齢を重ねるにつれて濃くなっていくと言えればいいが、必ずしもそうとはかぎらない。少なくとも意図的に努力しなければそうはならない。自分の欲望が薄いことに気づくのが遅すぎたという高齢者はめずらしくない。たとえば、何十年も引退を楽しみにしてきて、いざ引退してみたら満たされなかったという人だ。引退したいという望み(ちなみに第二次世界大戦前は一般的ではなかった)は薄い欲望であり、理想的な状況のなかでこれをしたい、これはしたくないという模倣的に得た考えでいっぱいだからだ。一方で、家族と過ごす時間を増やしたいというのは濃い欲望だ。そう言えるのは、今日から欲望を満たすことができ、引退するまでそれを続けられるからだ。それは長い年月をかけて複利のように成長する。時間をかけて確かなものと~

AIの存在によって、この世の中は、僕たちの預かり知らぬところで、欲望の生態系は、ごく一部の人間による恣意的なコントロールによって、益々、自分が理解できる規模を超えてしまう可能性が高いのではないか。人は、きっと、自分は(自分だけは)、独立した欲望を持っている、模倣した欲望なはずがない、と、盲目的になる(ならざるを得ないとも言えるかもしれない)

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Generative AIによる以下一部抜粋を受けた書評

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欲望の模倣のサイクル

欲望を満たすことができるモデルがなければ、私たちは欲望を持つことができません。しかし、欲望のために模倣することで、欲望が薄くなってしまう問題があります。また、モデルを選択する際には、そのモデルが自分の欲望に合っているかどうかを確信し、その欲望を追いかけることができます。しかし、モデルを追いかけるだけでは、内なる変容が起きず、その欲望を満たしても、次の欲望に移ります。欲望のポジティブなサイクルを形成するためには、内なる変容が起こることが必要です。

自分の欲望を見つめ直す

私たちは自分自身の欲望を形づくる責任があると同時に、人間関係を大切にする責任もあります。欲望をつくる義務と人間関係は切り離せないものです。欲望の変容は、自分の欲望よりも人の欲望の達成を気にするようになったときに起きます。欲望のポジティブなサイクルが機能するのは、真似されるのが自分を差しだす行為だからです。欲望のポジティブなサイクルが機能するためには、自分の欲望よりも人の欲望の達成を気にするようになることが必要です。

自分にとって大切な欲望を手にする

自分にとって一番大切な欲望を手にすることが必要です。それを手に入れるためには、自分にとってのモデルを見つけることが必要です。モデルを見つけても、内なる変容が起きなければ、モデルに追いつくことはできません。愛の定義は、相手にとって良いものを欲することです。自分の欲望のためだけでなく、人の欲望も実現できるようにすることが、欲望のポジティブなサイクルを形成することにつながります。

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一部抜粋

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””ジラールは、私たちが欲しがるもののほとんどは、 模倣 によるものであって、内在するものではないとした。人間は──真似ることを通して──ほかの人が欲しがるものと同じものを 欲しがることを学ぶ。同じ言語を話し、同じ文化的規範によって行動することを学ぶのと同じである。真似は、社会において人々が 公 に認める以上に大きな役割を果たしている。  人間が持つ真似る力は、ほかの動物を 凌駕 している。その力があるからこそ、人間は洗練された文化や技術をつくることができる。同時に暗い面もある。真似る力によって私たちは、欲しいと思っても最終的には手に入らないものを追い求めてしまう。真似は私たちを欲望と競争の循環に閉じこめる。そこから逃れるのは難しく、実質的には不可能だ。  だが、ジラールは教え子たちに希望を与えた。ままならない欲望の循環を超越することは可能 だった。自分が望む人生を築くにあたって、主体性を発揮することは可能だったのである””

””模倣の欲望は、人間生態学の全体像の一片にすぎない。そこには自由と人間性への合理的な理解もある。欲望の真似は、他人の内なる生き方に対する深い寛容性と関係がある──それは私たちを人間として際立たせている。  ジラールが「欲望(desire)」という言葉を使うとき、それは食欲や性欲、身の安全を求める気持ちではない。それらは「欲求(needs)」と呼んだほうがいいだろう。生物学的な欲求に真似は関係ない。砂漠で喉が渇いて死にそうなとき、誰かに水が欲しいところを見せてもらう必要はない。  しかし、生き物として基本的な欲求が満たされたあと、私たちは人類の欲望の世界に足を踏みいれる。そして、欲しいものを知ることは、必要なものを知ることよりもずっと

””欲望の動きは世界を定義する。経済学者はそれを測定し、政治家はそれを集め、ビジネスはそれを提供する。歴史は人類の欲望の物語である。それなのにその起源も進化もよくわかっていない。ジラールは一九七八年の大作に『世の初めから隠されていること』というタイトルをつけた。人間が欲望の本質とその帰結をいつから隠してきたのかつきつめた結果だった。本書は、この隠されたものについて、そしてそれが今の世の中でどのように展開しているかについて記したものである。””

””危険なのは、モデルの存在を認識しないことだ。その場合、私たちは簡単にモデルと不健全な関係に陥ってしまう。モデルは巨大な影響力を発揮しはじめる。私たちは無意識のうちにモデルに執着しがちだ。モデルというのは、多くの場合、秘密の偶像なのである。 「ルネは、それが敬意を表する行為であるかのように、人の目の前にある偶像を取りのぞくことができた」。ジラールの友人ギル・ベイリーは私にそう語ってくれた。模倣理論はモデルを暴き、モデルとの関係をつくりなおす。モデルを明らかにすることが第一歩と~””

””私たちは一般的に、欲望とのあいだに異なる関係(現実の関係あるいは認識された関係)を築いている人にひかれる。他人が欲しがっているものは気にしないように見える人、あるいは同じものを欲しがらない人は、別世界の人間のように感じるものだ。模倣に影響されず、反模倣的にさえ見える。だから魅力的なのである。ほとんどの人はそうではない””

””移動するゴールポスト  作家のジェームズ・クリアーはその著書『ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる一つの習慣』のなかで「目標ばかり追っていてはいけない。仕組みから取りかかろう」と述べている( 1)。欲望の視点から見れば、目標はシステムの産物である。自分たちが持つ欲望のシステムの外にあるものを欲しがることはできない。  目標設定に執着するのは的外れで、逆効果ですらある。目標を設定するのは悪いことではない。しかし、目標の選び方を差しおいて目標の設定方法にこだわれば、目標は容易に自虐の道具になる。  ほとんどの人は自分の目標の選択に一〇〇%の責任を負っていない。欲望のシステムのなかで提示される目標を追いかけているのだ。私たちの目標は多くの場合、モデルによって選ばれる。つまり、ゴールポストは常に動いているということ~””

””共感とは、他者の経験を共有する能力である──ただし、相手の話、信念、行動、感情を 真似ることはなく、自分自身の人格や冷静さを失うまで 共鳴することはない。この意味において、共感は反模倣的で~

””共感は模倣のネガティブなサイクルを破壊する。共感する能力がある人は、他者の経験に入りこんで その人の欲望を共有することなく、その人の考えや感情を共有できる。共感力のある人は、自分が欲しくないものをなぜ欲しがる人がいるのか理解できる。つまり、共感できれば、 ほかの人のようにならなくても ほかの人と深くつなが

””自分の人生の終わりに際して、追いかけるチャンスを逃したことにいちばん後悔するのは、濃い欲望だと思う。手に入れようと没頭したことに、きっと満足を覚えるだろう欲望だ。私が疲れ果てて死ぬとすれば──誰でも最後はそうなる──、それは薄い欲望を追いかけたからではない、濃い欲望をつかみ、何も残らなくなるまでつかみ続けたからだ。  破滅的な模倣のサイクルは、自分の欲望の絶対的な優位性を確信したときに動きだす。それを満たすためなら、ほかの欲望を犠牲にするのをいとわない。しかし、欲望のポジティブなサイクルのなかでは、人は自分の欲望と同じように他人の欲望にも敬意を払う。さらに、ほかの人がもっとも大切な欲望を達成できるように積極的に協力する。ポジティブなサイクルにおいては、みんながまわりの人の濃い欲望を実現しようと何らかの形で手助けする。””

””愛のもっともシンプルな定義は、相手にとって良いものを欲することだ。イタリア人は示唆に富む言い方で「愛している」と言う。「 Ti voglio bene」直訳すれば「私はあなたにとって良いものを欲する」。あなたにとってもっとも良いことがありますように、という意味だ。  私たちは自分自身の欲望を形づくる責任がある。これまで見てきたように、それはほかの人なしでは成しえない。欲望をつくる義務と人間関係を大切にする責任は切り離せない。  欲望の変容は、自分の欲望よりも人の欲望の達成を気にするようになったときに起きる。逆説的だが、それが自分の欲望を満たす確かな道なのだ。  欲望のポジティブなサイクルが機能するのは、第一に真似されるのが自分を差しだす行為だからだ。これが美しい結婚、友情、慈善活動の裏にある模倣の欲望のポジティブな力となる。  結局のところ、「欲する」というのは「愛する」の別の言い方なのだ。そして、それもまた模倣的なものである。””

『Curious: The Desire to Know and Why Your Future Depends on It~あなたの人生を創る「好奇心」の驚くべき力~』

生成AIの登場によって、今まで人間にしか出来なかった仕事や作業の大半が不要になるかもしれない、という人類史上稀に見る革命的瞬間に立ち会おうとしている今、人間を人間たらしめる要素は何か?と多様な議論がなされている。

その1つの重要な要素に「好奇心」という存在があるのではないか?少なくとも、これから暫くの間、今まで以上に「好奇心」がより一層大切になるのではないか?と感じざるを得ないことが増えている中で、出会った本書。

「好奇心」についての思考を追求することがテーマとなる『Curious: The Desire to Know and Why Your Future Depends on It』は、「好奇心」という存在が、僕たちの人生に深い喜びをもたらす力を持っていることを気付かせてくれる。

著者は、「好奇心を育むこと」の重要性について強調し、特に子供の頃から好奇心を育むことは、私たちの学業能力を向上させ、職業上の成功に欠かせないという。また、好奇心にはより深い意味があるとも言及しており、周りの世界を見つめることで美しさを発見し、新しいものを発見することで、個人的・職業的成長を促すことができると語る。

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Generative AIによる以下一部抜粋を受けた書評

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純粋な意味での好奇心は人間にしかみられません

「好奇心ほど不可思議で、私たちにとって大切なものはない」。動物が茂みを嗅ぎまわるのは三つの生理的欲求に導かれているが、現在知られているかぎり、星を見上げてあれは何だろうと疑問に思うのは人間だけなのです。それは、人間にはもう一つ、第四の欲求があるからです。しかし、好奇心には秩序がなく、好奇心と秩序は相容れないとされています。好奇心は定められた道に満足せず、脇に逸れ、あてもなくさまよい、方向を変える傾向があります。それを追求すれば、やがて権威との対立が待っていることは、ガリレオやダーウィン、スティーブ・ジョブズなどを見ても明らかです。

好奇心に満ちた学習者は深く、そして広く学ぶ

好奇心に満ちた学習者は深く、そして広く学ぶことができます。彼らは専門知識と高度な判断能力を必要とする職務に向いており、異なる分野の知識をつなぎ合わせて新たな知恵を生み出す創造的な活動が得意です。複数の専門分野を横断するチームで働くのにいちばん適しているのもこのタイプであり、人工知能が苦手とするような仕事を担う存在です。現代の世界では、テクノロジーによって人間の仕事が置き換えられつつあるため、もはや賢いだけでは生き残れません。コンピューターは賢いですが、今のところ好奇心旺盛なコンピューターは存在しません。

好奇心は知識を深めるための第一歩

好奇心は探究心への第一歩です。私たちが未知なるものへと目を開くきっかけとなり、新たな経験を求め、それまで縁のなかった人々に出会うことを後押ししてくれます。しかし、知ることへの欲求をふくらませて成熟させない限り、何の洞察も得られないまま興味の対象を次々と替えるだけで、エネルギーと時間を無駄にしかねません。束縛のない好奇心は素晴らしいですが、方向性をもたない好奇心は不毛です。

結論

好奇心には秩序がなく、定められた道に満足せず、脇に逸れる傾向があります。それは、好奇心が知識を深めるための第一歩である一方、何の洞察も得られないまま興味の対象を次々と替えるだけで、エネルギーと時間を無駄にすることもあるからです。好奇心に満ちた学習者は深く、そして広く学ぶことができ、複数の専門分野を横断するチームで働くのにいちばん適している存在です。私たちは好奇心を大切にし、常に知識を深めるための第一歩として、探究心を持ち続けることが重要です。

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一部抜粋

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””「好奇心ほど不可思議で、私たちにとって大切なものはありません」。ロイドはそう訴えた。「ダーウィンが明らかにしたとおり、私たち人間はほかの霊長類と同じように、食と性と安全という三つの基本的欲求によって突き動かされています。しかし人間にはもう一つ、第四の欲求がある。純粋な意味での好奇心は人間にしかみられません。動物が茂みを嗅ぎまわるのは三つの欲求に導かれてのことです。ところが現在知られているかぎり、星を見上げてあれは何だろうと疑問に思うのは人間だけなの

””これには理由がある。好奇心には秩序がないのだ。好奇心と秩序は相容れない。少なくとも好奇心の裏には、どんな秩序も鋭い疑問の声が上がれば揺らぐものだという認識がある。好奇心は定められた道に満足せず、脇に逸れ、あてもなくさまよい、いきなり方向を変える。つまり、好奇心とは逸脱にほかならない。それを追求すれば、やがて権威との対立が待っていることは、ガリレオやダーウィン、スティーブ・ジョブズをみても明らか

””拡散的好奇心は探究心への第一歩だ。私たちが未知なるものへと目を開くきっかけとなり、新たな経験を求め、それまで縁のなかった人々に出会うことを後押ししてくれる。ただし、知ることへの欲求をふくらませて成熟させない限り、何の洞察も得られないまま興味の対象を次々と替えるだけで、エネルギーと時間を無駄にしかねない。束縛のない好奇心は素晴らしい。しかし、方向性をもたない好奇心は不毛

””人が無知な理由はただ一つ、あまり気にかけないからだ。無知とはつまり無関心だ。無関心は何よりも奇妙で愚かな悪習である。 ――スティーヴン・フライ[「QI」の司会を務めた

””私たちは自分が何を知るべきかわかっていたら、もっと楽に生きられるだろう。幸せになるには何を知るべきか、生まれたときに細かく教えてもらえたらどんなにいいか。だが複雑な世の中では、将来何が役に立つのか誰にもわからない。したがって、大切なのは幅広い分野に先行投資をしておくことだ。好奇心旺盛な人々は冒険をし、さまざまなことに挑み、あえて効率を犠牲にする。彼らは今日学んだことが、たまたま次の日に役に立ったり、問題をまったくちがった角度から捉えるきっかけになったりすることを知っている。先を予測するのが難しい環境であればあるほど、一見無駄に思われそうな幅広く深い知識が重要になる。人間はマンモスと格闘していた太古の昔から複雑な問題に立ち向かってきた。しかし、私たちが生きる社会がかつてないほどの規模に成長し、多様性や変化のスピードが増している今、好奇心はかつてないほど重要な――そして有意義な――資質になって

””ピアジェの理論によると、好奇心は逆U字型の曲線をたどる。横軸は驚きの度合いを示している。好奇心が最大になるのは、予測が裏切られた度合いが極端に小さいわけでも、極端に大きいわけでもないときだ。その度合いがとても小さければ簡単に無視できる。逆にとても大きければその事実から目を逸らそうとする。そこに隠された意味に漠然とした不安を感じるからだ。ところが不整合に着目するこの理論では、どうして私が隣のテーブルの会話に聞き耳を立て、あなたがクリミア戦争についてできるだけ詳しく知りたいと思うのか、説明がつか

””一九九四年、カーネギー・メロン大学の心理学者で行動経済学者のジョージ・ローウェンスタインは、好奇心を本能から解釈するアプローチと、認知の視点から解釈するアプローチを融合する理論を提唱した。ローウェンスタインによると、好奇心は「情報の空白」に対する反応である。私たちは知りたいことと、すでに知っていることのあいだに空白があると好奇心を抱く。知りたいという欲求を呼び覚ますのは「不整合」だけではない。情報が存在しないこともその要因になる。情報の空白は質問の形式で顕在化することが多い。あの箱の中には何があるのか? あの男性はどうして泣いているのか? 「苦しみ」を意味する四文字からなる単語は何だろう? これらは情報の一部だけを手にしている状態の例だ――ここに箱がある、泣いている男性がいる、クロスワードのヒントがある。そのような状況に遭遇すると、私たちは欠けている情報について知りたくなる。ローウェンスタインの理論は単純そうにみえるが、じつは深遠なことを教えてくれる。それを正しく理解するには、彼の理論に大きな影響を与えた学者ダニエル・バーラインの理論から紐解いてゆく必要が

””好奇心は理解と、理解の欠如の双方によって刺激される。これは学習の動機について重要なことを物語って

””「情報の空白」という理論を打ち立てた。彼は、新しい情報からくる刺激によって 無知を自覚させられたとき に好奇心が生まれ、さらに知りたいという欲求に発展すると主張する。私たちはある事柄について何らかの知識を得ると、自分が 知らない ことがあると気づいて落ち着かなくなり、その空白を埋めたくなる。ウィリアム・ジェイムズ[アメリカの哲学者、心理学者。ヘンリー・ジェイムズの兄] はローウェンスタインに先立って、「科学的好奇心」は「音楽に関わる脳の領域が不協和音に反応するように、知識の空白から生まれる」と述べている。ここで非常に重要なのは、情報が存在しないときに好奇心が生まれるだけでなく、 すでに保有している情報 についても、その空白が鍵になるということ

””少しだけ知っていることが好奇心に火をつける  一般的に、好奇心は何も知らない事柄に対して湧き起こる心理であるかのように誤解され、少しだけ知識がある状態が好奇心に与える影響は見過ごされることが多い。実際には、人はまったく知らないことには興味を抱かないものだ。ドイツの哲学者ルードヴィヒ・フォイエルバッハは次のように述べている。「人は自分が知る手だてのあることしか知りたがらない。その限界の外にあるものは何であれ、その人物にとっては存在しないも同然だ。したがって、それが関心や願望の対象になることはあり得ない」。マルセル・プルーストは『失われた時を求めて』の主人公をこんなふうに描写している――スワンは「自分の知らないことを想像し、それを知りたいと願う気持ちを刺激する、ごくわずかな最初のきっかけさえ持ち合わせてい

””何でも知っていると思い込むと無関心になりがち――過信効果  好奇心を抱くには、つまり情報の空白を埋めたいという衝動に駆られるには、その前提として自分の知識に空白があることを自覚しなければならない。ところが困ったことに、人は自分が何でも知っていると思い込んでいることが多い。心理学者はこれを「過信効果」と呼ぶ――私たちはたいてい、自分が車のドライバーとして、親として、あるいはパートナーとして平均以上だと自負している。自分の知識に関する自己評価についてもそうだ。人は自分のもつ情報に空白があるという事実になかなか気づかない。そのため、もっと好奇心をもつべき状況であっても、無関心になりがちなので

””自信過剰と自信不足の力学は大人にも同じように作用する。たとえば、職場について考えてみよう――社員がいつ仕事を失うか不安に怯えながら仕事をしている企業では、好奇心のあふれる風土は望めない。一方で、社員にとってすべてが順調で、気前のよいボーナスが保証されている企業でも、やはり好奇心はしぼんでしまうだろう。好奇心が花開くには絶妙な不確実性が必要だ。不確実性があまりにも大きくなると、好奇心は凍りついて

””好奇心は「知識の感情」であると理解されてきた。情報の空白は必ずしも理性的に認識されるわけではない。その始まりは、搔かずにはいられない痒みのようなものだ。情報の空白はもどかしさを呼ぶが、それは私たちが自ら招き入れる苦痛である(そういう意味で、好奇心には本質的にマゾヒスティックな側面がある)。進化論的にみれば、あらゆる感情の本質的な役割は動機づけだ。怒りの感情は望ましくない状況を変え、間違いを正すきっかけとなる。愛は自分を裏切った相手さえもつなぎとめようとする原動力だ。好奇心を支える感情は、人を知的探究に駆り立てる。たとえ差し迫った必要がなくても、疲れ切り、困惑しているときでさえも。好奇心旺盛な人は、求めている情報や理解を得られるまで感情的に満たされない。だからこそ、空白が埋まるまで本を読み、質問を繰り返すの

””母親との関係に問題がある子どもたちも母親が戻ってくると嬉しそうにするが、探索に戻らないことが多かった。まるで、背を向けたらお母さんがいなくなってしまうのではないかと怯えているようだった。この観察で明らかになったことをスーザン・エンゲルが次のようにまとめている。「不安を感じている子どもたちは、身体的にも精神的にも、情報収集のための探索を行わない傾向が高くなる」。好奇心は愛によって支えられていると言えるだろ

””ストーリーの良し悪しは、ローウェンスタインが言うところの情報の空白をいかに巧みに操るかにかかっている。マッキーはこう表現する。「好奇心とは疑問に答え、空白を埋めたいと思う知的欲求だ。ストーリーはこれとは逆のことをする。つまり疑問を投げかけ、意図的に空白をつくることによって、人間の普遍的な願いに訴えかけるの

””目的のない 探求は「安らかな喜びを与えてくれる精神活動」であり、アテネにおける唯一の娯楽だった。  ローマ人も好奇心に実利を求めない立場を受け継いだ。キケロは好奇心を「利益の誘惑をいっさい伴わない、学問と知識に向けられた根源的な欲求」と定義した。それは脳が求めるというより、心の奥底で感じるものだ。キケロは好奇心を「知ることを求める情熱」と呼び、オデュッセウスがセイレーンに惹かれたのも性的欲望からではなく、セイレーンが彼の果てしない知的好奇心を満たすと約束したからだと説明した(そこまで冷静でいられるのはキケロくらいかもしれないが)。好奇心はまた、肉体的な衝動であるとも論じられた――いわゆる「生理的欲求」から生じる欲求である。このように好奇心は人間のもっとも根源的な欲求と、もっとも高次の欲求を具現したものだっ

””聖アウグスティヌスは『告白』のなかで、好奇心の問題を三つに分類している。第一に、少なくともギリシャ人が考えていたのと同じ意味で、好奇心は無目的である。人は好奇心のせいで「何の役にも立たないことを、ただ知りたいという理由」で探究する。第二に、好奇心は邪である。欲望が肉体を圧倒して人を正しい道から逸脱させるように、好奇心は精神の妨げとなる。聖アウグスティヌス自身も、目の前を通りすぎるトカゲや、クモがハエを捕らえるようすに好奇心を刺激されて祈りに集中できなくなると記している(ツイッターに気をとられずにすんだのは幸運だった)。第三に、好奇心は傲慢である。隠されているものを見たい、知りたいという人間の欲求は、神聖な権威に逆らうことにほかならない。神がその者には提示すべきでないと判断した知識をなぜ追い求める必要がある

””だが好奇心とは、自分がまだ気づいて いない ことを、興味を惹かれて いない ことを知りたいと願う欲求なのだ。それは出会ってみるまで自分に関係があるとさえ思わなかったような世界で

私たちが直面している事態は知的レベルの低下ではなく、認知能力の二極化だ――好奇心を発揮する人と、そうでない人の格差が生まれている。意欲的に知的冒険に踏み出す人々は、過去に例をみないほど多くの機会を得るだろう。他人から投げかけられた疑問に手早く応答するだけで満足する人々は、自ら問いを発する習慣を失うか、そもそもそんな習慣を身につけることもないまま一生を終えるのだろう。作家のケヴィン・ドラムは容赦なく言う。「インターネットは賢い人間をさらに賢くし、間抜けをさらに間抜けに

””好奇心を維持できる人が成果を手にする時代  現在、労働市場は世界的に拡大し、かつては人間にしかできなかった仕事を高度な機械がこなすようになっており、仕事の獲得競争は熾烈さを増している。一方では、インターネットはかつて教育を受けられなかった人々にまで学習の機会を広げている。これはつまり、好奇心旺盛な人々はその報酬を受け、そうでない人々はその罰を受ける傾向が強まることを意味する。好奇心こそが新しいことを学ぶ最大の原動力だから

””二〇一三年に出版した著書『大格差』[池村千秋訳、NTT出版、二〇一四年] について取材を受けたときの言葉を紹介しよう。  情報が簡単に得られる時代には、じっくりと集中して能動的に学ぶことの報酬は大きい……たとえば中国やインドに生まれても、機転を利かせ、志を高くもてば、一〇年、二〇年前には考えられなかったような成果が得られるのです。ところが裕福な国では、怠けているとまでは言わないにしても、意欲的とは言えない人々が増えている。それなりになんとか生きていけると過信しているのです。そういった人々は自分が思っているほど貴重な存在ではなくなりつつあるので、相対的にはすでに収入が下がっているの

””成功が意図的な無知を生むこともある。企業が成長するにつれて難しい疑問を重視しなくなるのは、ビジネスの 慣わしのようだ。うまくいっている(ように見える)現状に、どうして疑問を投げかける必要があるのか。イノベーションに関する古典として知られる『イノベーションのジレンマ』[伊豆原弓訳、翔泳社、増補改訂版、二〇〇一年] のなかで、著者のクレイトン・クリステンセンは一流の頭脳が揃った企業でさえも、どうすればよりよくできるのかと自問することをやめたばかりに失敗するようすを明らかにしている。失敗の理由はほかでもない、顧客の要望に応え、もっとも採算性の高い商品やサービスを提供することに大成功したせいで、市場を牽引するようになった企業は目立たない低価格商品の分野で何が起きているのか見過ごしやすくなるから

””あらゆる企業において――技術革新に常に対応しなければ生き残れない業界ではとくにそうだが――経営トップのみならず、すべての社員が好奇心を研ぎ澄ますような精神的文化を育むことは重要であり、難しい課題でもある。探究心に突き動かされるコミュニティをどうやってつくり、維持すればよいのか。それを実現する公式はない。しかし、国家の興亡に注目してみると、いくつかの手がかりが得られるはず

””新しい知識は、意識のうえでは結びつかないような領域で、多様な課題にいつでも応えられるように準備をととのえている。眠りは長期記憶に対して、パーティーにおけるアルコールのような役割を果たすのだろう。思考を支配する意識が手綱をゆるめ、記憶に蓄えられた事実が自由に対話するようになる――一つの知識が離れた場所にある別の知識と交流を始めるのだ。私たちは、仕事中は具体的な課題に対処するために精神を働かせているので、仕事に集中していない夜の時間に知識が結合し、突破口が開けることが多く

””今後、思想家として成功する可能性がもっとも高いのは、これら二つの生き物を交配した新種になるだろう。競争の激しい高度な情報社会では、一つか二つ大きなことを知っていて、なおかつそれについて同時代の誰よりも深く、詳しく知っていることが欠かせない。ただしその知識を本当に生かすには、さまざまな視点から考え、異なる専門分野の人々と効果的に協力する能力が必要

””私たちが考えなければならない根本的な課題は――人生においてもビジネス活動においても――いかにして、あらゆる物事に意味が与えられるようにミクロとマクロを統合するかだ。人文科学の分野では世界について多くを学ぶことだろう。だが、それを学んだからといって、仕事で本当に役立つ能力が身につくわけではない。反対に工学専攻では、技術的なことについて非常に細かく学ぶ。だが仕事を始めたとき、身につけた技術をなぜ、どうやって、どこで生かすのかということは学ばずじまいになるかもしれない。優れた学生、労働者、思想家は、これらの問題を一つの物語へと集約することに

””世の中のあらゆることに「興味をもつ」ことが得意な人がいるのも事実だ。それは才能であり、もっと厳密に言えば技能である。ヘンリー・ジェイムズは人生によって精神が養われていたというが、その人生は大半の人々の人生と比べてとくに面白かったわけではない――それどころか、ウェルズが暗に指摘しているように、どちらかといえば退屈なものだった。しかし彼は、公園を散歩中に観察したことや、晩餐会で耳にしたうわさなど、面白そうには見えない題材についてじっくりと考え、それを想像力豊かで躍動感のある小説へと変えたので

””夫婦生活の退屈は痴話喧嘩よりも有害  これは夫婦や恋人の関係にもあてはまる。ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の心理学者アーサー・アーロンは、長期的な恋愛関係について研究している。彼はこの分野に関心をもつようになったとき、従来の研究に偏りがあることに気づいた。ほとんどの研究がいさかいに注目していたのだ――男女はなぜ言い争うのか。嫉妬や怒りや不安についてはいくらでも研究があった。ところがもっと地味で、もっとありふれた問題は見過ごされていた――男女は退屈するとどうなる

””アーロンと仲間の研究者たちは、夫婦について長期間にわたる研究を行った。調査対象はミシガン州の一〇〇組以上の夫婦で、年に一度それぞれの自宅を訪れて夫婦別々に話を聞いた。アーロンは結婚六年目と七年目に差しかかった夫婦から、三つの質問に関してデータを集めている。まずは「この一カ月で結婚生活がマンネリ化している(もしくはしかけている)とどのくらいの頻度で感じましたか」という質問。次に「全体的にみて、結婚生活にどのくらい満足していますか」という質問。そして最後に、親密さの度合いを視覚的に測るため、二つの円がさまざまな割合で重なり合っている図を見せ、「あなたの結婚生活をもっともよく表している図」はどれかと訊い

””自己中心の考えから逃れる  それでも、好奇心に伴うコストには値打ちがある。二〇〇五年のケニヨン大学の卒業式でスピーチをした小説家のデイヴィッド・フォスター・ウォレスは、幸せで充実した人生を送るには好奇心を働かせることが欠かせないと訴えている。彼はその根拠として、人は根本的に救いようがないほど自己中心的であることを指摘している。  考えてほしい。きみたちが経験してきたことはすべて、きみたちがまちがいなく中心にいるはずだ。きみたちが経験している世界は きみたち の前に、うしろに、左右にあり、 きみたち のテレビや、 きみたち のモニターのなかにある。他人の考えや感情も何とかして受け入れなければいけないが、きみたち自身の考えや感情はとても直接的で切迫していて、生々しいもの

””私たちが生まれながらにして抱えている自分自身への執着から自由になるには、他人について好奇心を働かせるしかない、とウォレスは述べる。それが道徳にかなったことだからというだけでなく、そうすることが日常生活の「退屈や日々の雑事、ささいな不満」に対処する最良の方法だからだ。彼はスーパーのレジの長い列に並んでいるときや、一日の終わりに交通渋滞に巻き込まれたときの例を挙げている。疲れてお腹もすいているとなれば、周囲に苛立ちを覚えて自分だけの苦痛を嘆くこともあるだろう。だが「自分には選択肢があるのだと心得ていれば」、自分が置かれた状況をちがった角度で見ることができる。たとえば、レジを待つ列で子どもに金切り声を上げている女性を見たら、病気の夫を何日も看病しているのかもしれないと想像する。あるいは、ほかの車が割り込んできたら、子どもを病院に連れていくところかもしれないと想像

””ウォレスはこれこそが教育の目的であり、「生涯にわたって取り組むべきこと」だと考えている。教育を受けるということは、考えかたを学び、それによってもともとそなわっている自己中心的な発想から逃れることでもある。これは分別のある正しい意見だと思う。しかしウォレスがこの能力について「知識はほとんど関係ない」と述べている点については賛成できない。それは知識と切り離すことのできない能力だ。そもそも、共感的好奇心は知的好奇心がなければ成り立たない。スーパーのレジに並ぶ女性の立場になって考えるには、自分の人生とはかけはなれた人生がどんなものなのかある程度知識がなくてはならない。また、これまで述べたとおり、…

””絶望の淵から――好奇心の喪失  作家のジェフ・ダイヤーは自分が患った鬱病のことを、「あらゆることに対して一切の興味を抱かなくなる状態」と表現している。彼は著書『ひどい怒りを逃れて( Out of Sheer Rage)』のなかで、絶えず読書をして世界各地を旅し、世の中に飽くことのない関心を抱いていた自分が鬱病にかかり、したいことも、見たいものも、読みたいものも何一つ思いつかなくなったようすを記している。「私はあらゆることについて興味を失い、好奇心をなくしていた」。彼はアパートに閉じこもり、テレビを見続けていた。しかもそのテレビは消えたままだったと

””自殺を考えているというファンから痛ましいほど正直な質問を受けた。「この世界には美しいものや素晴らしいものがあることはわかっています……でも興味をなくしたらどうすればいいのでしょう」。フラクションの回答は全文を読む価値があるが(巻末の補足にURLを記しておく)、そのなかでも、彼がかつて自殺寸前まで追い詰められたとき、どうやって切り抜けたか振り返っている箇所を紹介しよう。 それで考えた――そうだ、何か興味をもてることはないか? 先がどうなるのか見届けたいことはないか。そしたらそのとき読んでいたコミックがあって、結末がどうなるのかまだ知らないじゃないか、と思った。それで自分にはまだ好奇心があると気づいた。それは帽子を掛けるフックのようなものだ。まだ何か心に引っかかるものがあると思うのは、本当にこの世を去るべきときがきているわけじゃないんだ。どこまでも不毛な地面から顔をのぞかせた小さな芽が、僕にもう少しこの世にいようって気持ちを与えてくれたん

””世の中には注意を向けるに値するものが何もないと感じること(あるいは、注意を向けることのすべてが無意味だと感じること)が鬱状態だとすれば、反対の方向へと導いてくれるのが好奇心だ。好奇心とは生きる力だ。世界はどこまでも面白く、尽きることのない刺激と魅力にあふれていることを思い出させてくれる。この感覚はT・H・ホワイトの『永遠の王』[森下弓子訳、東京創元社、一九九二年] の一節によって見事に表現されている。 「悲しいときにいちばんいいのは」とマーリンは息を切らしながら答えた。「学ぶことだ。それが唯一、いつまでも役に立つものだ。年老いて体が震えるようになったとき。夜眠れずに横たわり、脈の乱れに耳を傾けるとき。失ったたった一つの愛を寂しく思い出すとき。周りの世界が正気を失った邪な者たちによって荒らされるのを目の当たりにするとき。自分の名誉が卑劣な者たちのどぶのような心のなかで踏みにじられることを知ったとき。そんなとき役に立つのはたった一つ――学ぶことだ。世界がどうして動き、何が世界を動かしているのか学ぶことだ。それが唯一、精神が飽くことも知らなければ遠ざけることもできず、それによって苦しめられることも、恐れることも、不信感を抱くことも、ほんのわずかな後悔さえ抱くことのないものだからだ。とにかく学ぶことだ。学ぶべきことがどんなにたくさんあること

””好奇心は意識的に養っていくべきものであり、子どもの学力を伸ばすにも、職業上の成功を手にするためにも欠かせない。しかし著者はさらに、好奇心にはそういった実利的な面だけでなく、人間に深い喜びを与えてくれる力があることを気づかせてくれる。 「世界はとてつもなく 面白い ってことに急に気づいた。興味をもって眺めれば、この世のあらゆるものが――地球の重力、鳩の頭の形、雑草の葉さえも――じつに驚くべきものに見えてくる」。これは先ほど触れた著名なプロデューサーの言葉だ。殻に閉じこもっていた彼は知的好奇心を深めることで再び成功を手にしただけでなく、かつて経験したことのない生きる喜びを感じることができた。この言葉は、人間が持つ知的好奇心の美しさを物語っているようで心打たれる。自分にとって直接的な利害関係のない事柄を知りたいと切望し、それを知って心が満たされる感覚は人間にしかない特権と言えるだろう。  喜ばしいことに、知的好奇心は何歳になっても深めることが

THE HEART OF BUSINESS(ハート・オブ・ビジネス)――「人とパーパス」を本気で大切にする新時代のリーダーシップ

多種多様な運と縁、関係者の方々の支援と応援、パートナー1人ひとりの創意工夫のおかげで、サンクスラボグループは成長を続けている。そして、今現在の僕自身の思考、時間、エネルギーの大半は、より良い会社にすることにある。

多くの経営者は、きっと何度も考えてきただろうし、今も考えているのではないかと思うのですが、「良い会社」とは何か?と。

結論は、その人間の生き様であり、哲学であり、他人が規定することではないのだとは思う。もちろん、その時代、文化、環境によって、一般論で語られる定義は存在するだろうけれど。

という前置きをしながら、自分自身が、心の底から成し遂げたいと、濃ゆく欲望している「良い会社」のイメージの1つが、本書で紹介されているような「THE HEART OF BUSINESS」のコンセプトを体現し続けている企業なんじゃないかと、ビビっと来たのでした。

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Generative AIによる以下一部抜粋を受けた書評

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仕事と企業のパーパスについて

Introduction

仕事とは何だろうか?そして企業の存在意義とは何か?これらは私たちが日々直面する問題であり、答えが見つけられないことも多い。しかし、ベスト・バイの元CEOであるハバード・アラン氏は、自身の経験から、この問題に対する解決策を提供している。この記事では、アラン氏の考え方に基づき、仕事と企業のパーパスについて考えていく。

仕事と生きる意味の探求

仕事とは「人間らしく生きるのに欠かせないもの」「自分の生きる意味を探すための鍵」「人生に充実感を見いだす手段」だと考えることが大切です。人生とは快楽や権力を追い求める旅ではなく、意味の探求だということも重要です。人間が意味を見つけられる場所は仕事、愛、勇気のなかにあるとされています。仕事を通して意味のあることを為すという行為には、他者への思いやりや逆境を乗り越えることなども含まれています。

自分自身のパーパスと仕事観を見つけよう

仕事とは、自分自身の生きる意味を探すための鍵であり、人生に充実感を見いだす手段です。自分自身のパーパスを見つけ、仕事を通じて実現することで、他者への思いやりや逆境を乗り越えることなども含まれます。ピュー研究所の調査によれば、若者たちは大人になって極めて重要なこととして、楽しめる仕事やキャリアを持つことを挙げています。このような仕事観を持つことで、自分自身と組織のパーパスを実現し、充実した人生を送ることができます。

人とつながり

アラン氏は、従業員とのつながりが重要であると考えている。従業員に対して関心を持ち、彼らの成長をサポートすることで、従業員たちは自分自身と組織のパーパスを実現する手助けをするという信頼関係が生まれる。このような信頼関係が組織に流れる情熱を高め、従業員の自己実現と組織のパーパスが実現することができる。リーダーは自身のパーパスを理解するだけでなく、従業員たちが何に突き動かされているかを知ることが重要である。

不完全さとつながり

アラン氏は、弱さを受け入れ、失敗から学び、自分自身と比べた最高の自分を目指すことが、リーダーとしての力を発揮するための鍵であると考えている。弱さを見せることなく真のつながりはありえないことを教えてくれる。また、問題の存在を認めることが弱さとみなされる企業文化は、低パフォーマンスのひとつの要因となる。アラン氏は、赤字を垂れ流している企業にとっては、利益への「強迫観念」に屈することが必要であるとする一方で、利益の追求が目的である企業文化は、従業員たちの心を動かすことはできないと考えている。

人、ビジネス、財務

アラン氏によれば、企業には人、ビジネス、財務という3つの要素があり、これらは相互につながっている。従業員が充実していると、顧客が忠実になり、企業は金を稼ぐことができる。従業員とのつながりを大切にし、弱さを受け入れることで、企業は真のパーパスを見つけ、未来を形作っていくことができる。

Conclusion

ハバード・アラン氏の考え方は、リーダーシップのあり方や企業のパーパスについて考える上で、非常に参考になるものである。従業員とのつながりや不完全さを受け入れることが、組織の成長と従業員たちの自己実現につながることを示している。また、企業には人、ビジネス、財務という相互につながった要素があり、真のパーパスを見つけることが企業の未来を形作るための重要な鍵であることが分かった。私たちも、アラン氏の考え方を参考に、自身のリーダーシップや企業のパーパスについて考えていくことが大切である。

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一部抜粋

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””だが続けていると、この人は自分の話を聞いてくれる、同じ目線で同じ景色を見てくれている、聞くだけでなく実践してくれる、という信頼が生まれる。やがて従業員たちの情熱のマグマが解き放たれ、その人自身のパーパスと組織のパーパスが花開く感動的なシーンを何度も見てき””

””会社のパーパス(存在意義) は「お金を稼ぐこと」ではないことも。それはミルトン・フリードマンが私たちに説いてきたこととは正反対の考えだ。少数の頭のいい幹部が戦略と実行計画を立て、それを他の従業員たちに指示し、インセンティブを使って意欲をかきたてる──そんな古いトップダウン型の経営手法は、ほとんど機能しないことも学んだ。そして、賢くて力強いスーパーヒーローとしてのリーダー像は時代遅れであること””

””今でも思い出すのは、病院のベッドで横になりながら、いつか自分も人をマネジメントする立場になると考えていたことだ。そしてそのときが来たら、今回のような仕事が人をどんな気分にするか忘れないでいようと誓った。 虚しさと疎外感。会社や業績への無関心。やりがいのない、心が 麻痺 するような作業。仕事から離れられるからといってゴミ捨てに余分な時間をかけたり、フォークリフトに轢かれて喜んだりするほどに低下した労働意欲。だから、自分がマネジメントをすることになったら、現場で働く人たちが同じような思いをしないよう全力を尽くそうと誓っ””

””誰もが、私と同じような仕事観を持つことは可能なはずだ。仕事とは「人間らしく生きるのに欠かせないもの」「自分の生きる意味を探すための鍵」「人生に充実感を見いだす手段」だ。詩人のカリール・ジブランは仕事を 謳った詩のなかで、仕事とは愛を目に見える形にしたものだと雄弁に語った( 1)。私もそう信じて””

””人生とは快楽や権力を追い求める旅ではない、と彼は結論づけている。人生とは意味の探求だ。それが究極的には充実感や幸福への道になる。彼によれば、人間が意味を見つけられる場所は3つある。仕事、愛、勇気のなかだ。実際には、それらはひとつにまとまっていることも多い。仕事を通して意味のあることを為すという行為には、他者への思いやりや、逆境を乗り越えることなども含まれて””

””生きる意味の探求という仕事観は世代を超えたものでもある。ピュー研究所の調査によると、「大人になって極めて/とても重要なことは何か」という問いに対し、 10 代の若者の 95 パーセントが「楽しめる仕事やキャリアを持つこと」と回答した。これは、「困っている人を助けること」「大金を稼ぐこと」「子どもを持つこと」などを含め、他のどんな回答よりも上位だった( 9)。ギャラップ社の調査でも、ミレニアル世代は仕事に目的を見いだすことを強く重視していることが分かって””

””だからこそベスト・バイの従業員たちは、この問いについて考えることが推奨されている。「何があなたを突き動かしているか」という問いは、クリスマスから年末にかけてのホリデーシーズンに向けて2000人ほどのマネジャーが集まる「ベスト・バイ・ホリデー・リーダーシップ・ミーティング」の中心的な要素だ。そこで聞く回答は、どれもシンプルで人間味があり、いつも感銘を受けている。マネジャーたちは、友人、家族、仕事仲間に言及することが””

””ベスト・バイの全従業員に「自分を突き動かすものは何か」を考えるよう後押しすることは、些細で漠然としたステップに見えるかもしれない。しかしこの問いかけは、仕事への向き合い方を変えるにあたって、本当に中心的な役割を果たしてきた。  リーダーにとって、自分のパーパスを理解するだけではなく、周りの人が何に突き動かされているかを知ることも同じくらい重要だ。また、その原動力と会社のパーパスがどう結びつくかを理解することも重要だが、この点については別章で””

””その日は、「オール・イン(全力を注ぐ)」という概念について学んでいた。全力を注ぐには、メンバーたちがどんな人間であり、どんな人間になりたいかを理解する必要がある。だから、チームメンバーを突き動かしているものや、それが各自の人生や歴史とどうつながっているかを知りたいと思った。メンバーたちはどんな道をたどってきたのだろう? どうしてベスト・バイでの仕事に心を躍らせているのだろう? 個人的なパーパスと仕事でやっていることは、どのようにつながっているのだろう? こうした問いに答えられないようでは、チームを率いることはできないと感じたの””

””彼女は不完全さがもたらすものの一つとして、勇気や思いやりと並ベて「つながり」を挙げている( 3)。そして彼女は、つながりを阻んでいるのは「恥」、つまり自分のことを知った人間からつながりを持つに値しないと思われるのではないかという「不安」であることを発見した。反対に、愛や、つながりや、帰属意識を強く感じている人は、不完全である勇気を持ち、自分の弱さを受け入れていた( 4)。こうしたことはどれも、弱さを見せること抜きに真のつながりはありえないこと、そして弱さは不完全さと切り離せないことを教えてくれ””

””問題の存在を認めることが弱さとみなされる企業文化も、低パフォーマンスのひとつの要因だった。アランは毎週木曜日に業務の進捗を点検するビジネスプラン・レビュー会議で、重要分野のパフォーマンス報告を「信号灯」式の色分けでおこなった。毎週、幹部メンバー全員が担当プロジェクトの進捗を色分けして報告するのだ。すべてが順調なら「緑」、軌道からは外れているものの元に戻す計画がある場合は「黄色」、パフォーマンスが軌道から外れていて元に戻せる計画がない場合は「赤」といった具合だ。  アランによれば、最初の数週間はすべての報告が緑だったという。会社は莫大な損失に直面しているのに、報告されたチャートのうえではすべてが計画通り順調ということになっている。 「いいですか、我々は何十億ドルもの損失を出しているんです」とアランは言った。 「それなのに、うまくいってないことが ひとつもない と言うのです””

””誰であっても、自分の弱さを受け入れ、失敗から学び、 周りと比べた ベストではなく 自分のなかでの ベストを目指すことで、最良の力を発揮して仕事をするリーダーになることができる。なぜなら、そういう不完全さがあってこそ人は本当の意味で他者と深くつながっていけるから””

””ベスト・バイの従業員たちに「何があなたを突き動かしているか」と尋ねても、「株主価値」と答える人は誰もいない。株主価値は、人が朝ベッドから飛び起きたくなるような動機ではないのだ。もっと仕事に力を注いでほしければ、従業員の心を占めているものが株価ではないことを認識する必要がある。繰り返すが、仕事は退屈な作業や苦しみである必要はない。仕事とは、生きる意味の探求である。利益の最大化はこの探求の答えにはならないため、第1部で言及したような仕事へのエンゲージメントの低下を解決することはできない。利益は、ベスト・バイのような企業を救うために従業員が全力を尽くす動機にはならないの””

””とりわけ利益を重視するのが望ましい状況もある。たとえば赤字を垂れ流して死の危機が迫っている場合、まず優先すべきは止血だ。自分の事業が稼いでいる手段や理由を把握しておくのも健全なことだろう。  しかし、より健全なのは利益への「強迫観念」に屈しないことだ。真に意識すべきは、「利益は不可欠ではあるものの、それは結果として得られるものであり、それ自体が目的ではない」という点””

””利益の追求が目的でないなら、何が企業のパーパスなのかと疑問に思うことだろう。この問いに適切な答えを出せれば、資本主義を作り直し、ビジネスを内側から変革し、私たち全員に関わる未来を形作っていくことができる。それは、テーブルを囲んで語られた私の子どもたちの──そしておそらく、あなたの子どもを含めた何百万人もの──願いや懸念に答えることにもなるはずだ。””

””彼によると、企業には決定的に重要な3つの要素があるという。  人、ビジネス、財務だ。  これらの要素は 相互につながっている。1つめの要素「人」が優れ、従業員の育成や充実度が高水準だと、2つめの要素「ビジネス」において、顧客が忠実に繰り返し製品やサービスを購入してくれるという好結果につながる。それにより、3つめの「財務」、つまり金を稼ぐことにおいても優れた企業でいられる。因果関係は次のような方向でつながっていく。 人→ビジネス→財務の順番””

””利益は、最初の2つの要素の結果として生まれるというわけだ。この3つのあいだにトレードオフの関係はなく、優れた企業は3つが同時に高い水準にあるという。  だが、この3つと企業の「パーパス」を混同してはならない、と彼は言う。彼の見解によれば、企業のパーパスとは、従業員を育てて充実感を持たせ、その周囲の人々にも目を向けていくものなのだ。  デスカーペントリーズには周りを巻き込んでいくエネルギーがあり、彼のアイデアは私の心の深い部分に触れた。私は経営コンサルタントとして、「どんな製品やサービスを提供するか」「競争力を持つにはどこにどう位置取るべきか」といった企業の戦略にどれほどの労力が注がれているかは理解していた。しかし、情熱をかき立てる「パーパス」を明確な言葉にすることについては、ほとんど考えもしていなかった。だが、彼の考え方は 腑 に落ちた。このときついに、私は心をかき立てるものに出会ったの””

””企業の存在意義も同じように、「世界が必要としているのは何か」「チームとして情熱を傾けているものは何か」「自分たちの会社が得意なことは何か」「 そのうえで、自分たちが稼げるものは何か」の4つを考えることで見いだせる。ベスト・バイでは新規事業を検討するにあたり、この考え方をヒントに作った次の4つの問いを活用している。 その事業は会社のパーパスに沿っているか? 顧客にとって良いものか? 実現可能か? そのうえで、利益をもたらす””

””ノーブル・パーパスは「パーパスフルな人間らしい組織」という枠組みの頂点に位置する。そして中央に位置するのは従業員だ。なぜならビジネスの 秘訣 は、最高のメンバーが顧客にとって最高の仕事をすることにより、最高の結果につなげることだからである。経済理論で説かれてきたように従業員や労働をただの投入物として考えるなんてことはできないし、そのように考えるべきでもない。誰も投入物などにはなりたくない。「最高の仕事」は、自分が活躍できる職場環境において、「人的資本」ではなくひとりの人間として扱われていると感じるところから始まるのだ。  私が提唱する概念図では、従業員こそハート・オブ・ビジネスと見なし、中心に据えている。従業員は社内の仲間のみならず会社のすべてのステークホルダー──顧客、取引先、地域のコミュニティ、株主──と思いやりに満ちた本物の関係を築き育んでいくことで、会社のパーパスに貢献するだけでなく、各ステークホルダーに最高の結果を届ける存在で””

””「顧客にとって最高の仕事」は、こうした従業員が顧客を歩く財布と見るのではなく、人間として心を通わせるときに生まれる。また、CEOから現場のスタッフまで、従業員たちが顧客のニーズやそれを満たすための最適なサポートを心から理解し、配慮することで生じる。このような形で顧客に喜んでもらうことで、顧客と強い心のつながりを築いた愛されるブランドが作られ、愛着や信頼を呼ぶ。  顧客にとって最高の仕事をし、最高の結果を生むために、従業員は「パートナーとしての取引先」とつながり、協力関係を築いていく必要もある。利益率を上げるために取引先を圧迫するのではなく、双方に利益がある形でつながって協力関係を築き、 そのうえで 顧客に奉仕するのだ。  それから、ビジネスが成功するには活発な「地域…~””

””何年も前にマッキンゼーに勤めていたころ、招待した夕食の席でフランス人のCEOジャン=マリー・デスカーペントリーズから、二者択一の問いの 98 パーセントは「どちらも(and)」と答えたほうがいいと教わった。  この言葉も、当時私が慣れ親しんでいた考え方から抜け出すきっかけとなった。二者択一の世界観からの脱却だ。注力すべきはコストか、 それとも 収益か。コストか、 それとも 品質か。大切にするべきは顧客か、 それとも 従業員か、 それとも 株主か。取引先とは提携するべきか、 それとも 競合するべきか。環境やコミュニティに配慮するべきか、 それとも 利益を重視するべきか。大事にすべきは長期視点か、 それとも 短期視点か。  今の私は、デスカーペントリーズと同じように、こうした二者択一の問いは人為的なトレードオフだと考えている。ベスト・バイはどのステークホルダーを重視するか取捨選択するのではなく、すべてのステークホルダーを大切にしながら協働することで業績を最大化している。私たちは、従業員 も、顧客 も、株主 も、地域コミュニティ も 重視しているの””

””「テクノロジーを通して暮らしを豊かにするには、まず人から──従業員たちから始めるべきです」  私たちの最高の姿はどのようなものだろう? ベスト・バイが人間だとしたら、どのように行動するだろう? この問いの答えを探るため、会社のことをよく知るリーダーたちと何度かワークショップをおこなった。それを経て、ひとつの考えにたどり着いた。ベスト・バイとは、「背中を押す友人」のような存在なのだ。顧客が自分のやりたいことを理解したり、テクノロジーの活用方法を想像できるよう販売員たちがサポートしていく。  そんな考えをもとに、「背中を押す友人」──ベスト・バイの全従業員になってほしい人物像──ならどのような行動をとるかを定義していった。そうして決まった行動指針のひとつが「人間らしく」だっ””

””すべての人を顧客のように、そして切実なニーズを持った人間として扱う。なんという革命だろう!  ビジネスはゼロサムゲームだという世界観を捨てれば、「どちらか(either/or)」ではなく「どちらも(and)」という視点が持つ力は無限大になる。ビジネスは善を為すことと成功すること、どちらも可能なの””

””パーパスと人を重視したモデルへの移行には、主だった経営慣行の変更が必要になる。ベスト・バイでは、ジャン=マリー・デスカーペントリーズの言う「人」→「ビジネス」→「財務」のアプローチを反映した慣行作りをおこなった。  それはつまり、時間の使い方と周りとの接し方をリセットすることを意味する。たとえば、ベスト・バイのCEOだったころ、私は新しい慣行として毎月のビジネスレビューのやり方を変えた。まず最初に従業員についての話し合いから始め、次に顧客、それから財務の話をするようにしたのだ。一般的ではない形だが、優先順位がはっきりと感じられる方法である。取締役会に最新情報を伝える際にも、同じ順序でおこなうようにした。会社の存続がかかっている再建の最中でさえも、財務ではなく人やビジネスの立て直しを考えることに多くの時間を割い””

””ベスト・バイは、評価指標を変えることによっても経営慣行を変革した。重要業績評価指標(KPI) として設定されるのは、利益や順位だけとは限らない。従業員アンケート、顧客体験を評価するネット・プロモーター・スコア、そしてカーボンフットプリントやダイバーシティの達成度など、あらゆるステークホルダーから見た評価指標も、長い時間をかけて大きく増やしてきた。環境への影響などを考慮した会計基準も開発されている。さらには、会社の慣行にどれほどパーパスが組み込まれているかを測定するツールも現れ始めている( 6)。  こうした指標は完璧なものではない。しかし、完璧な指標など存在しないのだから、「評価指標が不完全で行動できない」という言い訳は通用しない。そのような言い訳をする人を見ると、夜道で鍵をなくした男の話を思い出す。彼は街灯が照らしている範囲を一生懸命探している。「本当にそこでなくしたの?」と友人に聞かれると、彼はこう答える。 「違うよ。でもここしか明かりがなく””

””私たちは他者とのつながり抜きには存在できない。実際に、ブルー・ゾーン(日本の沖縄やイタリアのサルデーニャなど世界の5地域) の人たちがより長く、より良く生きている要因のひとつは「人とのつながり」だと特定している研究もある( 1)。この文脈でいう人とのつながりは、帰属意識や、家族(両親・パートナー・子どもなど) を第一にすること、そして協力的な社会サークルなどを指す。たとえば沖縄の人たちは「 模 合」という生涯にわたる親密な友人グループを形成して””

””経営は「集団」を率いるものだと考えるべきではない。  調査のために集めた従業員グループのなかで、「一人の個人」として扱われているときに生まれる違いについて、若い販売員が自分の体験を語ってくれた。彼は 18 歳のときに採用されたが、内気で自信がなかったという。ベスト・バイでの大切な経験について尋ねると、彼はすぐに地区を統括するマネジャーが自分の店舗を訪れたときのことを挙げた。面接のときに会っただけの地区マネジャーは彼に気づき、名前を覚えていたのだ。その1つの小さなつながりが忘れられない印象を残していた。この若い販売員はブルー・シャツであるだけではなかった。周りから知られ、大切にされる一個人だったの””

””あなたへの質問 10  職場に友人はいるだろうか。  あなたは職場でかけがえのない個人として扱われていると感じるだろうか。周りがそう感じられるように、どんなことをしているだろうか。  あなたはチームを信頼できると感じるだろうか。信頼できる/できないのはなぜだろうか。  職場でどれくらい安心して自分の弱さを見せられるだろうか。周りの人が弱さを見せるとき、あなたはどんな気持ちになるだろう。それはなぜだろうか。  異なるチームメンバーに対して、あなたは相手のコミュニケーションスタイルや好みに応じた接し方を選んでいるだろうか。  あなたはどのようにして職場のダイバーシティ&インクルージョンを推進しているだろうか。ほかに何ができるだろう””

””個人のパーパスと会社のパーパスをつなげ、人と人との真のつながりを育み、自律性を後押しし、マスタリーを促す──これらはすべて、誰もが自分の全力を捧げたくなる環境作りに寄与するものだ。そうした環境こそが、適切な戦略のもとで並外れた結果を””

””①自分と周囲の人々のパーパスを理解し、それらと企業のパーパスの結びつきを明確にする  かつて私は、リーダー採用の候補者に対して、それまで培ってきた経験やスキル、キャリアにおける目標、この組織に自分が適した人材だと思うかといった質問をしてきた。一般的な内容だろう。こうした内容が最も重要な検討材料だと感じていたのだ。  しかし現在は、候補者の夢やパーパスを理解することに多くの時間を費やしている。「あなたにエネルギーを与えるものは何でしょう?」「何があなたを突き動かしていますか?」と尋ねるの””

””それはつまり、周りのメンバーたちが可能性や潜在力に気づく手助けをするということだ。エネルギー、士気、希望を生み出す──そんな考えは 30 年前の私だったら否定していただろうが、パーパスフル・リーダーには不可欠なことだ。ジョン・クィンシー・アダムズが言ったとされる言葉を借りて、次のように言い換えられるだろう。 「あなたの行動によって、周りがもっと夢を見て、もっと学び、もっと行動し、もっと良い自分になりたいとかり立てられるなら、あなたはリーダーだ」  状況を選ぶことはできないが、自分のマインドセットを調節することはできる。そのマインドセット次第で、あなたが周囲に希望や士気やエネルギーをもたらすか、全員の気分を沈ませるかが決まる。だからこそ、正しい選択をしよ””

””人生で最も長い旅は頭と心のあいだの 18 インチだと教えられてきた。それは本当に長く、苦しい道のりだ。私の世代のリーダーの多くと同じように、私も長らくビジネスにおいて感情は伝えるべきでないと信じてき””

””①世界が必要としていること  ②自分の会社にできること  ③従業員たちが突き動かされるもの、情熱を注げるもの、追求しているもの  ④稼ぐことができるもの  チームと力を合わせ、そのノーブル・パーパスを具体的な戦略に落とし込み、会社を意義ある形で前進させよう。これは広報に乗り出す前におこなおう。マーケティングの専門家であるロン・タイトが言うように「考え、実行し、発言する」の順であるべきだ。そして社内に伝えるときがきたら、すべての従業員がノーブル・パーパスの具体的な意味や自分がどう関わっていけるのかを理解できるように、実用的で分かりやすい言葉で表現しよ””

””取締役会へ  あなたはどれくらい次の原則に沿った形で責任を果たしているか自問してみよう。 会社がリーダーを選び、評価し、報酬を与え、育成し、昇進させる方法は、パーパスフルで人間らしいリーダーシップの原則をどの程度反映しているだろう? 会社の戦略は、すべてのステークホルダーとの関係においてどれくらい有意義な形でノーブル・パーパスとつながっているだろう? 会社の目標設定やパフォーマンス管理の方法は、どの程度パーパスフルで人間らしいリーダーシップの原則を反映しているだろう? 取締役会は企業文化の形成をどれくらいサポートしているだろう? 誰もが自分の居場所だと感じられ、会社の顧客や地域コミュニティの多様性を反映した環境を作る責任を、どれくらい経営陣に課しているだろう? 会社の規則、リスクマネジメント、コンプライアンスのプログラムは、どの程度パーパスやパーパスフルで人間らしいリーダーシップの原則に沿っているだろ””

””従業員たちは「人材」ではなく、共通のパーパスを追って協働する個人として扱われなければならない。従業員はそれぞれのモチベーションや目的意識を持った個人であり、お金だけに動かされる人的資本ではない。今こそ、集団的な労働力を動かす方法ではなく、一人ひとりが大切にしているものとの結びつきを生むことによって意欲を高める方法を追求するときだ。ヒューマン・マジックを解き放つとは、 一人ひとりが 生き生きと働ける環境作りを意味する。自分にとって大切なことや自分が信じるものに取り組んでいるときにこそ、人は障害を乗り越え、エネルギーや創造性や感情を仕事に注ぎ込むの””

ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣~幸福は追求できないものであり、結果として起こるのみだ、と語っ た。願望は追究できる。そして、喜びが行動の結果として起こる。~

「愛と希望、Love and Hope」という概念が好きだ。家族を、会社を、チームを、自分を、社会を、地球を愛しているという、愛されているという実感を感じながら、未来に希望を持ち続けることが出来る人生を歩み続けていたい。

僕は、若者のように騙されやすい自分で在りたい、すぐに希望を持つから。僕は、若者のように騙されやすい自分で在りたい、希望を持って生きていきたいから。

””希望は経験とともに小さくなり、受容に置きかわる。 最初に機会が訪れたとき、こうなるだろうという希望がある。期待(欲求)は、 明るい見通し にのみ基づいている。二回目では、期待は現実に根ざしている。プロセスがどのように働くか理解しはじめ、希望はしだいに、正しい予想とあり得る結果の受容へと置きかわっていく。これが、最新の一攫千金の技や減量法に絶えず手を出してしまう理由である。新しいプランは希望をもたらしてくれる。期待の基になる経験がないからだ。新しい戦略は無限に希望を持てるので、古いものより魅力的である。アリストテレスが記したように、「若者はだまされやすい。すぐに希望を持つから だ」。おそらく、こう変えたほうがいいだろう。「若者はだまされやすい。希望しか持たないからだ」。期待の基になる経験がないためである。はじめのうちは、あなたにあるのは希望だけなのだ。””

幸福は追求するものではなく、結果として起こる。他方で、願望は追究できる。そして、その過程、状況を変えたいと望み、それを得るまでの過程に、思い通りにいかない苦悩を味わいながらも、同時に、喜びが行動の結果として起こる。思い返してみると、苦しみと、喜びが、シーソーのように、交互に込み上げてくる人生を過ごしてきたような気がする。

””幸福とは要するに、願望がない状態である。 きっかけを見ても、自分の状態を変えたいと思わないなら、今の状態に満足しているということだ。幸福とは喜び(楽しみや満足)の達成ではなく、願望がないことである。それは、ちがうふうに感じたいという衝動がまったくないときに訪れる。幸福とは、自分の状況をもう変えたくないときに感じる状態のことだ。  でも、幸福はいつしか消え去る。新しい願望がつねに現れるからだ。キャド・バドリスが言うように「幸福とは、ひとつの願望が満たされたときから、新しい願望が生まれるまでの期間である」。同じように、苦しみとは、状況を変えたいと望むときから、それを得るまでの期間だ。   わたしたちが追い求めているのは喜びという 考え である。 わたしたちは心のなかで作り出した喜びのイメージを求めている。行動するときは、そのイメージを得たらどうなるのかわからない(満足できるのかさえわからない)。満足感はあとからやってくる。オーストリアの神経科医ビクトール・フランクルはこれについて、幸福は追求できないものであり、結果として起こるのみだ、と語っ た。願望は追究できる。そして、喜びが行動の結果として起こる。””

けれど、今まで以上に、目標達成そのものではなく、その歩みそのものを、すなわち、仕組みそのものを創ることを楽しもうと思う。仕組みを創る目的はゲームをしつづけること。本当に長続きする考え方は、目標を抜きにし、達成を目的にするのではなく、終わりのない改善と継続的な向上のサイクルについて、もっともっと掘り下げていくことに向き合っていこうと思う。

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Generative AIによる以下一部抜粋を受けた書評

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習慣がもたらす成果について

習慣の影響

結果とは、習慣の影響をあとから測る遅行指数のようなものです。私たちが持つ財産や体重、知識、がらくたは、それぞれの習慣の遅行指数です。これらの遅行指数は、自分が繰り返した行動を手にすることになるため、日々の選択が10年後や20年後にどんな成果をもたらすか見ることができます。例えば、毎月の収入よりも支出の方が少ないか、毎週ジムに行くようにしているか、毎日本を読んだり新しいことを学んだりしているかなど、小さな選択や努力が未来を決めるのです。

失望の谷

習慣を身につけるプロセスは、初期や中期の段階には「失望の谷」がよくあるものです。直線的な進歩を期待している人は、最初の数日間、数週間、そして数カ月でさえあまり変化が見られないことにがっかりすることがあります。しかし、これはあらゆる形成過程の特徴であり、もっとも強力な成果は遅れて表れるものです。つまり、習慣も決定的な境界を超えて新しいレベルの成果を引き出すまで、なんの違いももたらしていないように見えることが多いのです。

潜在能力のプラトー

良い習慣を身につけることや、悪い習慣を断つことに苦労している人は、進歩する能力がないからではなく、たいていは「潜在能力のプラトー」をまだ超えていないせいだと言えます。懸命に努力しているのに成果が出ないと愚痴をこぼしている人は、温度をマイナス三度からマイナス〇・五度に上げて角氷が解けないと文句を言っているようなものです。努力は無駄にはなっていないのです。すべての変化は摂氏〇度で起こるものであり、強い意志力や継続的な努力を通じて、潜在能力のプラトーを超えることができます。

結論

習慣は私たちの人生に大きな影響を与えます。習慣を身につけるプロセスには「失望の谷」があるものの、継続的な努力によって潜在能力のプラトーを超えることができます。小さな選択や努力が未来を決めるため、自分が望む未来に向けて、今日から習慣を変えることが大切です。

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一部抜粋

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””結果とは、習慣の影響をあとから測る遅行指数のようなものだ。財産は、金銭習慣の遅行指数。体重は、食習慣の遅行指数。知識は、学習習慣の遅行指数。がらくたは、掃除の習慣の遅行指数。自分が繰りかえしたものを手にすることになる。  自分の人生がどこへ行きつくのか予想したいなら、小さな利益、または小さな損失の曲線をたどって、日々の選択が一〇年後や二〇年後にどんな成果をもたらすか見るだけでいい。毎月の収入より支出のほうが少ないだろうか。毎週ジムに行くようにしているだろうか。毎日本を読んだり新しいことを学んだりしているだろうか。このような小さな闘いがあなたの未来を決めるだろ

””同じように習慣も、決定的な境界を超えて新しいレベルの成果を引き出すまで、なんの違いももたらしていないように見えることが多い。どんな目標でも、初期や中期の段階には「失望の谷」がよくあるものだ。直線的な進歩を期待しているので、最初の数日間、数週間、そして数カ月でさえあまり変化が見られないことにがっかりする。なんにもならないように感じられる。それがあらゆる形成過程の特徴であり、もっとも強力な成果は遅れて表れてくるもの

””もし良い習慣を身につけることや、悪い習慣を断つことに苦労しているなら、それは進歩する能力がないからではない。たいていは、「潜在能力のプラトー」をまだ超えていないせいだ。懸命に努力しているのに成果が出ないと愚痴をこぼしているのは、温度をマイナス三度からマイナス〇・五度に上げて角氷が解けないと文句を言っているようなものだ。努力は無駄にはなっていない。蓄積されているだけだ。すべての変化は摂氏〇度で起こる。  ついに「潜在能力のプラトー」を打ち破ったとき、まわりの人は一夜にして成功したと言うだろう。世間はもっともドラマチックな出来事だけを見て、それまでの一切は見ようとしない。でもあなたは、今飛躍できるのはずっとまえの――なんの進歩もないように見えたときの――努力のおかげだと知って

””結果は設定した目標とはほとんど関係なく、取り入れた仕組みに左右されると気づくようになった。  仕組みと目標の違いはなんだろう? その区別を最初に学んだのは、コミック『ディルバート』の作者である漫画家スコット・アダムスからだった。目標は達成したい結果であり、仕組みはその結果へと導くプロセスで

””より良い結果を得たいなら、目標の設定は忘れよう。かわりに仕組みに集中しよう。  つまり、どういうことだろう? 目標はまったく無意味なのか? もちろん、そうではない。目標には方向を定める効果がある。だが、仕組みは進歩するのに最適である。目標について考えるのに時間を費やしすぎて、仕組みを考える時間がないと、いくつかの問題が生じて

””目標達成は生活を 一時的に 変えるにすぎない。これは改善について考えるとき、直観に反する考え方だろう。わたしたちは結果を変えなければと思いがちだ。しかし結果は問題ではない。本当に変えなければならないのは、結果をもたらす仕組みである。結果レベルで問題を解決すると、一時的に解決するだけだ。永久に改善するためには、仕組みレベルで問題を解決する必要がある。入力するものを直せば、出力結果は自ずと直るだろ

””どんな目標にも次のような暗黙の了解がある――「目標に達したら、幸福になれる」。目標第一主義の問題は、目標の次の節目まで幸福を先延ばしにしつづけることだ。わたしも、数えきれないほどこの罠にはまってきた。何年ものあいだ、幸福はつねに未来のものだった。筋肉があと九キロ増えたら、または自分のビジネスがニューヨーク・タイムズに取りあげられたら、そのときやっとくつろげるのだと自分に約束したものだ。  さらに、目標は「二者択一」という対立を生み出してしまう。目標を達成して成功を味わうか、達成できずに失望するかのどちらかである。幸福の意味を狭くして、自分を心理的に閉じこめてしまう。これは間違った考えだ。人生で歩む現実の道が、はじめに思い描いた旅路どおりになることなどありえない。成功への道はたくさんあるのに、ひとつのシナリオどおりでないと満足できないと制限するのは無意味で

””仕組み第一主義なら、それに対処できる。結果よりプロセスを心から大切に思うとき、幸福になるのに待つ必要などない。仕組みが進んでいれば、いつでも満足できる。そして仕組みは、はじめに思い描いたものだけでなく、さまざまな形で成功を収めることが

””目標設定の目的はゲームに勝つことだ。一方、仕組みを作る目的はゲームをしつづけることである。本当に長続きする考え方は、目標を抜きにした考え方だ。それは何かひとつの達成だけを目指すものではない。終わりのない改善と継続的な向上のサイクルについて考えることだ。突きつめれば、あなたの 進歩 を決めるのは、 プロセス にしっかり取り組むかどうかで

””第一層は結果の変化である。 この段階は成果の変化に関係している。体重減少、本の出版、選手権優勝などだ。設定する目標のほとんどが、変化のこの段階にあたる。   第二層はプロセスの変化である。 この段階は習慣と仕組みの変化に関係している。ジムで新しいルーティンを実行する、作業しやすいように机の上を片づける、薬の飲み方を変えるなどだ。身につく習慣のほとんどがこの段階にあたる。   もっとも深い第三層は、アイデンティティー(自己同一性)の変化である。 この段階は信念の変化に関係している。世界観、セルフイメージ(自己像)、自分自身や他人への評価などだ。自分が持つ信念、思いこみ、偏見のほとんどがこの段階に

””一パーセントの改善の仕組みを築くことに関していえば、問題は、ひとつの段階が他より「いい」とか「悪い」とかではない。すべての段階の変化がそれぞれに役立つ。問題は変化の 方向 である。  多くの人は、 何を 達成したいかを意識して習慣を変えようとする。これは結果ベースの習慣になりやすい。別の方法は、アイデンティティーベースの習慣を身につけることだ。この方法では、 どのような人になりたいかに意識を向けて変化に着手

””個人や組織や社会について考えても、同じような例がある。仕組みを形づくる信念や思いこみがあるように、習慣の背後にはアイデンティティーがある。  自身と矛盾する行動は長続きしない。もっと豊かになりたくても、もしあなたのアイデンティティーが収入以上に消費するような人なら、稼ぎより多く使いたくなるだろう。健康になりたくても、達成感より快適さを優先しつづけるなら、トレーニングよりのんびりするほうに惹かれるだろう。過去の行動に引きこもうとする根本的な信念を変えなければ、習慣を変えるのは難しい。新しい目標や計画を立てても、自分の人となりはそのままだから

””本当の行動変化は、アイデンティティーの変化である。やる気があれば習慣を始められるかもしれないが、その習慣を続けられるのは、自分のアイデンティティーの一部になったときだけである。誰でも一、二回はジムへ行ったり、健康的な食事をしようと自分に言いきかせたりすることはできるが、その行動の背後にある信念が変わらなければ、長期的な変化を続けるのは難しい。自分の人となりの一部となるまでは、その改善は一時的なものにすぎない。 ・目標は本を読むことではなく、読書家に なる ことである ・目標はマラソンに出ることではなく、ランナーに なる ことである ・目標は楽器の演奏を習うことではなく、音楽家に なる ことで

””つまり、習慣はアイデンティティーを変える道だといえる。あなたの人となりを変えるもっとも効果的な方法は、行動を変えることだ。 ・一ページ書くたびに、あなたは作家になる ・バイオリンの練習をするたびに、あなたは音楽家になる ・トレーニングを始めるたびに、あなたはアスリートになる ・従業員を励ますたびに、あなたはリーダーになる   どの習慣も成果を生むだけではなく、はるかに重要なことを教えてくれる。それは、自分自身を信じることだ。実際にこういうことができると信じられるようになってくる。票が集まり、証拠が変わりはじめると、自分に語りかける言葉も変わりだす。  もちろん、これは逆の方向にも働く。悪い習慣を選ぶたびに、そういうアイデンティティーに一票を投じることになる。ただありがたいことに、あなたは完璧でなくてもいい。どんな選挙でも、両方のサイドに票が入るものだ。選挙に勝つには、満場一致ではなく過半数の票が必要なだけだ。よくない行動や無意味な習慣に数票入れてしまってもかまわない。目標は、そのときの大部分を勝ち取ることだ。  新しいアイデンティティーには新しい証拠が必要だ。いつもと同じ票を入れつづけていれば、いつもと同じ結果を得るだろう。何も変えなければ、何も変わらない。   以下がシンプルな二段階のプロセスである。 一、どのようなタイプの人になりたいかを決める 二、小さな勝利で、自分自身に証明する””

””第一段階は、 何が 欲しいかでも、 どう なりたいかでもなく、 どのような人になりたいかである。自分がなりたいタイプを知ることが必要だ。そうしなければ、変化への探求は、舵のない舟のようにさまよってしまう。だからこそ、ここから始めるのである。  あなたには、自分について信じていることを変える力がある。アイデンティティーは不変ではない。いつでも選ぶことができる。今日の習慣を選ぶことによって、今日強めたいアイデンティティーを選ぶことができる。そうすることで、本書にこめられた深い目的と、習慣が大切である本当の理由にたどりつけるだろ””

””・変化には三つの段階がある― ―結果の変化、プロセスの変化、アイデンティティーの変化。 ・習慣を変えるのにもっとも効果的な方法は、達成したいものではなく、なりたい人に意識を向けることだ。 ・アイデンティティーは習慣から生まれる。あらゆる行動が、なりたいタイプの人へ一票を投じることになる。 ・最高のバージョンの自分になるには、つねに信念を修正し、アイデンティティーの改善と拡大をする必要がある。 ・習慣が大切な本当の理由は、良い成果を得られるからではなく(得ることはできるのだが)、自身についての信念を変えることができるから””

””習慣は、経験から学んだ心のショートカットである。ある意味で、習慣とは問題解決のため過去に採用したステップの記憶にすぎない。条件が合うたびに、この記憶を利用して、自動的に同じ解決法を当てはめる。脳が過去を記憶する主な理由は、未来に何が役立つかをうまく予測するため だ。  習慣形成が非常に役立つのは、意識が脳の重荷になっているから だ。意識は一時にひとつの問題にしか注意を払えない。そのため、脳は重要な作業すべてに意識的注意を保とうと、つねに働いている。すると意識はできるだけ作業を無意識に追いやって、自動的に行わせようとする。これこそまさに、習慣が形成されるときに起こっていることだ。習慣は認知的負荷を減らし、心の能力を解放するので、他の作業に注意を向けられるように””

””行動を変えたいときはいつも、自分にこう訊けばいい。   一、どうしたらはっきりする?   二、どうしたら魅力的になる?   三、どうしたら易しくなる?   四、どうしたら満足できるものに

””結論ははっきりしている。いつ、どこで新しい習慣を行うか明確な計画を立てる人は、最後までやり通す可能性が高い、ということ だ。この基本的な点をはっきりさせずに、習慣を変えようとする人があまりにも多い。「もっと健康的な食事をしよう」「もっと文章を書こう」と自分に言い聞かせながら、いつ、どこで、その習慣を始めるのかは言おうとしない。「思い出したらやろう」とか、適切なときにやる気になるだろうとか、チャンスや希望にまかせている。実行意図は、「もっと運動したい」「もっと成果をあげたい」「投票しなければ」という曖昧な考えを一掃し、具体的な行動計画に変えるもの””

””モチベーション不足だと感じるとき、じつは足らないのは明確さであることが多い。いつ、どこで行動するか、たいていはっきりしていない。なかには、改善するのにふさわしいときを一生待っている人もいる。  いったん実行意図が決まると、やる気がわいてくるのを待つ必要はない。「今日、一章分書くか、やめておこうか? 今朝、瞑想しようか、それとも昼休みにしようか?」などと、そのたびに決める必要もない。あらかじめ立てた計画にただ従うだけだ。  この方法を習慣に適用するには、次の文を完成させるだけでいい――わたしは〈いつ〉〈どこで〉〈何を〉””


・背景の小さな変化によって、時とともに行動を大きく変えることができる。
・どの習慣もきっかけによって始まる。わたしたちは目立つきっかけに気づきやすい。
・良い習慣のきっかけを、環境のなかで目立つようにしよう。
・習慣はしだいにひとつの引き金だけでなく、行動を取りまく背景全体と結びついてくる。すると、その背景がきっかけとなる。
・新しい環境のほうが、新しい習慣を身につけやすい。古いきっかけと闘わずにすむから


””非常に自制心がありそうな人々を分析すると、そのひとりひとりは、自制できずに苦しんでいる人と大して違いがないことがわかった。そのかわり、「自制心のある」人は、たいそうな意志や自制心が いらない ように、生活を設計することに長けてい た。いいかえれば、誘惑的な状況には、なるべく身を置かないということだ。  もっとも自制心のある人は、たいていもっとも自制心を使わない人だ。自制心は、あまり使わなくていいときに練習しやすい。そう、たしかに、忍耐力や根性や意志の力は成功するのに不可欠だ。だが、こういう資質を向上させる方法は、もっと自制心のある人間になりたいと願うことではなく、規律正しい環境を作ることで””


””それより確実なのは、悪い習慣を元から断つことだ。悪い習慣をやめる実際的な方法は、習慣を引き起こすきっかけを避けることである。
・仕事ができそうになければ、スマートフォンを数時間、別の部屋へ置こう。
・つねに満たされていないように感じるなら、ソーシャルメディアで、嫉妬や羨望を感じる人をフォローするのをやめよう。
・テレビを見るのに時間を使いすぎるなら、テレビを寝室から他へ移そう。
・電子機器にお金を使いすぎるなら、最新のテクノロジー製品のレビューを読むのをやめよ


””本番前の緊張。 多くの人が、大きな発表や大事な試合のまえには不安を感じる。呼吸が速くなり、胸がドキドキし、覚醒状態になる。もしこの感覚をネガティブにとらえると、恐れたり緊張したりする。ポジティブにとらえると、なめらかに優雅な反応ができる。「ああ、緊張するな」という状態を、「ああ、ワクワクするなあ。集中できるようにアドレナリンが出てるんだ」というように、捉えなおすことが””


””わたしはよく、一息入れるたびにソーシャルメディアに惹きつけられる。ほんの一瞬でも退屈だと思うと、スマートフォンに手をのばす。このささやかな気晴らしを「ちょっと休憩してるだけさ」とすませることは簡単だが、やがて積み重なれば深刻な問題になりかねない。「もう一分だけ」といつも引き伸ばしてしまい、大事なことが何もできなくなってしまう。(わたしだけではない。人は平均して一日に二時間以上、ソーシャルメディアで時間をつぶしている。一年に六〇〇時間も余分にあったら、どんなことができるだろ””


””行動経済学者はこの傾向を「時間割引」と呼ぶ。これは、脳による報酬の評価は、時間と相反するということ だ。あなたは未来より現在を高く評価する。たいていの場合、この傾向は役に立つ。未来にもらえる かもしれない 報酬よりも、今 確実に もらえる報酬のほうが通常は価値が高い。でもときどき、すぐに得られる喜びを好む傾向が、問題を起こすことも””


””ここで注目すべきなのは、あなたのアイデンティティーを強化するような短期報酬を選ぶことが大切であり、それに反する報酬を選んではいけないということだ。新しいジャケットを買うことは、減量や読書が目標なら大丈夫だ。でも予算を立てて節約するのが目標なら、これではうまくいかない。かわりにバブルバスに入ったり、のんびり散歩したりするのが、自分に自由時間という報酬を与えるよい例である。このような報酬なら、自由と経済的自立を手に入れたいという最終目標とうまく合うはずだ。同じように、運動の報酬がアイスクリームを食べることなら、望んでいるのと反対のアイデンティティーに一票を投じているようなもので、結局失敗するだろう。かわりにマッサージを報酬にすれば、ぜいたくな雰囲気を味わいながら、身体を手入れすることもできる。これで短期報酬が、健康な人になるという長期目標と一致””


””自分には楽しいのに、他の人には仕事だと思えるものは?  その仕事に向いているかどうかを示すのは、あなたがそれを好きかどうかではない。その仕事に伴う苦労に、他の人より耐えやすいかどうかである。他の人が文句を言っているのに、自分は楽しんでいるのは、どんなときか? 他の人が感じるほど辛くない仕事が、あなたに向いた仕事である。   時間を忘れてしまうものは?  フローというのは、目の前の仕事に集中して、他のことが目に入らなくなるときの精神状態をいう。幸福感と最高のパフォーマンスが一体化したこの状態を、アスリートやパフォーマーは「ゾーン〔完全な集中状態〕」に入っているときに経験する。フローを経験したことがあるなら、少なくともある程度満足できる仕事が見つからないことは、まずありえないだろ””


””熟練するには練習が必要だ。でも、何かを練習すればするほど、退屈で日常的なものになってくる。初心者がある程度上達し、期待したものを学んでしまうと、興味がだんだん薄れてくる。ときには、もっと早くそうなることもある。数日続けてジムへ行こうとか、決まった時間にブログに投稿しようと決めていても、一日さぼっても大したことはないと感じるだろう。物事はうまくいっている。いい状態なら、一日の休みくらい正当化するのは簡単だ。  成功をもっとも脅かすものは、失敗ではなく退屈だ。わたしたちは習慣が楽しくなくなると飽きてしまう。結果も予想がつくようになる。そして習慣がつまらなくなると、新しいものを求めようとして進歩から脱線しはじめる。おそらくこれが、ひとつの運動から次のものへ、ひとつのダイエットから次のものへ、ひとつのビジネスアイデアから次のものへと移っていく、終わりのないサイクルにはまってしまう理由だろう。ほんの少しでもモチベーションが下がると、今までのやり方にまだ効き目があっても、新しい戦略を探し””


””また、「決断日記」をつけている重役や投資家をわたしは知っている。この日記に、毎週行った大きな決断と、その決断をした理由、期待している結果を記録する。月末か年末に自分の選択を振りかえり、どこが正しくて、どこが間違っていたかを見直すという。 *決断日記をつけることに興味ある方のために、テンプレートを作成した。以下のサイトの習慣日記のところに入っているのでご覧いただきたい。https://jamesclear.com/habit-journal ””


””*わたしの昨年の「年一回の見直し」を以下のサイトでご覧いただける。https://jamesclear.com/annual-review 一、今年、何がうまくいったか? 二、今年、何がうまくいかなかったか? 三、何を学んだか?   六カ月後、夏がやってくると、「誠実(integrity)レポート」を書く。みんなと同じように、わたしもたくさんのミスをする。誠実レポートによって、どこが間違っているかがわかり、正しい方向へ軌道修正することができる。わたしはこのレポートを、自分の基本的価値観に立ちかえり、それに沿って生きているかどうか考える機会として用いている。それは、自分のアイデンティティーや、なりたいタイプの人になるにはどう努力すればいいかについて、熟考するときだといえるだろ


””毎年、わたしの誠実レポートでは、次の三つの質問に答えることにしている。 一、わたしの生活や仕事を導いている基本的価値観は何か? 二、今、どのような誠実さを持って生活や仕事をしているか? 三、どうしたら、将来もっと高い基準を設けられるか?   このふたつのレポートには大して時間がかからない。毎年ほんの数時間くらいだが、自分を磨くための大切な時である。よく注意していないと、しだいにコースから外れてしまうものだが、それを防いでくれる。また、望ましいアイデンティティーに立ちかえって、なりたいタイプの人になるには習慣がどのように役立つか考えるようにと、毎年思い出させて””


””次に挙げる『道徳経』〔老子の作とされる中国の古典〕からの引用が、この考えを要約している。   
人は柔らかく、しなやかに生まれ   
死ねば、堅くこわばる。   
植物は柔らかく、しなやかに生え   
枯れれば、乾いてもろくなる。   
それゆえ、堅くて融通の利かない者は   
みな死の弟子である。   
柔らかくて従順な者は   
みな命の弟子である。   
堅くこわばる者は破れるであろう。   
柔らかくしなやかな者は勝つであろう。


””願望のまえに気づきがある。 欲求は、きっかけに意味を与えたときに起こる。脳は今の状況を表現するために感情や感覚を作りだしている。つまり、あなたが機会に気づいたあとで欲求は起こる。””

戦略を、実行できる組織、できない組織。~組織の存続のために必要な「最重要目標にフォーカスする」~

ここ数年、リチャード・ルメルトの「良い戦略、悪い戦略」を繰り返し読み直す。

”良い戦略とは最も効果の上がるところに持てる力を集中投下することに尽きる。短期的には、手持ちのリソースを活かして問題に対処するとか、競争相手に対抗するといった戦略がとられることが多いだろう。そして長期的には、計画的なリソース配分や能力開発によって将来の問題や競争に備える戦略が重要になる。いずれにせよ良い戦略とは、自らの強みを発見し、賢く活用して、行動の効果を二倍、三倍に高めるアプローチにほかならない。~良い戦略は、知力やエネルギーや行動の集中によって威力を発揮する。ここぞという瞬間にここぞという対象に向かう集中が、幾何級数的に大きな効果をもたらすのである。これをテコ入れ効果(レバレッジ)と呼ぶ。”

そして、昨年11月、僕たちは、集中戦略と称して、あまりにも分散していた多数の事業やプロジェクトを苦渋の決断で撤退することを決めた。分かっている、分かっちゃいるのだけど、トライしてみればみるほど、言うは易く行うは難し、だと痛感する。筋の良い戦略を掲げた後、次に、その戦略を、どう実行するか?に挑み続ける必要がある。そこで出会ったのが本書である。

””人間は遺伝子的に一度に一つのことしか完璧にできない。これが第1の規律で働いている基本原則である。あなたはおそらく、自分はいくつもの仕事を同時に進められる、一度にたくさんのことができる、と思っていることだろう。しかし、最重要目標には最大限の努力を注がなくてはならないのだ。  アップル社のスティーブ・ジョブスは、やろうと思えば、もっと多くの製品を市場に出せただろう。しかしジョブスはいくつかの「最重要」製品に焦点を絞った。彼のフォーカスは伝説となった。彼が出した結果もまたしかり。人間の脳が一定の時間に集中できるのは一つの対象だけだということは、科学が証明している。どんなに頑張っても、車を運転しながら携帯電話をかけ、同時にハンバーガーを食べることはできない。最重要の企業目標をいくつも一度に操ることも、無理な話なの~””

””リーダーの悩み  ここで、大きな疑問が生じる。目標を絞り込むよりも増やすほうへとどうしても傾いてしまうのはなぜなのか? 絞り込む必要性は十分にわかっていながら、いざとなると絞り込めない。なぜなのか?  リーダーであるあなたはこう答えるかもしれない。改善しなければならないことはたくさんあるし、追求したいビジネスチャンスも毎日次々と生まれるからだ、と。それに加えて、他の人たち(そして彼らの計画)があなたの目標を増やす可能性もある。他の人というのが組織の上層部の人間だったらなおさらである。  しかし、これらの外的な力よりも頻繁にほとんどの問題の発端となっている原因がある。何を隠そう、それは「あなた」である。  あなただって悪意から問題を起こしているわけではないし、むしろ善意で頑張っているのだろう。しかし本当の意味で、自分の最大の敵は自分なので~””

あまりにも、ありふれた表現をすれば、緊急ではない重要なことに、どれだけフォーカス出来るか、仕組みを作ることにある。この仕組みが、どういうものであれば良いかを、丁寧に解説してくれている本書は、今の僕、僕たちには、とても示唆に富むシンプルなルールが沢山書かれていた。有り難い限り。

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Generative AIによる以下一部抜粋を受けた書評

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組織の存続のために必要な「最重要目標にフォーカスする」

Introduction

竜巻と戦略目標を混同するリーダーが多い現代において、「最重要目標にフォーカスする」という第一の規律は、組織の存続に不可欠なものである。竜巻は急を要する仕事であり、重要な目標と緊急の仕事が衝突すると、緊急の仕事が優先されることが多いため、最重要目標を絞り込むことが重要である。本記事では、最重要目標にフォーカスすることが組織にとってなぜ重要なのかを探りながら、第一の規律について詳しく見ていく。

竜巻と戦略目標はまったく別物である

竜巻は急を要する仕事であり、前進するために設定した目標と衝突することが多い。しかしながら、多くのリーダーは、竜巻と戦略目標を混同してしまっている。竜巻は組織の存続に必要なものであるが、戦略目標とはまったく別のものであり、時間、資源、労力、注意を奪い合う敵対関係にある。この闘いでどちらが勝つかは明白である。竜巻は常に存在し、あなた自身やあなたのチームのメンバーに常に影響を及ぼしている。最重要目標を絞り込むことが、竜巻と戦略目標を区別するための第一歩である。

最重要目標にフォーカスする

最重要目標にフォーカスすることで、チームのエネルギーを最も重要な目標に集中させることができる。やることを増やせば増やすほど成果は上がらない。頭の切れるリーダーであっても、良いアイデアがあれば手を出したくなるものである。しかし、良いアイデアはいつでもたくさんあるため、最初に最重要目標を絞り込むことが必要である。フォーカスは自然の原理であり、一本一本の太陽光線に火を起こすエネルギーはない。しかし虫眼鏡で一点に集めれば、ものの数秒で紙を燃やしてしまう。同様に、チームのエネルギーを最も重要な目標にフォーカスさせることで、達成することができる。

結論

最重要目標にフォーカスすることが、竜巻と戦略目標を区別するための第一歩であり、組織の存続に不可欠であることがわかった。竜巻は常に存在するため、最重要目標を絞り込むことでチームのエネルギーを集中させることができる。フォーカスは自然の原理であり、最重要目標にエネルギーを集中させることで、組織の存続に重要な役割を果たすことができる。リーダーは最重要目標を見極め、チームのエネルギーを集中させることで、組織を成功に導くことができる。

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一部抜粋

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””多くのリーダーは、竜巻と戦略目標をほとんど区別していない。どちらも組織の存続に必要だからである。しかし、竜巻と戦略目標はまったく別物である。それだけではない。時間、資源、労力、注意を奪い合う敵対関係にある。この闘いでどちらが勝つか、言うまでもないだろう。  竜巻は急を要する仕事である。あなたにも、あなたのチームのメンバーにも、四六時中のしかかっている。前進するために設定した目標は重要だが、緊急の仕事と重要な仕事が衝突すれば、毎回必ず緊急のほうに軍配が上がる。この構図に一旦気づくと、新しいことを実行しようとしているチームのいたるところで繰り広げられる緊急と重要の闘いが見えるだろ””

””第1の規律:最重要目標にフォーカスする  やることを増やすほど成果があがらないのは、ものの道理である。だれもが経験している避けられない明白な原則である。しかしほとんどのリーダーは、どこかでこの原則を忘れてしまっている。なぜだろう? 頭が切れ野心的なリーダーは、もう十分知っていることでも、手を出したくなるからだ。最高には到底及ばないが、そこそこ良いアイデアがあったとする。あなたはそのアイデアをきっぱり無視できるだろうか? 困ったことに、良いアイデアというのはいつでもたくさんある。あなたとチームが実行できるキャパシティにはとても収まりきらない。したがって最初の課題は、最重要目標を絞り込むことである。  フォーカスは自然の原理だ。一本一本の太陽光線に火を起こすエネルギーはない。しかし虫眼鏡で一点に集めれば、ものの数秒で紙を燃やしてしまう。同じことが人間にも当てはまる。チームのエネルギーを最も重要な目標にフォーカスさせれば、達成できないわけが

””第1の規律:最重要目標にフォーカスする」では、あなたはこれまでのセオリーに立ち向かわなければならない。チームがより多く のことを達成するために、リーダーはより少ない ことにフォーカスするのである。何もかもを一度に大幅に改善しようとしても、どだい無理なのである。第1の規律を導入するときは、本当に重要な目標を一つ(多くて二つ)を選ぶ。これを最重要目標(Wildly Important Goal:WIG)と名づけて、何よりも重要な目標であることをチームにはっきりと示す。その目標を達成できなかったら、他のどんな目標を達成したところで、たかが知れている。ほとんど何の効果もないと言ってもいいだろ

””第2の規律:先行指標に基づいて行動する  これはレバレッジの規律である。すべての行動が等しい力をもつわけではないという簡潔明瞭な原則に基づいている。目標達成に直結する活動もあれば、いくら頑張っても効果のない活動もある。目標に到達したいなら、インパクトの強い活動を特定し、それを実行する必要がある。  どのような戦略を推進するのであれ、その進捗と成功は、二種類の指標で測られる。遅行指標と先行指標である。   遅行指標 とは、最重要目標を追跡する測定基準であり、普段あなたが最も時間をかけて祈りを捧げている指標だ。売上高、利益、マーケットシェア、顧客満足度はすべて遅行指標である。これらの指標のデータを手にしたときには、そのデータをたたき出した活動はすでに過去のものとなっている。だから、あなたは祈ることしかできない。遅行指標が出てきたら、もはや手の施しようはない。それは過去の出来事なのだ。   先行指標 は、遅行指標とはまるで異なる。目標を達成するためにチームが実行しなければならない最もインパクトの強い活動の指標だからだ。先行指標は基本的に、遅行指標を成功に導く新たな活動を測定する。たとえば、ベーカリーの来店客全員に試供品を提供するというようなごく単純な活動も、ジェットエンジン設計の規格を守るといった複雑な活動も、先行指標になる。  適切な先行指標には、二つの基本的な特徴がある。目標達成を 予測できる こと、そしてチームのメンバーが 影響を及ぼせる ことで

””第3の規律:行動を促すスコアボードをつける  スコアをつけるとプレーは変わる。嘘だと思うなら、バスケットボールで遊んでいる十代の子たちを見てみるといい。スコアをつけはじめると、ゲームはがぜん熱を帯びてくる。しかしここで、冒頭の一文「スコアをつけるとプレーは変わる」に「自分で」を加え、「自分でスコアをつけるとプレーは変わる」にすると、さらにはっきりするだろう。そう、スコアをつけるのは自分自身でなければならない。  第3の規律は、意欲的に取り組むための規律である。気持ちの入っている人は最高のパフォーマンスをするものだ。そしてスコアを知り、勝っているのか負けているかがわかれば、自然と気持ちは入る。当たり前の話だ。カーテン越しにボウリングをするとしよう。最初は面白がってやるかもしれないが、勢いよく倒れるピンが見えなければ、いくらボウリングの好きな人でもすぐに飽きる。  第1の規律で焦点を定め(WIGと遅行指標)、第2の規律で、目標に至る軌道に乗るための重要な先行指標を決める。これで試合に勝つ要素は揃った。次のステップは、選手の積極的な行動を促す簡潔なスコアボードに試合の推移を記録することで

””第4の規律:アカウンタビリティのリズムを生み出す  第4の規律で戦略実行を現実のものにする。第1から第3の規律までは、試合に勝つ態勢を整えるプロセスであり、第4の規律を適用してようやく、試合開始となる。第4の規律は、アカウンタビリティ(報告責任)の原則に基づいている。お互いに報告する責任を負い、その責任を一貫して果たさなければ、目標は竜巻に吹き飛ばされてしまう。  アカウンタビリティのリズムとは、最重要目標に取り組むチームが定期的に、かつ頻繁にミーティングをもつことを意味する。ミーティングは少なくとも週一回、長くても二〇~三〇分程度が理想的だ。メンバーは、竜巻の中でどのような結果を出しているかを短い時間で報告し

””第4の規律の秘訣は、定期的なリズムを維持すること、そしてそれぞれのメンバーがみずから約束をすることである。チームのメンバーはすべきことを指示されるものと思っている。指示してほしいとさえ思っている。指示待ちが普通なのだ。しかし、すべきことを自分で決めて約束すれば、責任感は増す。上から命じられるより、自分で考えて決めたことのほうが身を入れて取り組むものである。自分が何をするのか、上司だけでなくチームのメンバー全員の前で述べるのだから、それは個人の信用に関わる問題になる。決められた業務をこなす枠を超え、チームに対して約束をすることなので

””一言でいえば、第1の規律は、より少ない目標により多くのエネルギーを注ぐことだ。目標は多ければいいというものではない。生産要素をどんどん投入していくと、投入一単位当たりの収穫がだんだん減っていく 収穫 逓減 の法則は、目標の数にも言える。重力の法則のように自明の理なのである。  竜巻の要求の他に目標が二つ、多くても三つまでなら、チームはそれらにフォーカスし、まず間違いなく全部達成できるだろう。しかし目標が四つ以上一〇個以下だと、我々の経験からして、せいぜい一つか二つしか達成できない。後退してしまうのだ。日常業務の竜巻に一一個以上、はては二〇個の目標が加わったら、焦点は消えてなくなる。チームのメンバーは、あまりに多くの目標にわけがわからなくなり、耳を傾けるのをやめてしまう。実行などとうてい望め

””あなたがチームに負担をかけすぎる理由の一つは、リーダーであるあなた自身が野心的でクリエイティブであることだ。まさしく組織の中で出世していくタイプである。問題なのは、クリエイティブで野心的な人間は、常にもっと多くやろうとすることだ。もっと少なくしよう、などとは考えもしない。あなたもそうなら、実行の第1の規律を破ってしまうのはまず間違いない。  チームに過剰な目標をもたせてしまう一つの理由は、危険の分散である。あれもこれも手を出せば、どれか一つはうまくいくだろうと期待するのだ。さらに言えば、たとえ失敗しても、チームの努力が足りなかったと批判されないようにするためだ。多いほど良くないことは知っていても、多いほうが頑張っているように見えるし、上司の受けもよいだろうと思ってしまう。目標の数が減れば、個々の結果に対する責任が重くなる。それが嫌なのだ。自分の成功を努力の質ではなく量に頼るので

””しかしながら、目標を絞り込むときにリーダーが直面する最大の問題は、実はもっとずっと単純だ。良いアイデアを無視できないのである。4Dxでは、良いアイデアどころか最高のアイデアさえ採用しない場合もある。少なくとも当面は無視しなければならないことがある。良いアイデアを無視するなど、リーダーの直感に反する最たるものだろう。しかし、何もかも受け入れていては、焦点はぼやけ、消失してしまう。  しかも困ったことに、良いアイデアというのは一度に全部陳列されるわけではない。ほどよく小出しにされるから、つい手に取ってしまう。一… エクスポートの制限に達したため、一部のハイライトが非表示になっているか、省略されています。

””スティーブン・R・コヴィーはこう言っている。「最も優先すべきことが何なのか、しっかりと決めておかなければならない。そして気持ちよく、笑顔で、素直に、それ以外のことに対してノーと言う勇気をもつ必要がある。ためらうことなくノーと言えるようになる秘訣は、自分の中でもっと強い、燃えるような大きなイエスをもつことである」  チームの焦点を絞るために、良いアイデアに「ノー」と言うことの大切さがわかれば、フォーカスを妨げる二つの罠の一つ、良いアイデアの魅力は避けられる。しかし二つめの罠、竜巻は手ごわい。竜巻の中にあるものをWIGに投じなければならないのだ。竜巻に立ち向かいながら、最重要目標に全精力を傾けなければなら

””最重要目標を決めるときの問いかけは、「何が最も重要か?」ではない。最初に問うべきは、「他のすべての業務が現在の水準を維持するとして、変化することで最大のインパクトを与えられる一つの分野は何か?」 である。この問いで考え方が変わり、状況を一変させる焦点を見極められる。  一つか二つの最重要目標を決めてしまったら、チームがそれ以外のことをないがしろにするのではないかと心配したくなるかもしれない。しかしチームの労力の八〇%は竜巻を維持することに使えるのだから、そんな心配は無用だ。他の仕事が後退するのではないかと不安になるのをやめたら、WIGに向かって前進していける。第1の規律の言葉どおり、最重要目標にフォーカスできるので

””しかし使命を深く考えているうちに、WIGが少しずつ見えてきた。彼らがそれまで考えてもみなかったものだった。「障害者の生活を維持できるような仕事を当社以外の企業で見つける手助けをする」ことである。地域の障害者全員をここで雇うことは無理でも、何千人もの障害者に小売の仕事のトレーニングを提供する余裕ならある。障害者がより良い仕事を見つける手助けをすれば、彼らの自立を促進できる。こうして、「持続可能な仕事に就く障害者を増やす」ことが新しいミッションになった。  このWIGで組織は一変した。使命を実現するための業績を維持しながら、これまでに何千人もの障害者、社会的弱者が自立し、自尊心をもつ手助けをしたので

””ルール一:一度に四つ以上の目標にフォーカスできるチームは存在しない  このルールはエンジンの回転速度を調整するガバナーのように機能する。実行の4つの規律に深く入っていくと、組織全体に何十ものWIG、ことによると何百ものWIGが見つかる可能性がある。しかし、一人のリーダー、一つのチーム、あるいは個人に過剰な負担をかけてはならない。彼らは竜巻の絶え間ない要求を処理しているのである。このルールを頭に入れて、あと三つのルールを

””ルール二:選択した局地戦は、総合的な戦いに勝利をもたらすものでなければならない  軍事衝突でも、飢餓や癌、貧困を撲滅する戦いでも、局地戦と総合的な戦いの間には明確な関係性がある。ある局地戦に臨む理由は、総合的な戦いに勝つこと以外にはない。組織の下位で取り組むWIGの役目は、組織の上位のWIGを達成する助けになること以外にはない。下位WIGが上位WIGと一致するだけでは不十分だし、助けになる程度でも足りない。組織の下位のWIGは、上位のWIGの成功を確実にしなければならないの

””上位WIGが決まったら、次に何を問うかが重要である。「この総合的な戦いに勝つためにできることは何か?」という問いは、多くのリーダーが犯す間違いだ。出てくる答えは長々とした「すべきことリスト」である。そうではなく、「この総合的な戦いに勝つために必要な最小限の局地戦は何か?」 と問う。この質問に答えれば、上位WIGを達成するために必要な下位のWIGは何か、いくつ必要なのかが決まる。総合的な戦いに勝つための局地戦を選びはじめると、戦略が明確化し、同時に単純化して

””ルール三:上位役職者は拒否権を使えるが、命令はできない  組織のトップだけで戦略を策定し、部下のリーダーやチームに手渡すような方法をとっていたら、最高度の実行力はいつまでたってもおぼつかない。戦略の実行に必要な従業員の強いコミットメントは、従業員自身が参加しなければ生まれないのだ。上位役職者が最上位のWIGを決めるのは妥当だとしても、下位WIGはそれぞれのチームに決めさせなくてはならない。チームのリーダーの知識を活かせるだけでなく、従業員が目標を自分のものとしてとらえ、積極的に関わる意識も強くなる。要するに、自分で選んだ目標が組織の最も重要な目標を後押しするなら、自然と身が入るのだ。上位役職者は、各チームが選んだ局地戦が総合的な戦いの勝利に結びつかないと判断したときにだけ、拒否権を発動すれば

””ルール四:すべてのWIGに「いつまでにXからYにする」のフォーマットでフィニッシュラインを決める  各レベルのWIGに測定可能な結果を含め、その結果を達成する期限を定めなくてはならない。たとえば売上高にフォーカスしたWIGなら、「一二月三一日までに新製品の年間売上高の伸び率を一五%から二一%にする」となる。「いつまでにXからYに」のフォーマットには、現在の地点、行きたい地点、そこに到達する期限が示されるわけである。簡単なフォーマットに見えるが、多くのリーダーは戦略のコンセプトを「いつまでにXからYにする」のフィニッシュラインに置き換えるのが苦手なようだ。しかしこれができれば、リーダーもチームもこれ以上ないほどはっきりとした目標を手に

””一〇個もの「できれば達成したい」目標から、一つか二つの「何としても達成しなければならない」目標に変わると、チームの士気は劇的に上がる。メンバーの頭の中に「試合開始!」のスイッチがあるかのようだ。あなたがそのスイッチを押せるなら、最高の実行力の土台はできているも同然だ。ケネディ大統領は、一〇年以内に人間を月に送り帰還させると公言し、そのスイッチを押したので

””最重要目標(WIG)にフォーカスするには、「7つの習慣」の「時間管理のマトリックス」(第三の習慣)を活用することが効果的だ。第Ⅰ領域は緊急で重要な事柄であり、有無を言わずに取り組まなければならない。第Ⅲ領域は緊急だが重要でない領域、第Ⅳ領域は緊急でもなく重要でもない領域であり、知らずにはまってしまう事柄だ。問題は重要でありながら緊急でない第Ⅱ領域の事柄であり、WIGはこの領域にある。ほうっておけば、人は緊急で重要な第Ⅰ領域に振り回されてしまい、やがて疲れ果てて「燃え尽きて」

””遅行指標は目標が達成できたかどうかを教え、先行指標は目標を達成できそうかどうかを教える。遅行指標に対してできることはほとんどない。しかし先行指標のほうは、自分の力でどうにでもできる。  たとえば、あなたは自分の車が路上で故障する頻度(遅行指標)を決めることはできないが、車を整備に出す頻度(先行指標)なら、あなたが自分でどうにでもできる。この先行指標をきちんと管理し、実行すれば、路上でエンストする事態を避けられる可能性が高くなるのである。  最重要目標を定めたら、その目標を数カ月後に達成するために必要な具体的な作業のすべてをリストアップし、詳細な計画をたてるのが当然だと思うだろう。だれでも直感的にはそう思う。しかし第2の規律では、そのようなことはし

””では、正しいテコを選ぶにはどうしたらよいだろうか?  過去に達成したことのない目標を達成するためには、過去にやったことのないことをしなければならない。周りを見渡してみよう。その目標あるいはそれに類似する目標を達成した人がいるだろうか? 彼らの行動はどこが違っていただろうか? 予測できる障害を仔細に分析し、乗り越える方法を考える。イマジネーションを駆使しよう。これまであなたが思っていなかったことで、状況を一変できそうな活動は何だろう?  次に、 WIGの達成に最大のインパクトを与えると思う活動を選ぶ。ここでのポイントは八〇/二〇ルールである。あなたがすることの二〇%は、残る八〇%よりもWIGにテコの作用が働く。その二〇%は何だろ

””この事例で学べる教訓は、先行指標のデータのほとんどは遅行指標データよりも取得しにくいが、代償を払ってでも先行指標を追跡しなければならないということだ。先行指標の取得に苦労しているチームは、これまでもずいぶん見てきた。テコの作用が強く働く先行指標にフォーカスしようとしても、「このデータをとるのは大変だ! 忙しくてそれどころじゃない」と言う。WIGに真剣に取り組むなら、先行指標を追跡する方法を考え出さなくてはならない。データがなければ、先行指標のパフォーマンスを前進させることはできない。先行指標がなければ、テコの効果はない。  WIGが本当に最も重要な目標なら、テコは絶対に必要

””スコアをつけると、プレーが変わる。先行指標と遅行指標を頭で理解しているだけのチームと、実際にスコアを知っているチームとでは、雲泥の差がある。先行指標と遅行指標の推移をビジュアルなスコアボードに記録し定期的に更新しなければ、指標はたちまち竜巻に吹き飛ばされ、消えてなくなる。要するに、スコアがわからなければ、人はやる気をなくす。逆に勝っているのかどうか一目でわかれば、試合に身が入るの

””強いチームは、自分たちが勝っているのか負けているのか常にわかっている。知らなくてはならない。そうでなければ、試合に勝つために何をすればいいのかわからないからだ。行動を促すスコアボードは、現在の状態とあるべき状態をチームに教える。それは、問題を解決し、決定を下すために不可欠な情報である。  だから、行動を促すスコアボードがなければ、チームは強くなれない。力が分散し、集中力が続かず、いつもの状態に逆戻りして

””第3の規律で確立したいのは、コーチのスコアボードとはまったく異なる「選手のスコアボード」である。あなたのチームの選手に、勝ちを取りにいく強い気持ちをもたせるためのスコアボードで

””一.シンプルか?  選手のスコアボードはシンプルでなければならない。フットボールの試合のスコアボードを考えてみよう。基本的には六種類のデータしか表示され

””二.すぐに見られるか?  スコアボードはチームのメンバー全員に見えなければならない。フットボールの試合のスコアボードは巨大だ。フィールドのどこからでも一目でどちらのチームが勝っているかわかるように、大きな数字で表示される。チームのスコアボードがコンピューターに収まっていたり、あなたのオフィスのドアの内側に掛かっていたりしたら、メンバーの視界に入らず、したがって頭の中から抜け落ちる。チームはいつも竜巻と闘っている。それは手ごわい相手だ。スコアボードが見えなければ、WIGと先行指標は、日常業務の慌ただしさの中で、数日とは言わないまでも数週間で忘れられてしまうだろ

””三.先行指標と遅行指標が示されているか?  先行指標と遅行指標の両方を示すことが大切だ。これでスコアボードは生きたものになる。先行指標はチームが影響を及ぼせる活動であり、遅行指標はチームが求める結果だ。両方の指標を常に見ていなければ、チームはすぐに興味をなくしてしまう。先行指標と遅行指標の両方が見えていれば、賭けの状況がわかる。自分たちが今やっていること(先行指標)、その結果として得ていること(遅行指標)が見えるわけで

””四.勝っているかどうか一目でわかるか?  勝っているのか負けているのか、瞬時にわからなければならない。スコアボードを見た瞬間に勝っているのかどうかわからなければ、それは試合のスコアボードではなく、ただのデータだ。そんなことは当たり前だと片づける前に、あなたが次回提出するレポート、グラフ、スコアカードあるいはスコアボードをチェックしてほしい。週間の財務データを示すスプレッドシートを見てほしい。勝っているか負けているか、 瞬時に言える だろうか? 他の人たちはどうだろう? これを五秒ルールと名づけよう。勝っているか負けているかを五秒以内に言えないなら、そのスコアボードは不合格

””先行指標と遅行指標を頭で理解しているだけのチームと、今後行うことと実行した結果を明確にしているチームとでは雲泥の差がある。先行指標と遅行指標の推移をビジュアルなスコアボードに記録し定期的に更新しなければ、モチベーションは低くなってしまう。要するに、スコアがわからなければ、人はやる気をなくす。逆に勝っているのかどうか一目でわかれば、試合に身が入るのだ。  スコアボードとはビジュアル化に他ならない。まず「こういうものをつくろう」「こんなふうにつくろう」「こんな仕上げを施そう」という具合に設計図をビジュアル化して(第一の創造)、その後、設計図に従って実行することになる(第二の創造)。スコアボードをつくる(ビジュアル化する)ことが第一の創造であり、それを実行することが第二の創造と

””WIGセッションの中身はその都度異なるが、議題はどのセッションでも必ず同じにする。セッションの議題は次の三つである。   一.報告:前週のコミットメントについて報告  「当社に低いスコアをつけたお客様三人を訪問すると約束しました。訪問したところ……」  「見込み客三人から現地訪問の予約をとると約束しました。四人の予約をとりました!」  「副社長に会いましたが、承認はもらえませんでした。というのは……」   二.スコアボードを確認する:うまくいったこと、いかなかったことから学ぶ  「遅行指標は緑色ですが、先行指標の一つが黄色に落ちているのが問題です。何があったかというと……」  「先行指標は上昇傾向にあるのですが、遅行指標がまだ動いていません。今週はスコアを動かすために倍の労力をかけることで合意しています」  「WIGの達成に近づいていますが、今週、お客様からいただいたアドバイスを実践しまして、先行指標をさらに伸ばしました!」   三.計画:障害を取り除き、新たにコミットメントをする  「その問題については、私が何とかできます。力になってくれそうな人を知っています……」  「先行指標に影響している在庫の問題は、何としてでも来週までに解決します」  「この数字についてはボブと話し合い、来週までには少なくとも三つの改善案をまとめておき

””WIGセッションのリーダーは、メンバーの約束の中身が適切であるかどうかに責任をもつが、重要なのは、メンバー自身が約束をすることである。このことは声を大にして言いたい。すべきことをリーダーが指示していたら、メンバーはほとんど何も学ばない。逆に、WIGを達成するために必要なことを常にメンバーがリーダーに話せれば、彼らだけでなくリーダーも、実行力を身につけていく。  チームのメンバーがすべきことを自分から約束するのは、リーダーであるあなたの直感に反しているかもしれない。何をすべきかをあなた自身がよく見えているときは、つい指示したくなるだろうし、チームのメンバーも指示を受けるものと思っているかもしれない。しかしリーダーが最終的に求めるものは、チームのメンバー一人ひとりが、約束に責任をもって取り組み、果たすことである。メンバーがインパクトの高い約束を見つけるのに苦労していれば、リーダーが助け舟を出してもかまわないが、アイデアは必ずメンバー自身から出させ、リーダーが指示してはいけ

””リーダーの役割は、細かな作業を指示することではない。メンバーがWIGに対して積極的にコミットメントして、WIGを達成するために自らリーダーシップを発揮するように導くことだ。そして、アカウンタビリティを通してメンバーの主体性を引き出しエンパワーメントすることも、リーダーの大きな役割と

””WIGを見つける質問  WIGを見つけるときには、次の三つの質問が役立つ。  一.「このチームのパフォーマンスのどの部分を改善すれば(他の部分は維持することを前提にして)、組織全体のWIGの達成に最も貢献できるか?」(「チームにできる最も重要なことは何か?」よりも効果的な質問である)  二.「チームのどの強みにテコ入れすれば、組織全体のWIGの達成に貢献できるか?」(この質問に答えれば、チームがすでに成功していて、なおかつパフォーマンスをさらに高いレベルに引き上げられる分野が明確になる)  三.「組織全体のWIGの達成に最も貢献するために、チームのパフォーマンスが低いどの分野を改善すればよいか?」(この質問に答えれば、改善しなければ組織全体のWIGの達成に悪影響を与えるローパフォーマンスの分野が明確に